2023年10月08日Flow 第二百七十一回目「拓哉キャプテン × 上戸彩」Part2
10月のマンスリーゲストは現在公開中の映画『沈黙の艦隊』に出演されてる上戸彩さんです。
ここでしか聴けないトーク、お楽しみに!
木村:1999年に「涙をふいて」というテレビドラマで女優さんとしてデビューして、2年後の2001年「3年B組金八先生」。これすごいね。性同一性障害をかかえるという難しい役どころを演じて「上戸彩、ヤベー!」っていう事になるわけなんですけど。
脚本家の小山内さんは、「性同一性障害という非常にデリケートなテーマを上戸彩さんという役者さんと出会えたことで取り組む覚悟が決まった」って資料にありますけど、そう思わせる人って凄いよなぁ。
上戸:いや〜、ありがたいですね。
木村:だって、その当時まだ理解ないもんね
上戸:ないですね〜。
木村:今みたいにさ。
上戸:プロデューサーに“性同一性障害”って表紙に書かれた小説を渡されて、「今日からこれを勉強してください」ってTBSの下のカフェで言われて。そこから活字苦手なんですけど必死に読んで。手術の事とか細かく書いてあるんですよ。遺伝子がどうとか染色体がとかいうよく分からないページから、もう必死ですよねぇ。
木村:金八先生ってどんな作品になってますか?
上戸:今でもやっぱり宝物ですね〜。小山内さんとも、今でも時々ですけど文通させていただりとか。自分の中ではもうスタートラインですよね。というか、上戸彩っていう名前を世間の皆さんに知っていただいた作品がこれだったので。この当時はまだ芝居の面白さも分からないし。
木村:ほんと?
上戸:うん。芝居って何なんだろうって、常に辞めることばっかり当時は考えてました(笑)。この作品終わったら辞めるって、この時いつも思ってました。「高校教師」とかも。打ち上げで「私は辞めますって言っていいですか?」とか、事務所の方に言ったりしてましたね〜。
木村:マジ?でも、やることやってるからなぁ、ちゃんと。そこなんだよな、不思議なのが。なんかそうやって、ちょっとメンタルがガサついていたりとかすると、自分がやらなきゃいけない果たすべき責任っていうか、ちょっとそこもガサツというか。何て言えばいいんだろう、取り組むことは取り組むんだけど、100%本気で向き合ってない感がどこかに垣間見れるような方も中にはいらっしゃるじゃないですか。
上戸:はいはいはい。だったら辞めればいいのにっていう。
木村:そうそうそう。なんだけど、打ち上げで「もうこの作品終わったら、私辞めます。言ってもいいですか?」っていうようなモチベーションだったにも関わらず、ちゃんとやってっから。
上戸:そうですよね(笑)。そう言いながら、多分次の日「おはようございます!」って言いながら現場に入ってるはずです。
木村:(笑)。いやだから、こうありたいという自分をどこか抑え込んで。きっと、2人の上戸彩ちゃんが時にねじ伏せ、時に手を引っ張り背中を押したりしてたんじゃないかなって、過去の気持ち、メンタルを聞くと想像しますけど。
上戸:その通りなんですよね。やっぱり現場に行ったら、私が仕事を辞めたいって思ってるだろうって分かってる人なんて誰もいないわけじゃないですか。皆さんに罪もないし、そこで私がちょっと不機嫌な顔をしたり、それこそ体調不良を見せちゃったりすると「大丈夫?」って、みんなが心配モードになる方が自分には重荷なので、そこは元気良く「おはようございま〜す」って、とにかく円滑にみんなに仕事を楽しんでもらって、その場を終わらせるっていうのをずっと繰り返して今に至るって感じですね。
木村:だから、その時点でプロですよね。
上戸:そうですかね〜。
木村:その頭で現場に立ってたんでしょ。
上戸:やっぱりアイドル時代の下積みですかね。
木村:いや相当、肥料になってますよ。そんじょそこらの風が吹いても私、根っこポキッていきませんよみたいな。私の根っこ、ちゃんと張ってますよみたいな状況になってたんじゃないですか?
上戸:そうですかね〜。でも、歌番組とか本当に苦手でした。大丈夫でした?歌番組。
木村:苦手でした。
上戸:何なんですかね?お芝居とかになると、みんな1つになって、この現場を楽しんでみんなで乗り越えようみたいな。すごくアットホームじゃないですか。
木村:なるほど。うん、そうだね。
上戸:歌番組になると、アーティストさんそれぞれが孤立してるっていうか。
木村:う〜ん。ある意味、良く言えばライバル。
上戸:うん、そう。それ。
木村:要は歌っていう正味4分弱の、もうとんでもない集中力。お芝居も、もちろん集中力必要だとは思うんですけど、あのリズムとピッチに合わせて、自分たちが作った世界観を人に伝えるっていう。要は歌番組に来てる人たちって、みんながゾーンにいる人たちじゃないですか。そこにゾーンじゃない自分がいるっていう。
上戸:…とか思うんですか?木村さん。
木村:思ってました。
上戸:え〜っ!!そういう感覚でいらっしゃったんですね。
木村:うん。すごい思ってました。だから単純に、そういうところでご一緒するゾーンの方たちとお会いするのが、単純に光栄だったし。すげぇ所に今いれてるんだなって、前から思ってました。
上戸:へー。じゃー歌番組好きだったんじゃないですか?刺激になって。
木村:ううん。だから、自分たちが何かをするっていうことになった時はワーっていう。
上戸:あー。場違いじゃ〜んってやつですよね。
木村:各アーティストの方、演歌もそうだし、ロックもそうだし、ポップスもそうだし、ジャンル問わず、あのゾーンにいる人たちのパフォーマンスをその場で体感できるっていうのは盛り上がってたんだけど「はい、続いては…」って言われた時に、ウワー来たーっていう。
上戸:あー、そうなんだー。
木村:という感じでしたね。
上戸:へー。見えなかったです。
木村:いや、でもチラホラバレてましたけどね。
上戸:ほんとですか?
木村:はい。
上戸:みんなメラメラ、ギラギラしてるあの空間がすごく苦手で。
木村:でも、苦手っていう部分の魅力もきっとあったと思うし。彩ちゃんからすると苦手だったかもしれないけど、それが多分テレビの向こう側にいる人たちからするとキラキラした物に見えるのも確かだと思うし。
上戸:そうですよね。木村さん、キラッキラしてましたもん。
木村:あれフィルター。
上戸:んなわけないです(笑)。
木村:あとこれ、必ず触れときたかったんですけど、2003年の17歳の時に「あずみ」っていう作品ありましたよね。
上戸:は〜い。
木村:俺これ覚えてる。当時、カッケーことやってんなっていうのをすごい思ってました。
上戸:えー、嬉しい。
木村:この時ですよね。日本アカデミー賞の優秀主演女優賞と新人俳優賞を受賞されて。これね、なかなかいないと思いますよ。女性の役者さんで200人斬り。
上戸:へへへっ(笑)。撮影に10日ぐらいかけましたね。この200人斬り。
木村:10日?豊かな撮影だなぁ。
上戸:そうですよね、今考えると。でも私、朝お尻に筋肉注射して現場行ってました。この時、体調悪くて。「貴様〜」とかいうセリフもあるんですけど。「貴様〜」「はいカット」「ゲホゲホゲホ」ってやってました。
木村:それは、単純に風邪?
上戸:そうです。私の体調が悪くて。でも撮らないとまずいじゃないですか。だから、やってましたね。朝、病院に行ってから現場行って。お粥食べて、みたいな。
木村:え?お粥食べてたの?
上戸:はい。泊ってたホテルの方が作ってくださって、点滴打って現場に行ってました。
木村:マジで?それで、あのシーン撮ってたの?
上戸:撮ってましたね〜。
木村:まだ観てないって人は是非チェックしてほしいんですけど。この200人斬りハンパないですからね。
上戸:嬉しい〜。観てくださったんですか?
木村:はい。これカッケーことやってんですよ。今こういうのに挑戦する子ってなかなかいないですよね。
上戸:そうですよね。だし、今やれって言われても、もうできないです。っていうか、当時もできなかったんですよ。できなかったんですけど…。
木村:いや、やってるよ。お粥食べながらやったんですよ。
上戸:そうそう。やりましたよ。
木村:いやこれは、なかなかできないですよ。
上戸:最初は小鹿が生まれたのかって現場でも言われて。もう、足がプルプルしちゃって。殺陣なんてやった事なかったんで。
木村:このとき初?
上戸:はい。殺陣の練習をする時間もなく現場に行かされるみたいな感じで、現場で撮影が終わって日が暮れたらホテルの横のお部屋で殺陣の練習をするの繰り返しで。
木村:明日の分の?
上戸:そうです。その当時のアクションチームの方といっぱい練習させていただいてっていう。その前の練習期間が全く無かったんですよ。
木村:へー。酷だね。
上戸:観てて初日の映像とか分かります。足がガクガクして、太腿をどう動かしていいか分からない動きをしてる。これ、全部で3〜4か月撮影してたんですよ。200人斬りは後半だったんで、もっと刀が重く見えるように振ってくれって言われるくらい、刀がすいすいすいすい動いちゃうぐらいになってて。だからシーンによっては、逆にジュラルミンに変えて撮影したりとか。
アクション1カット目のテスト1回目で、おでこパコーンってアクションチームの方の刀が当たって、病院です。
木村:彩ちゃんがですか?彩ちゃんのおでこにパッコンいったって事?
上戸:そうです。それは私のよけ方が、まだヘタッピだったんですよ。それで、スパーンって今でも跡があります。ここに、切れた跡が。
木村:あ、割れたって事?
上戸:多少割れて病院行って、1回中断ってなって。おでこにたんこぶできちゃって、そのたんこぶを消すCG代が一番高かったって当時の監督とプロデューサーさんに言われてます。
木村:(笑)。それは、今は笑い話だからあれだけどさ、全部そういうところをくぐってきてるね。すげぇわ。殺陣のシーンで200人斬りって文字にするのは簡単ですけど、これ体現するってなると、ご本人1人の労力だけではないので。相手との呼吸、間合い、パッション全てがもう。そういう殺陣のシーンとかアクションシーンって、「本番!」っていう声が現場に流れた瞬間に違うアドレナリンが出てるんですよ、みんな。
上戸:うん。大事ですよね、あの声。
木村:大事なんだけど、すごい大事なんだけど、やっぱり皆さんアクション部の方たちも物凄いギアが入ってるというか。そのウアーーって寄ってくるスピードだったりとか、要は走る歩数がね、1〜2歩変わってくるんですよ。
上戸:分かる。1歩の大きさも変わりますよね。
木村:もちろんお芝居ではあるんだけど、要は彩ちゃんがやってるあずみの事を今この場で殺めてやろうって思ってる人たちが向かってくるときの、本番の踏み込みの一歩ってね、30センチぐらい違うんですよ。
上戸:そんなの考えると絶対できない。
木村:そうすると、さっきエピソードで出てきたおでこパッカーンだったりとか普通にあるんですよ。それを結果、200人斬りを実際に撮り終えた人っていうのは、もう、もうね、僕からしたら賞賛しかないです。
上戸:(笑)。
木村:僕もやって100ぐらいだったんで。
上戸:でも、ねー。怖いですね。
木村:これは、ほんとすごい。
上戸:嬉しい。
[後TM]
M.One and Only/木村拓哉