2023年05月07日Flow 第二百四十九回目「拓哉キャプテン × 武田双雲」Part1
5月のマンスリーゲストは、書道家で現代アーティストの武田双雲さんです。
いったいどんなトークになるのか、お楽しみに!
木村:今年最初の「木村さ〜〜ん!」の方で撮影させていただきました。毎年恒例の書き初め企画で、まさか、あの武田双雲に来てもらうっていう。
武田:いやいや(笑)。
木村:「嘘でしょ!?」って言ってたら本当に来てくれて、一緒に撮影もさせてもらったんですけども。
武田:本気で、お世辞抜きで、想像を超えた書ができたんですよ(笑)。いや、俺が引き出したわけじゃないんだけど。あの結構大きめの書を最初に書いたんですけど、こんな良い書がね…あれ、良かった!本当に良かった。いい書だった。
木村:僕の中では、全く良い悪いの判断基準もないし、どこが良くて何がいけないのかっていうのもなく、ただ一緒に撮影をさせてもらって、それこそ文字っていうものを、何かバトンをいただいたような形でワーッと書いたら…「やべー!」っていう風に言ってくれたので。
武田:そうそう(笑)。例えばね、簡単に言うと、歴代の書の、感動した書って、結局、書道家の書じゃないんですよね。その人が醸し出すオーラみたいなのがあって、やっぱり、あの時ダーンって大きく『夢』って書いた木村さんの書は、“書道家としての書”というよりは、“木村拓哉の汁”が…。
木村:汁!?
武田:もう、豚骨の濃いやつみたいな(笑)。
木村:(笑)。俺の骨の髄から出た(笑)。
武田:そう。髄から出たやつだったんですよね(笑)。だから多分、あれは感動するんですよ。
木村:へえ〜!
武田:出たんですよ、汁が。髄から。
木村:俺汁が出たんですね。
武田:(笑)。
木村:いやいや、今、ラジオのマイクの向こう側で話してくれている武田双雲さんと言えば、まあ皆さんご存知だと思いますけども、NHK大河ドラマ『天地人』やスーパーコンピューター「京(けい)」などの題字を担当して。その他、本当に色んなロゴを手掛けてるんですけども。
この間、『レジェンド&バタフライ』の東京の公開当日イベントで、後ろにね、「天下布武」って書いてあったんですよ。で、“うわ、うめー字だな”って思ってたら、印鑑みたいなのがポコッて押してあって、“あれっ?”ってよく見たら、“あれ?これ武田双雲じゃん!”って思って。
武田:(笑)。
木村:“うわ、書いてくれたんだ!嬉しい!”って思って、記者会見をやらせていただいたのも、覚えてますね。
武田:そうなんですよ。だから本当に、たまたま縁がパンパンパンと…一緒に書道をやらせてもらって、『レジェンド&バタフライ』の「天下布武」を書かせてもらって、で、ぱっとコンビニに行ったら、織田信長になっている木村さんが表紙の『歴史人』があって、僕はずっと(『歴史人』の)書を書かせてもらっていたので、「あれ?またここでも、何か一緒になってる」みたいな(笑)。
木村:いやもうだから、何か、不思議な形でご一緒をさせてもらってるっていうのが正直なところなんですけども。
武田:いや本当に。パパパーンと繋がってきて、という感じですね。
木村:ありがたいです。
武田:本当にありがたいです。こちらこそ。
木村:この番組はですね、ゲストに来てくれた方がどのように人生をFlowしてきたかというのを、色々お話していく番組なんですけども、武田双雲さんは、1975年の熊本県生まれなんですね。
武田:はい、そうなんです。
木村:で、お母様が、武田双葉さん。書家なんですけれども、その書家の武田双葉さんに師事して、書の道を歩み始めるという。
幼い頃って、熊本県でどんな少年だったんですか?
武田:今思うと、僕も父ちゃんも母ちゃんも、いわゆるただ暴れてるだけの、多動の衝動しか動かない家庭で生まれて。僕もそうだったので、ちっちゃい頃は…何だろう、ひたすら明るい(笑)?もうただ明るいだけの阿呆な少年だと思います。ずっと笑ってたり、ずっと明るいっていう。
木村:へ〜。その頃、何になりたいとかあったんですか?
武田:ないんですよ。もうね、阿呆すぎて毎日何にでも反応して、カーテンが揺らいでたらずっと一緒にカーテンと揺らいでたりとか。だから、小4ぐらいまでは通じたんですよ。先生も笑ってくれるし、「あいつおもしれー」って言って。ひたすら笑ってるし、ふざけてるから、迷惑をかけるタイプではないんですけど、小4ぐらいからちょっとヤンキーブームが来て。無視されるようになったりとか、怒られるようになって。小5ぐらいから、暗黒時代に行くんですよ。
木村:結構早めの暗黒時代じゃないですか?
武田:そうなんですよ。友達がいないっていう。
木村:小5から暗黒って結構早めですよね。
武田:そうなんですよ。少しずつ闇がね…。闇って、俺の中に闇はないんですけど、周りがちょっと合わなくなっていくっていう。先生も、友達も、何かみんな離れていくって感じですね。感覚的には。
木村:きっと僕が今勝手に想像するに、武田双雲の小5ぐらいの、そのゾーン状態に、周りがついて来れない感じなんじゃないですか?
武田:(笑)。確かにゾーンですね(笑)。本当。
木村:だって、カーテンが揺らいでて、一緒に揺らいでるって、これ他の人からしたら、なかなかついていけないゾーンですよ。
武田:そっか。そうですよね。そういうことばっかりやってたんですよね。だからずっと遊んでる状態で、例えば先生のチョークの音に合わせて字を書いてみるとか、先生の字の癖を全部盗んで、コロッケさんみたいに応用していくとか。
木村:でもやっぱり、今聞いていてフッて思うのが、その先生の書く“字”っていうものに、やっぱり若干フォーカスが。
武田:かなり行くんですよ。僕、母ちゃんが書道の先生だったので、ちっちゃい頃からバリバリ叩き込まれて、母ちゃんの字しか知らないまま大人になると、まず先生の字に衝撃を受け…“違うんだ”と。まず“母ちゃんとは違う字を書くんだ”というのが衝撃で。で、そこから僕は、隣の男の子から違う学年の女の子のところまで行って、ひらがなを集めたんです。みんなの書く“くせ字”を、珍獣ハンターみたいに集めて。だから、ちっちゃい頃から人の書くくせ字がすごく好きで。
木村:それで出会ったのが、『た』、という…。
武田:平仮名の『た』という(笑)。
木村:あれ、何くんでしたっけ?
武田:大塚くん(笑)。よく覚えてるね(笑)。
木村:(笑)。大塚くんの書いた『た』っていう平仮名に衝撃を受け…。
武田:そうなんですよ。その崩れていく、ギリギリ『た』と見える小1の大塚くんの『た』のあまりの凄さに、興奮して。
でもその先に木村拓哉の『夢』が出てくるわけじゃないですか。その、人と書がずっと気になっていたわけなのに。筆跡鑑定もできるし…。
木村:あ、筆跡鑑定もできるんだ。
武田:そうなんです。メンタリストが青ざめるぐらい、できるんですよ(笑)。
木村:それは、書く字によって、その文字を書いた当時のこの人のメンタリティはっていう…。
武田:そこまでいかないんですよ。だから、“キャラクター”ですよね。キャラクター性が見えるっていうことなんです。
木村:僕が紙に縦書きで『木村拓哉』って書いて、見てもらうと…。
武田:すげー見えるんですよ。
木村:“あ、この人こういう人なんだ”っていうのが。
武田:単なる統計学ですけどね。だからそれを“グラフォロジー”って言って、筆跡鑑定士って、弁護士より地位が高い時もあるんですよ。
木村:マジで?
武田:人事とかポジションとかに使うので。筆跡鑑定して…グラフォロジーって言うんですけど、めちゃくちゃ年収高いんですよ(笑)。日本だとないんですけどね。
木村:へー!じゃあ、女の子と一緒に食事に行って、何か相手の女の子が文字を書くような、ワンシチュエーションがあった時に、それをパッて見て、“うわ、こいつマジか!”っていう時も…下手したらあると。
武田:あるある。ありますよ!全然あります。見た目と字が違う時、やっぱり僕は字の方が本質的なものが見えるので。だから変な話、妻も、結婚する前とかに字を見ているので、“あ、この字は僕絶対大丈夫”というのはわかるんです(笑)。
木村:なるほどね!
武田:“僕に合うだろう”っていう。
木村:後で俺、『木村拓哉』って書いてみようかな。
武田:ぜひぜひ!
木村:そして、中高時代。これまだ、ダークサイドは続くの?
武田:中高が一番。僕は野球部とかハンド部だったんですけど、身長もでかいし、運動神経も良かったらしく、皆に期待されるんですけど、部活中とか試合中にも、守っている時とか、やっぱり雲とかが気になって…(笑)。
木村:(笑)。待って、待って。野球の試合中、雲が気になっちゃうの(笑)?
武田:だからもう駄目なんですよ。虫とかが来ると一緒に遊んじゃうんですよね。草むらの揺れと…(笑)。
木村:いやいや、今、野球中ですよ(笑)。野球の試合で守ってる最中に、「あ、バッタだ!」ってなると…。
武田:話にならないんですよ。だから僕は、もう。
木村:それは確かにね。カキーンって音がして、球が飛んできても「ちょっと待って、今虫に集中してるから」っていうことだもんね?
武田:そうなんですよ(笑)。でもこれが、後で、40代になってから“ADHD”っていう言葉を知った時の衝撃です。「あ、やっぱり良かった。これ俺のせいじゃないんだ」っていう、ADHDへの感動はすごかったですよ。だって僕、こうやって話してる間にも、もう色んなことが入ってくるんですよ。このマイクの質感とか、この角度とか。それを気にしないように、目の前に集中しなきゃいけないんですよ。
木村:でも、こうやって会話が普通にできているというのは、全然問題ないですよ。
武田:問題ないです。今はめっちゃ楽しいので。
木村:だから、それが“楽しい”って感じられる時と、“うわ、もう嫌だよ〜”っていうのは、自分の、何かチャンネルの…。
武田:あるんでしょうね。だから、つまらないことに意識がいかないんでしょうね。自分が面白い方に、虫が動いた方が面白かったら、虫が動いている方に行くっていうのがあるから。
木村:じゃあそのジャッジの天秤っていうのは、結構でかいっすね。
武田:そうなんですよね。
木村:どっちが楽しいか、どっちがわくわくできるかっていうのがあって。
武田:多分ね。だから今、アーティストとしては、1人で全部作れる、自分のペースで生きているので、だからいけてるんだと思いますね。
木村:でも、高校卒業後は、東京理科大学理工学部に入学し。バリバリ理系だったんですね。
武田:だから、中高、友達がいないから。恋愛ももちろんしてないし。母ちゃんが何か、アインシュタインの本を僕に渡してくれた時に、あまりに相対性理論に感動して、そこから量子力学とか相対性理論とか物理学にはまりすぎて。“やっべ!ブラックホールマジすげー!”ってなって、ひたすらブラックホールのこととか、分子とか原子の振る舞いについてずっと考えてたんです。授業中とか、友達がいないから。部活中も。何か寂しかった分、宇宙に傾倒できたっていうのが良くて、それでだんだん数学とか物理が好きになって、いつの間にか理系に行ったっていう。
木村:でも、そこのスイッチの入れ方と言うか、お母さんが与えてくれたアインシュタインの本、でしょ?いやいやいやいや、これ、アインシュタインから武田双雲にパスが繋がってるって、ちょっとヤバイっすね。
びっくりというか、僕的に「うわ、おもしれー」っていう部分が一瞬あったんですけど、NTTに入社して、その時に、やたら字の上手い新人さんとして有名になり。ある女性社員の名前を代筆したところ、その筆跡を見た女性から、「今までは自分の名前が嫌いだったけど、初めて自分の名前が好きになれた」って涙を流して感動されて、それを機に、次の日、辞表を出してるんですよ、この人。会社に(笑)。
武田:(笑)。本当にすごかったんです、僕。20代、ほんっとうに、まぁよく言えば、無邪気。
木村:無邪気なのかなぁ?もう俺は、逆にこの流れというか言動を、文字で情報として見た時に、“すげー破天荒なやつだなぁ”と思って。
武田:確かにね。常識的ではないですよね。衝動的にしか動かないので。でも、例えば、小中高、全然人間関係はうまくいってないわけじゃないですか。で、人を感動させたことなんてないわけですよ。なのに、自分が書いた字で…その女性の名前を書いたらその人が泣いてくれた時の衝撃が稲妻みたいなもので、そこでその場で辞表って書いて。
木村:マジで!?じゃあ、この社員さんの名前の次に、辞表を書いてるの?
武田:そうなんですよ(笑)。
木村:(笑)。
武田:しかも、本当にどうでもいいポジティブなんですけど、辞表の『辞』って、“舌が辛い”と書くから、一本足して“舌が幸せ”って書いて出したんですよ。
木村:だから、自分の創作文字で出したんだ。
武田:そうです。辞職の『辞』って“舌が辛い”と書くので、なんか「辛いって嫌だな」と思って(笑)。1本足して“幸せ”にしたんですよ(笑)。
木村:なるほどね、“幸せ”にしてね。
武田:どうでもいい、誰も気づいてないポジティブなんですけど(笑)。どこかでちょっとイタズラ心もあるし、今思うと舐めてますよね。でも、ニコニコしながら…普通辞表を出す時って、何か神妙な面持ちじゃないですか。
木村:うん、そうですね。
武田:ワクワクして。もうね、「僕、辞めるんすよ!」みたいな感じで、だから上司も「は?」みたいな(笑)。「もうね、すごいことになっちゃうんですよ」って、もうニコニコしながら言ったから。まぁ、受け付けてくれなかったんですけどね。だから1年後ぐらい、それからやめて、ストリートから始めたんです。
木村:そう。それでさ、行った場所がストリートっていう、その選択も不思議なんだけど。
武田:そうなんですよ。辞めてみたものの、別に俺、計画性があるわけじゃないので、何をするか決めないまま辞めたんだけども。サックスプレイヤーの坪山健一さんという人が、ストリートでビリー・ジョエルの『Honesty』を弾いていたんですよ。それが、「え、こんなかっこいいの!?」と思って。で、女性が『Honesty』を聴いて、何か泣いてるんですよね。
木村:サックスを聴いて。
武田:サックスを聴いて。「やべー」って言って、そのまま待って、当時の彼女…今は妻なんだけど、彼女に「ごめん、先に帰って。ごめん、俺、この人に何か話しかけたいわ」って言って。で、最後まで待って話しかけて、「弟子入りさせてください!」って言って(笑)。次の日から一緒に、金魚のフンみたいにストリートについていって、彼はサックスを出して、僕は隣で本当に金魚のフンみたいに書道セットをこぢんまり出すっていう、よくわからない行動を取ってしまいまして。
木村:いや、その当時の写真がね、俺の目の前にあるんだけど。横でサックス吹いてるんですよ。
武田:(笑)。本当にただの邪魔者ですよね(笑)。
木村:で、横にダンボール敷いた武田さんが、書道セットをちょっと広げて、それこそ書道をやる時に下敷きになる、あのフェルトのやつあるじゃないですか。それを敷いて、カメラ目線の写真が来てるんですけど。これは何年ぐらいやったんですか?
武田:1年ぐらいです。25歳の時。ちょっとずつ生徒さんが増えたりとか、何かメディアが来たので、なかなか出れなくなって。でも楽しかったです。ストリートは。
木村:その時は、「こういう字を書いて」っていう要望に応えて、その場で書いてたってこと?
武田:そう。書く言葉が何も出て来ないので、「何か書きます」みたいなことを言ったら、最初誰も止まらなかったんですけど、『あなたの好きな言葉を書きます』って書いてちょっと立てておいたら、結構人が集まるようになってきて。
木村:最初の、覚えてる?何て書いたか。
武田:べろんべろんに酔っ払った親父が来て。フラッフラ来て、「『松田聖子』って書いてくれ」って(笑)。『松田聖子』って書きました(笑)。
木村:(笑)。もう、何それ!その酔っ払い!その酔っ払いね、ちょっとリクエスト間違ってるよ!
武田:(笑)。
木村:うわぁ…。でも、それ持って帰った?その人。
武田:持って帰って。お金が欲しいから一応瓶は置いとくわけ。でも全く入れてくれなくて、そのまま帰ったんだけど。でも、ゴザを片付けて、“さあ帰ろう”と思ったら、その駅の近くで、改札のところに『松田聖子』が落ちてて、めっちゃみんなに踏まれてました(笑)。
木村:マジで!?そいつ馬鹿したなー。本当に。
[OA曲]
M1.Honesty/Billy Joel
[後TM]
M. Yellow Summer/Kenichiro Nishihara
レーベル:IntroDuCing! / 規格品番:FAMC-091