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Dream HEART vol.672 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長 柳沢正史さん 「睡眠の根本的な原理を解きたい」

2026年02月14日

今夜ゲストにお迎えしたのは、筑波大学にある、国際統合睡眠医科学研究機構の機構長として、世界の第一線で「睡眠研究」をリードしていらっしゃる、柳沢正史先生です。

柳沢先生は、1960年、東京都のお生まれです。
筑波大学大学院を修了され、医学博士を取得されています。

大学院在学中の1988年には、血管を制御する物質「エンドセリン」を発見。
さらに1998年には、睡眠と覚醒をコントロールする神経伝達物質「オレキシン」を発見されました。

31歳で渡米し、その後24年間にわたり、テキサス大学などで研究室を主宰。
2012年には、国際統合睡眠医科学研究機構、通称「IIIS」を設立し、現在も、世界の第一線で、睡眠研究を牽引されています。

さらに2017年には、株式会社S'UIMINを起業し、研究成果の社会実装にも力を注いでいらっしゃいます。

これまでに、紫綬褒章、朝日賞、慶應医学賞、文化功労者、そして2023年には、ブレークスルー賞、クラリベイト引用栄誉賞など、国内外で数多くの賞を受賞されています。


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──自身の睡眠を“見える化”する社会を目指す

茂木:先生、この睡眠の謎、ミステリーというものを富士登山に例えると、今は何合目ぐらいまで来ていると思われますか?

柳沢:それは難しい質問ですね。「森林限界を超えていない」、と答えます。
これ、実は私のオリジナルじゃないんです。私はプロ将棋を見るのが好きで、藤井聡太さんの大ファンなんですが、藤井聡太さんが確か20歳ぐらいの時に、あるジャーナリストに「まさに藤井さんは将棋を追及されていますけど、登山に例えれば何合目ですか?」と聞かれて、彼は「森林限界を超えていません」と答えたんです。20歳で。

茂木:カッコイイなぁ。

柳沢:どういう意味かと言うと、富士山だとちょうど5合目ぐらいですよね。それより下は林で森で、要するに自分の行く道も見えなければ、ましてや尾根は見えないし、ピークも見えないわけですよ。そこから先に行くと急に視界が開けるわけですけど、まだ越えられていない段階ですね。
だから今、睡眠の謎に関してどうやれば辿り着けるか、ということを模索しているような、そういう気分ですね。

茂木:先生のグループの研究でも、いくつかヒントのようなものとか行くルートとかが見えてきていると思うんですが。考えてみますと、我々は毎晩当たり前のように寝ていますけども、これが生物学的に言うと非常に謎と言うか、不思議なことだということですね。

柳沢:そうですね。要するに我々の脳は、我々の近過去の覚醒時間をカウントしているわけですよね。“何時間起きていたか”ということを自動的に脳のどこかでカウントしている。そしてカウントが溜まっていくと眠くなるわけですが、眠気を取るには眠るしかなくて、眠っている間にその逆方向のカウントが起こるわけですよね。そのメカニズムが分からないんです。

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茂木:それが分かると、色々と睡眠で困っている方を助けることもできるかもしれない、ということですね。

柳沢:はい。もちろん原理が分かれば、その過程で絶対にそういう何かの介入…例えば、医薬のネタが出てくるでしょうし、応用も絶対に効くと思いますね。
私自身のモチベーションは、その原理の解明そのものにあるんですけれども。

茂木:世の中では、“睡眠負債”とか、逆に“睡眠は貯金できる”というようなことを言う方もいますが、どうなんですか?

柳沢:その社会実装的な、社会的な側面ももちろん私の中には夢があって。
1つは、やはり、まずは日本からですかね。日本人の皆が、一度はご自身の睡眠を“見える化”したことのある社会。
今はもちろんウェアラブルデバイスなどでかなり睡眠を測ることができるようになっていますけど、睡眠というものはやっぱり正確に測ろうと思うと脳波というものを測らないといけなくて。
私達は筑波大発のベンチャー企業で株式会社S'UIMIN(すいみん)という名前の会社を立ち上げて、「誰でも、どこでも、誰の手も借りずに、ご自宅で睡眠脳波を測れるサービス」、というものを実用化したんですね。これはどこでも使えるようになっていて、「suimin.co.jp」のWebサイトに行くと、誰でも2晩とか3晩とかで睡眠を測れるんですけれども。そういうものを使って、皆さんが詳細に自分の睡眠を一度は可視化したことのあるような社会、というのを目指したいです。
睡眠に悩みすぎるのも良くないんだけど、逆に、重篤な睡眠障害を見落としている方もたくさんおられるんです。

茂木:そうですか。

柳沢:例えば、“睡眠時無呼吸”ですね。いびきをかいている時に息が止まってしまって…、という症状ですけれども。実は、治療をした方がいいというレベルの重症ないしは中等症の患者さんだけで、日本国内には潜在的に900万人いると言われています。

茂木:900万人! じゃあ 12〜3人に1人ぐらいはいるということですよね。

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柳沢:そのぐらいいます。しかし、まともにちゃんと治療ができている人というのは、多く見積もっても6〜70万人。1割もいないんです。

茂木:9割以上の方は、治療をしないで放置している、と。

柳沢:気がついていないか、気がついていても放置してる、ないしは、お医者さんに行っても治療に至るまでに色んな制度上のハードルがあってたどり着けない、という方がたくさんいて。
これ、何で“無呼吸”を強調するかと言うと、日本では睡眠時無呼吸と言うと、交通関係で運転士とかが無呼吸で事故を起こしたり色んなことが起こった時に「事故防止のために無呼吸をちゃんと検査しましょう」、というのは20年ぐらい前からやられているんですけど、本当の無呼吸の怖さは、重症の無呼吸なんです。これはもう夜中に何百回も息が止まるわけですけど、これを無治療で放っておくと、実は向こう15〜6年の間に4割の方が命を落とす、という統計があるんですね。
本当に無呼吸というのは自覚症状がないんですよ。昼間に眠くなる人はまだマシで、昼間全然眠気も感じないし、別に自分自身の睡眠の質に問題を感じていない人でも、かなりの率で、6人に1人ぐらいは中等症以上が見つかるんですよ。
だからそういうものも含め、睡眠は気にしない方がいいとは言え、そういうものは逆に気にしてほしいわけです。

茂木:これは先生がやられている会社で、誰でも計測できるんですよね。

柳沢:はい。「いびきをかいている」とベッドの横の人に言われる方は、まず間違いなく無呼吸があるので、一度は可視化していただきたいですね。

茂木:聴いている皆さんでも色々と心配のある方もいらっしゃると思うんですけど、柳沢先生のご著書もありますし、もっと睡眠について知りたい方はどういう情報源を探したらいいでしょうか。

柳沢:私、『睡眠の超基本』という本を出していまして、監修本ですけれども、かなり私自身が書いた部分が多いのでほぼ著書と言ってもいいぐらいなんですけど。

茂木:これは本当に、睡眠の様々な知識を分かりやすくお伝えくださっていて、いい本ですよね。

柳沢:イラスト本なので読みやすいですし。

茂木:気になった皆さん、是非こちらを読んでいただきたいなと思います。

──柳沢正史さんの『夢・挑戦』

茂木:柳沢先生、いろんなお話を伺ってきました。この番組のテーマは『夢と挑戦』なんですけども、柳沢先生がこれから挑戦したい夢は何でしょうか?

柳沢:本当に、「睡眠の根本的な原理を解きたい」というのが1つの夢。
2つの夢は、「社会実装的に、皆さんが自分の睡眠というものが分かっている社会を目指したい」。その2つですかね。

茂木:是非、柳沢先生の夢が叶って、そして我々がもっと睡眠と親しく向き合えるような、そういう社会を実現したいですね。

柳沢:そうですね。

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株式会社S'UIMIN 公式サイト

↑柳沢先生のお話しにあった「睡眠の脳波」は、先生が設立された会社で調べる事ができます。
 詳しくは、公式サイトをご覧ください。

IIIS (国際統合睡眠医科学研究機構) (@WPI_IIIS) / X 公式アカウント


IIIS 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 公式サイト


●今さら聞けない 睡眠の超基本 / 柳沢正志 (監修)
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