Dream Heart

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Dream HEART vol.605 「菊乃井」の三代目 村田吉弘さん 「日本料理を世界の料理にする」

2024年11月02日

今週ゲストにお迎えしたのは、京都の老舗料亭「菊乃井」の三代目、村田吉弘さんです。


村田さんは、1951年、京都のお生まれです。

立命館大学在学中に、フランス料理研究のためフランスに渡られ、大学を卒業後、日本料理の道に進まれました。

1993年、父親のあとを継いで、「菊乃井」の三代目主人に。

現在、「菊乃井 本店」、「露庵菊乃井」、「赤坂 菊乃井」を統括されていらっしゃいますが、「ミシュランガイド」で、現在まで、京都、東京で併せて7つの星を獲得し続けていらっしゃいます。

2017年には、お弁当や甘味を供する「無碍山房(むげさんぼう・サロン・ド・ムゲ)」を開店。

海外での日本料理の普及活動、地域の食育活動など、料理人の育成、地位向上のために精力的に活動を行っていらっしゃいます。


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──日本料理を「文化」とするには

茂木:「菊乃井」と言えば、今や世界中の人が憧れる存在だと思います。実は、日本料理を広げる上では「日本料理アカデミー」が非常に大きな役割を果たしたということなんですが、これはどういう集まりなんでしょうか?

村田:今のアカデミーの若い連中が…その時は僕も若かったですけども、「フランスで日本料理を紹介するイベントをやりたい」と僕に相談に来たんです。「一発花火、打ち上げ花火みたいなことはやめとけ」と。「やるんやったらちゃんと運動せい」と。

茂木:なるほど(笑)。

村田:そのために、「日本料理アカデミーを作ろう」と。「料理人だけではあかんで」と。それから、学者の先生方にも入ってもろて、今300人ですけど、200人は料理人で、100人は学者です。

茂木:今回のご著書『ほんまに「おいしい」って何やろ?』の中でもご紹介されてるんですけど、伝統的に言われてきた料理法が本当にそうなのか、ということも検証された、と。

村田:そう。検証せんとね、間違うたことが多いんですよ。
僕らは昔から、「青いものを湯がく時には塩を入れて。塩を入れると青なるから」というふうに聞いてきたんですけど。

茂木:これはリスナーさんの方も、各ご家庭で料理されてる時に、確かに何となく塩を入れているような気もしますね。

村田:「そんなことありえへんで」と、学者の人達が言うんですよ。

茂木:そうですか(笑)。

村田:「何で塩を入れるか?」と言うて、学者同士で喋ってはって、「そら、大正以前の塩には、塩化マグネシウムが15%含まれてる」と。

茂木:ああ、不純物と言うか、“にがり”で。

村田:そうです、にがりですね。「にがりは葉緑素を定着させる作用があるから、青なるやろ?」と。「今の塩はなんぼ入れても一緒やで」と。

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茂木:は〜。でも、昔はちゃんと理由があって入れていた、と。

村田:はい。形だけが残ってるんです。そやから、内容が何にも「何で入れるか?」ということを教えてないから、進化してないんですよね。塩を入れるという作業だけが(伝えられてきた)。

茂木:なるほどなぁ。
村田さんがされてきた、ユネスコの無形文化遺産に和食が入るなどのお仕事、本当に素晴らしいと思うんですけど、やっぱり世界に伝えていくためには、ちゃんとロジックで伝えないと駄目ですもんね。

村田:そうですね。せやから、日本料理を「食文化」と言うてますけど、日本では文化の枠の中に入ってなかったですから。

茂木:これはでも、今でこそ認められてきてますけど…。

村田:今は、法律の中では『茶道』、『華道』、『書道』、『(その他)』。『その他』の中に入ってるんです。それを「食文化」というのを一行付け足してもらうのに、外圧で文化遺産登録をせんことには無理やな、というふうに思ったんです。

茂木:なるほどな。
僕がご著書を読んでいて本当に感動したのが、和食をユネスコに認めてもらう上で、まさに日本料理ではなく「和食」というのは、我々が普段食べるようなもの。例えば村田さんもお好きな「卵かけご飯」とか、ああいうのも含めて全部「和食」なんですね。

村田:そうなんです。和食にして良かったな、と今つくづく思うのは、各地の郷土料理とか、おばあちゃんが作ってくれた煮っ転がしとかも文化ですから、それを伝えていくことも文化ですね。

茂木:ご著書の中でもありましたけども、実はユネスコ側が非常に心動かされたのが、「お雑煮」。これはすごい意外でした。

村田:せやからね、正月の午前中に、北海道から沖縄まで、「雑煮」という食いもんを、同じような時間に同じようなものを食べる、そんな国ないですから。

茂木:確かに言われてみたら(笑)。日本では当たり前に感じてましたけど、すごいですよね。

村田:そう。「庶民の生活に非常に密接な関係がある」というのが彼らが評価したところなんです。

茂木:まさにTOKYO FMのスタジオから全国38局ネットでお送りしていますDream HEARTなんですけども、これを聴いていらっしゃるそれぞれの地方で、お雑煮のやり方がちょっと違うんでしょうし。

村田:やり方が違っても、「もう雑煮なんか食べんでもええやん」ということではないんです。

茂木:ないですよね。

村田:それが、「文化を守る」ということなんですよ。

──村田吉弘さんの『夢・挑戦』

茂木:色々お話を伺ってきたんですけども、この番組のテーマは『夢・挑戦』なんです。これからの村田さんの『夢・挑戦』は何でしょうか?

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村田:もうずっと20歳の頃からやってるんですけども、日本料理を世界の料理にする。これはずっと挑戦してるわけですけども。

茂木:でも、村田さんのお陰でずいぶんそれが実現してきていますけど、まだまだやれることがある?

村田:まだまだやれることはあると思います。まだまだやらなあかんでしょうし。
やっぱり今頑張ってやってるのは、海藻。(英語で)『seaweed』と言いますけど、『seaweed』は『雑草』ですから、「そういう失礼なこと言うな」と。「あれは『sea vegetable』や」と。

茂木:なるほど(笑)。

村田:日本の近海に1500種類あるんですよ。

茂木:えー! それは僕も知らなかったです。

村田:ほんで、この日本の海はアメリカの海岸線の3倍ありますんで、その1500種類を全部「sea vegetable farm」にすると、魚は増えるし、CO2の吸収は森よりも多いですし。

茂木:これは壮大な計画ですね。

村田:そうなんです。まぁ、命足らんやろなと思いますけども(笑)。

茂木:いやいや、すごく素敵なお話を伺いました。これは是非実現して頂きたい。

村田:はい、したいですね。

茂木:ということで、現在集英社から村田さんの素晴らしいご著書『ほんまに「おいしい」って何やろ?』が発売されています。村田さん、僕は読んで本当に感動したんですけども、この本をまだ読んでいないリスナーの方にメッセージを頂いてよろしいでしょうか?

村田:はい。実際に僕が読んでても、極端なことを言い過ぎたなと思うぐらい本音で喋ってます。そやから綺麗ごとを言うてません。

茂木:本当にそうですよね。綺麗ごとは何もないですよね。

村田:自分をよう見せようとか、賢く思ってもらうとかそういうことも一切抜きにして、自分が今思ってることをほんまに素直に書いてます。で、若い時からここまでどうやって「菊乃井」をやってきたか、ということもみんな、これを読んでもらうと分かるようなことなので、是非読んでください。

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■プレゼントのお知らせ

番組でご紹介してきました、村田吉弘さんのご著書『ほんまに「おいしい」って何やろ?』に、村田さんの直筆サインを入れて3名の方にプレゼントいたします。

ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、メッセージフォームより、ご応募ください。

私、茂木に聞きたい事や相談したい事など、メッセージを添えていただけると嬉しいです。

尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。



菊乃井 公式サイト


●「ほんまに「おいしい」って何やろ?」 / 村田 吉弘 (著)
(Amazon)


集英社 公式サイト

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