水中写真家の中村征夫さんが登場!
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- 2025/12/21
水中写真家の中村征夫さんをお迎えして
今回はスタジオに、水中写真家の中村征夫さんをお迎えしました。
小山「先週のゲストだった椎名誠さんと長いお付き合いなんですね?」中村「あやしい探検隊の仲間だったので。ゴールデンウィークとか大型連休になると、みんなで妻子を捨てて、はしゃいでキャンプに行きましたね(笑)」
宇賀「楽しそうですね。では、私から簡単に中村さんのプロフィールをご紹介します。1945年 秋田県生まれ。19歳の時、独学で水中写真を始めます。撮影プロダクションを経て31歳でフリーランスに。1977年、東京湾に初めて潜り、ヘドロの海でもたくましく生きる生きものの姿に衝撃を受け、東京湾定点観測をライフワークとして継続。木村伊兵衛写真賞、文化庁芸術作品賞、土門拳賞、日本写真協会年度賞など多数受賞されています」
小山「現在、80歳ですか」
中村「なったばかりです。海からパワーをもらっています」
小山「19歳の時に独学で水中写真を始めたとプロフィールにありますけども、これは写真が先にあったんですか? それとも潜ることが先にあったんですか?」
中村「同時なんですね。写真を撮ったこともほとんどないのに、素潜りもほとんどできないのに、なぜいきなり始めちゃったのか、自分でも不思議なくらい。ただ、神奈川県の海に19歳の時に何度か潜りに行った時に、たまたま岩の上で休んでいる3人のダイバーがいたんですね。彼らが首から小さなカメラを下げていて『それ何ですか?』『水は入りませんか?』『背中に背負っている消火器は何ですか?』とか、もう闇雲に質問をしていたんですよね。普段、無口な自分がなんでこんなに興奮しているんだろう、と。そのうち体がわなわなと震えてきまして、ひょっとしたらこれをやれと、幼い頃に死んでしまった母親が僕の背中を押してくれているんじゃないかという気がしました」小山「それが水中写真家になろうと思ったきっかけなんですね。最初に撮った魚は何だったか覚えていらっしゃいますか?」
中村「ハタンポという魚で。神奈川県の海にはたくさんいる時々群れをなしている魚なんだけれど、その魚を撮って、2度目に撮ったのがキタマクラというフグです。食べると北枕になっちゃうよ、という」
小山「なるほど、毒があるから。それ以来、何種類くらいの魚をお撮りになったんですか?」
中村「何千種類、何万種類になっているんでしょうかね」
東京湾を定点観測している中村さん。中村さんが長年見つめてきた、東京湾の変化などについてもうかがいました。小山「東京湾に潜り続けてもうすぐ50年ですか?」
中村「50年の節目にちょっとまとめようかなと思っています」
宇賀「この50年で、やはり大きく変わってきたんですか?」
中村「多くの方は『きれいになったね、東京湾』『きれいでしょう』と言います。海面上にゴミがないでしょう、ゴミ処理がきちんとなされているからなんですね。ところが湾岸に住む人の人口がどんどん増えていますから、そこから放出される家庭雑排水とか、栄養源が流れていって、浄水場でちゃんと処理されますけども、ゲリラ豪雨で30ミリ、50ミリと降ると、その上を通っていっちゃうから。素通りで川から海へ通じて流れていくんですね。だからどんどんヘドロが厚くなっています」小山「一見、きれいな感じで。昔は上にヘドロがいっぱいありましたもんね」
中村「ずいぶん変わりました、50年で」
宇賀「それでもやっぱり生き物たちはたくさんいるんですか?」中村「そうですね。ただ温暖化の影響でどんどん北上しています。僕、大好きなのがタチオウで。タチオウの大群を1枚の写真の中にウワーッと泳いでいる姿を撮って終わりにしようと思っていますけども、何十年、狙っていても撮れません、まだ。深いですから、僕が潜るわけにはいかないんですけど、ドローンを沈めてシャッターだけ僕が切るという感じで」
小山「今の時代は水中ドローンがあるんですね」
中村「6、70メートルで深いですし」
宇賀「そんな深いところにいるんですね」
中村「航海上なので危ないですね。潮の流れもものすごく早いし、だから苦労しています」
小山「僕は熊本県天草の出身なんですけども、僕がいつも泊まるホテルに中村さんの写真が飾ってありまして。アレグリア天草というところで」中村「ああ、泊まっています、僕も」
小山「よく天草の海に撮影にいらっしゃっていたという話を聞いたことがあるんですけど」
中村「僕の大親友が天草に住んでいまして。亀島にログハウスの別荘まで作ってくれました」
小山「うちのお墓の真下が亀島なんですよ。潮が引くと繋がるところですよね。僕が勝手に天草のモン・サン・ミッシェルと呼んでいるんですよ(笑)。あの辺の海はどうですか?」
中村「あの辺は遠浅の海なんですね。天草はずいぶん潜りました。テーブルサンゴ、ミドリイシというサンゴが非常に群生して。ものすごく美しい海です」
宇賀「中村さんは5月に写真集『裏磐梯 五色沼湖沼群』を発表されたんですよね」中村「福島県の磐梯山が噴火して、たくさんの湖沼群ができたんですね。その中の一部、30個あまりを五色沼湖沼群と呼んでおります」
宇賀「大小30余りの湖や沼で国立公園にも指定されているということなんですが、唯一、中村さんが撮影許可されているんですね」
中村「34年前にどうしても沼に潜りたくて。当時の環境庁に撮影申請をしたけども、ダメで。でも、この沼が将来1つでも蒸発して消えてしまうこともあるかもしれないじゃないですか。きちっと潜って撮っておいた方がいいじゃないですか、ということで、許可されて潜ることができました。こういう世界は今までどこにもないですね、世界広しと言えども。火山が作り上げた物質と森と、地下水などなんですけど、火山性物質が湧き上がるので乳白色。ただいろんな物質が混ざり合ったりするので、上から見ると絵も言われぬような」
宇賀「お写真があるんですけど、本当に美しい」中村「沼は全部繋がっているんだけど、1つの水域だけが魚がいるんです」
宇賀「きれい。水の中と思えないですよね」
小山「いま、年に何回くらい潜るんですか?」
中村「いまは100日くらいでしょうかね」
宇賀「100日!」
中村「昨日も行っていました。潜る時は長いですから」
宇賀「この番組は『手紙』をテーマにお送りしていますが、中村さんが手紙が書きたくなるような場所はありますか?」中村「これまで最も厳しい環境で1ヶ月間過ごしたことがあるのがグリーンランド。地球最北のエスキモー村、シオラパルクという地名の村なんですけど、人口50人程の方達が住んでいるんですね。そこに日本人のエスキモーの方がいらっしゃるんです。大島育雄さんというのですが、その方がいらっしゃってびっくりしました。こんなところにも日本人がいるの? と。隣の村から10時間かけて、猛吹雪の中犬ぞりでそのシオラパルクに到達したんだけど、ヘトヘトで『お疲れでしょう?』と言われて、なんで日本語が? と。その方にはずいぶんお世話になったので、手紙をやり取りしたいな、と」
宇賀「そして今日は中村さんに、『今、想いを伝えたい方』に宛てたお手紙を書いてきていただきました。どなたに宛てたお手紙ですか?」
中村「僕たち撮影クルーを襲った母クジラに送りたいと思います」
中村さんからクジラへ宛てたお手紙の朗読は、ぜひradikoでお聞きください。
(*12月28日まで聴取可能)
宇賀「今日の放送を聞いて、中村征夫さんにお手紙を書きたい、と思ってくださった方は、ぜひ番組にお寄せください。責任をもってご本人にお渡しします。【〒102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 中村征夫さん宛】にお願いします。応募期間は1ヶ月とさせていただきます」
中村さんの写真集『裏磐梯 五色沼湖沼群』(大月書店)も是非チェックしてください。裏磐梯 五色沼湖沼群
中村征夫さん、ありがとうございました!
今回の放送は、radiko タイムフリーでもお楽しみいただけます。
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2026年の年賀状、お待ちしています!
SUNDAY’S POSTでは、毎年リスナーの皆さんから「今年の目標」を書いた年賀状を募集しています。送っていただいた方には番組から、その目標を手書きで書き込んだ、エールを送る葉書をお返します。その葉書の表と裏に、「応援メッセージ」と「おめでとうメッセージ」の動画が見られるQRコードが印刷されているのですが、今回はその動画に、先日ゲストでお迎えしたお笑いタレントのはなわさんが参加してくれます。さらに、サンポスオリジナルの「お年玉付き年賀はがき抽選会」も開催予定です!宛先は【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST】です。たくさんの年賀状、お待ちしています。
皆さんからのお手紙、お待ちしています
毎週、お手紙をご紹介した方の中から抽選で1名様に、大分県豊後高田市の「ワンチャー」が制作してくださったSUNDAY’S POSTオリジナル万年筆「文風」をプレゼントします。引き続き、皆さんからのお手紙、お待ちしています。日常のささやかな出来事、薫堂さんと宇賀さんに伝えたいこと、大切にしたい人や場所のことなど、何でもOKです。宛先は、【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST】までお願いします。
今週の後クレ
フジゆるぎの郵便局のみなさん
今回のメッセージは、愛媛県〈フジゆるぎの郵便局〉宮本 櫻さんでした!
「私は旅行が趣味で、友人と一緒に出かけたときは、旅先から互いにハガキを送り合うのが恒例になっています。同じ場所で一緒に撮った写真の中から、一番素敵だと思う一枚を選んでハガキに印刷し、友人に送りました。すると、旅行から帰って日常に戻った頃、友人から届いたハガキを見てびっくり。なんと、青い空と苔むした階段が印象的な、私が選んだのと“まったく同じ写真”が印刷されていたんです。お互いに同じ写真を選び、同じように送り合っていたことがとても嬉しかったですね。一緒に旅行に行けないときも、その友人には旅先で撮ったお気に入りの写真をハガキにして送っています。旅先で見つけた“もの”も、プレゼントとして友人に送りたいです。一緒に行けなかった場所でも、その土地の品物を荷物で届けると、少しでも旅先の空気を感じてもらえる気がします。」
※出演した郵便局、及び郵便局員宛ての手紙はいただいてもお返事できない場合がございます。あらかじめご了承ください。
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この番組ではみなさんからの手紙を募集しています。
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〒102-8080 東京都千代田区麹町1−7
SUNDAY'S POST宛








