VOL.262「かんずり」
新潟県妙高市に古くから伝わる、伝統的な発酵調味料「かんずり」。
唐辛子を主原料に、
雪深い妙高市ならではの気候を活かした製法で、
昔から各家庭で作られていた保存食です。
ですが、時代の変化とともに、自家製を作る人はいなくなりました。
地域の大切な食文化を未来へ伝えていきたい、
そんな思いで生まれた会社が、「有限会社かんずり」。
自社と妙高市の契約農家で唐辛子を栽培し、
米糀、ユズ、海水塩を使って、かんずりの商品化を手掛けています。
地域ならではの製法について、
同社の3代目、代表の東條昭人(とうじょう・あきひと)さんに伺いました。
「唐辛子、そして、麹をあわせて発酵させるという文化は、
ほんとうに、この辺りの地域だけだと思います。
最初に味を決めるのが、雪国ならではの、“雪さらし”という工程です。
夏場に収穫した唐辛子を、塩漬けしてアク抜きをするんですが、
そのツユに浸かっている唐辛子を雪の上に撒くというのが、雪さらしです。」
かんずりの味の決め手となる雪さらしには、
こんな効果があると、東條さんは語ります。
「雪がスポンジ代わりになって、唐辛子の雑味を全て吸い込んでくれるので、
丸みのある味になっていくんですね。
今年、雪さらしをした唐辛子は、これから3年間の熟成・発酵を経て、
みなさんの手元に届きます。」
真っ赤なペースト状で、程よい辛さが魅力のかんずり、
冬場は鍋やおでんに、夏場は肉や魚のスタミナ料理などに、
いろんなメニューの引き立て役になる万能調味料です。
世界でも珍しいこの唐辛子の発酵食品を、
今後は世界へ発信したいという東條さん。
じっくり時間をかけて作られる雪国の伝統の味、
海を越えて、世界の料理に活躍する日がくるのが待ち遠しいですね。