さまざまな木々や草花が生い茂り、美しく魅力的な花を育む山。登ったり、遊んだり、遠くから眺めたり。人それぞれ距離感は違っても、いつも私たちを癒してくれる存在です。
植物に関しての名著や、写真集、そしてグッズなどをご紹介するボタニカルブックス&グッズ。8月11日「山の日」の今回は、お部屋の中やベランダに吊るして、身近に「山」の生命力を感じることのできる、植物のアレンジメント『OYAMA』をご紹介します。
四季折々の山の世界を吊るして慈しむ『OYAMA』
フラワーアート&アレンジメントショップ「TSUBAKI」が手がける、『OYAMA』。その名の通り「山」を表現し、“四季折々の山の世界を吊るして慈しむ”植物のアレンジメントです。多く使われる植物は、モミジ、ムシカリ、ナナカマドなどの木や、ユキノシタ、イワヒバ、シダなどの草。日本の山々で普段見られるものばかりです。陽を好むものや日陰向きのもの、植物には様々な個性がありますが、『OYAMA』では、同じ環境下で育ちやすい植物ばかりを集めており、しかも、盆栽や小さな鉢植えと違い、土の量がとても多いので、水やりさえ忘れなければ、簡単に育てることができます。
そして、一番の特徴は、吊るして楽しむという形状。“土を吊るす”ことにこだわったのは、坂道や崖、岩場など、様々な土の状態の中で力強く生き抜く植物を、そのまま形にしたいと思ったから。『OYAMA』は、自然界の生命力をそのまま表現したいという思いで作られています。
『OYAMA』シリーズに込めた自然への思い
『OYAMA』シリーズを手がけるのは、「TSUBAKI」でgardener&floristを務める宮原圭史さんです。幼い頃から自然が大好きだった宮原さんは、学生時代には山岳部に所属。全国大会出場を果たすほどの強豪校で、様々な山に登り続け、立ちはだかる山々から自然の脅威を痛感し、圧倒されました。卒業後は園芸ショップに就職し、土や肥料、農薬といった園芸資材の勉強に没頭。土ひとつで植物が変わるという、自然の繊細さと不思議な面白さにのめり込んでいきます。独立後、植物で独自に何かを表現したいと思ったとき、学生時代に没頭していた「山」がテーマとして浮かんできたそうです。
「山で生きる植物には、自然界ならではの神秘的な生命の輝きがあります。落葉樹は四季に合わせて芽吹き、茂り、落葉し、また新たな季節に芽吹いてゆく。春の新芽の輝きは、言葉に変えられない美しさがあり、さらに一日の中でも色や形が変わったりなど、繊細な変化があるのです。そんな、四季のある日本ならではの“自然の神秘”を身近に感じてほしい」。そんな思いから、『OYAMA』を手がけるようになったそうです。『OYAMA』は山の景色を部分的に切り取ったものではなく、あくまで「自然」そのもの。自然界や植物の神秘を凝縮して形にしたものだと言います。
植物の世界は土が命
園芸ショップで土や肥料の知識を学んだことが、『OYAMA』を創りだす宮原さんの強みです。「植物のアレンジメントの基本は、まず土と根なんです。土は、軽くて清潔であることが第一。そして、普段は見えない根の部分が健康であることが、植物が元気である最も大切な条件。『OYAMA』の土は、水はけも考慮し試行錯誤してブレンドしたものです。枝や幹などの表の部分の見栄えばかりを気にして、根を傷める植え方をしてしまうと、すぐに枯れてしまいます。根を大切に植えてこそ、その植物の個性や良さが輝いて、思った以上の育ち方をしてくれるのです」。宮原さんにとって、自分の思い描いた通りの形に成長した植物を見ることも喜びですが、自分では予想がつかなかった意外な育ち方をした植物を見ることも醍醐味。『OYAMA』は20cmほどの小ぶりなものから、50cm以上の大きなものまであり、形や大きさは一様ではなく様々ですが、その不揃いこそが自然そのものなのかもしれません。
「今後は『OYAMA』に、倒木や岩、石など、もっと本物の山に近いものも取り入れていきたい。見た目がかわいい木や草花だけでなく、あくまで“荘厳な山の美しさ、植物の個性的な生命力を生活の中に取り入れる”ことが『OYAMA』の個性だと思うからです」と、宮原さん。神秘的で力強い「山」の生命力を身近に感じて、心豊かな毎日を送ってみてはいかがでしょうか。
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FLOWER ART AND ARRANGEMENT TSUBAKI
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