Yuming Chord
松任谷由実
2021.07.30.O.A
今日のコードは、引き続き、水中考古学者の山舩晃太郎さんを迎えして「『深海の街』スペシャル〜海の底で歴史の謎を解く!」です。
■今週のChordは“『深海の街』スペシャル〜海の底で歴史の謎を解く!”
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松任谷 由実
青い船で
松任谷 由実
ユーミン:世界各地の沈没船や、水中に眠る遺跡を日々、発掘・研究している水中考古学者、山舩晃太郎(やまふね・こうたろう)さんにいきなりQuestion!
今まで発掘したものの中で、自分でも「でかした!」と興奮したお宝って何ですか?ぜひ、ここで自慢してください。
山舩:いや、実はまだそこまで大きい発見というものはないんですけど、逆に他の人が「大きな発見だ!」って喜んでいるところに水を差してしまったということは何回もあってですね。
例えばの船の錨(いかり)というのは、船には絶対積んでいるものなんです。昔のロープってよく切れるので、錨があってもそこに沈没船はないって可能性が大きいんです。ただ、あまり沈没船の考古学に詳しくない人は、錨があったら「そこに沈没船がお宝を積んだまま沈んでいる!」と思ってしまうので、それで連絡が来たり、実際に連れて行かれたりするんです。そこで「いや、これは沈没船じゃなくてただの木材です」とか、あとは「海賊船だ!」と地元の方が言っているところで「いえ、これは別の船です」というように大発見を潰してしまうことは何十回もやっています(笑)。
ユーミン:そうですか(笑)。今日のコードは、「『深海の街』スペシャル〜海の底で歴史の謎を解く!」。
ゲストは、水中考古学者の山舩晃太郎(やまふね・こうたろう)さんです。
山舩さんは、普段は沈没船の調査や水中文化遺産の発掘のため、1年のほとんどを海外で過ごしてらっしゃるんですが、コロナ禍の今は、主に国内で活動をされてます。
ちなみに、日本の近海にも沈没船ってたくさんあるんですか?
山舩:これは確実に言えることがあって、何千何万隻あります。ただ残念なことに「見つかっていない」というだけであって、今も日本の周りにはたくさんの沈没船、また水中遺跡というものが眠っています。
ユーミン:そうするとね、すぐ埋蔵金とか結びつけて考えちゃうんですけれど、日本の埋蔵金はともかく、世界のそういう沈没船を荒らす人たちもいるわけですよね?
山舩:そうですね。これが本当に困ってまして。「トレジャーハンター」と呼ばれてる人たちなんですけど。
ユーミン:ヒーローみたいで聞こえは良いですよね。
山舩:そうなんです。それが大問題で、このトレジャーハンターの人たちって、要は遺跡を壊して中の物を盗んでいく人たちなんです。これを陸上でやっていると誰もが問題だとわかるんですね。
例えば、新しく卑弥呼のお墓が見つかって、ここに誰かが夜中にブルドーザーでやってきて、お墓を破壊して中の装飾品とかを持って行ったら大問題になるじゃないですか。沈没船を荒らすトレジャーハンターの人たちも、全く同じことをやってるんです。深い水中だったら、まずダイナマイトとかで遺跡を木っ端微塵にするんですね。その上で金属探知機で金目の物を取って行って売ってしまうんです。
沈没船を調べることというのは、今の私たちの最新鋭のロケットやスペースシャトル、宇宙ステーションを未来の人たちが調べて、その当時の技術がどのようなものだったかっていうのを把握するという意義があるんです。なので、重要な沈没船というのを調べることによって、当時の技術や文明の水準がわかるんですね。ただ、トレジャーハンターの人たちは、金貨や銀貨のようなものだけが目当てなので、貴重な遺跡である沈没船を破壊してしまうんです。
更に積荷のところも重要で、沈没船はたくさんの港から集められた商品を別の国や大陸に運んでいる最中に沈んでいるので、様々な商品を積んでいるんです。なのでその積み荷を発掘研究することによって、当時の経済状況や国と国との関係がわかるんですね。そういったものを破壊していくのがトレジャーハンターの人たちです。
あと、日本国内では「水中考古学」というものがあまり知られていないので、まだトレジャーハンティングというのが犯罪という風に認識されていない、というのがちょっと残念なところです。
日本国内で知られた学問になっていくにつれ、トレジャーハンターたちがどういう人たちでどういった犯罪行為をしているのかをしっかりと浸透させていかないといけないな、と思っています。
ユーミン:水中考古学の山舩さんのように、専門家と日本のトレジャーハンターは相関関係にありますよね。一般に知られるようになると、そういう人たちも増える。
今は日本でポピュラーじゃないから、そういう人たちもいないっていう。
山舩:そうですね。「水中考古学研究をやってます」って言うと「お宝見つけましたか」と聞かれるので、違いが認識されていないんですね。
これは私たち研究者の責任でもあって、水中考古学研究をすることによってわかる歴史がどれだけ面白くてロマンがあるものなのかをしっかり伝えていけば、わかってもらえると思うんですよね。
トレジャーハンターの人たちが沈没船を荒らして金銀財宝を盗んでいくというのがロマンではなくて、過去の人たちが行った冒険、歴史のストーリーにこそロマンがあるというのをしっかり伝えていきたいなと思います。
ユーミン:本当にそうですね。船が沈むってことは、クライシス(危機)じゃないですか。先人が歴史上で何かが起こったことに対してどう対処したかっていうことが未来の指針になりますよね。
今、このコロナ禍は、過去の人たちがどう感染症に対処したかとか、過去の行動がとても大事になってくるなとは、最近特に思います。
今日は「『深海の街』スペシャル〜海の底で歴史の謎を解く!」というコードで、水中考古学者の山舩晃太郎さんを迎えしてお話を伺いました。
いや本当に生き生きと歴史、船の構造、全てが繋がって、私の中にあった経験も何か全部意味を持って輝いてきたぞっていう、とても楽しいお話の時間でした。きっと、海の底には、さまざまな歴史の証言となる水中遺跡が、まだまだたくさん埋まっているんだろうなと思いました。
「深海の街」遺跡も、これから発見されるかもしれないし、夢とロマンは尽きません!
夢とロマン、といえば私のステージも、みなさんをきっと、別世界へ連れていくはずです。
全国60公演以上に及ぶツアー『松任谷由実 コンサートツアー 深海の街』の全公演日程が決定しました!
くわしくは、松任谷由実公式サイトやツイッター、インスタグラムをチェックしてくださいね。
みなさんと会える日を、心待ちにしています。
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