Yuming Chord
松任谷由実
2015.12.11.O.A
紅葉前線がゆっくりと南へ移動して、東京都心の木々はすっかり、葉っぱを落としてしまいました。
さびしさを感じつつも、いつもと違った風景を楽しめますよね。
そこで、今日のコードは「冬枯れの景色」。
■今週のChordは“冬枯れの景色”
Eye In the Sky
The Alan Parsons Project
冬の季語に「冬枯れ」という言葉があります。
“野山の草が枯れて、木も葉を落とし尽くした、荒涼たる風景に趣を見出そうという季語”だとか。
“枯れた野”と書いて「枯野」という季語もあって、特に中世以降の歌人や茶人は、「わび」「さび」の精神をあらわしたものとして、「枯野の美」が歌に詠まれたそうです。
何もないからこそ、潔くて美しい、かえってぬくもりを感じたりもする。その感じ、なんだかわかる気がします。まさにそこに、冬のよさがありますよね。
枯れた景色を彩る日本の色というのもまた、渋くていいものです。「侘び」「寂び」の境地を示す色の味わいは、日本独特のもの。品があって簡素、目立たないけれどしっとりとした色です。
着物の世界では「襲(かさね)の色目」というのがあります。
「袷(あわせ)の色目」とも言って、平安時代、衣服の表地と裏地の色の組み合わ せの配色で、季節によって着る色が決まっていました。
冬の色の中には、表が淡い茶色、裏が緑(青)の「枯れ色」。 表が黄色、裏が淡い青の「枯野」などがあります。
“冬枯れの景色”と聞いて、もうひとつ思い出したのはウィリアム・ターナーの絵。 英国・ロマン主義を代表する巨匠で、モネをはじめ印象派の画家に影響を与えたといわれています。
そんなターナーの絵、色彩はたとえそうじゃなかったとしても、英国のどんよりとした「冬」を感じるんですよね。
Bring On the Night
The Corrs
江戸の時代、庶民の楽しみのひとつに「枯野見」という行事があったそうです。
「お花見」ならぬ「枯野見」は、枯れ果てた野原に風流を感じるために、みんなで出かけること。江戸の「枯野見」の名所は、向島の長命寺周辺だったといわれてい ます。
そもそも冬枯れの季節が好きな私。「冬枯れ」をイメージしてつくった曲、「冬枯れ」の景色に触発されてつくった曲、いくつもあります。私の“わび・さび”系SONG ですね。
「ノーサイド」・・・“彼は目を閉じて 枯れた芝生のにおい 深く吸った”
「かんらん車」・・・“すいた電車が住宅街ぬけて ひとしきり冬枯れをふるわす”
「何もなかったように」・・・“昨夜の吹雪は踊りつかれ 庭を埋ずめて静かに光る”
「残されたもの」・・・“荒野かけぬける風の音を聞いて 冬の訪れをじっと感じていた”
「木枯らしのダイアリー」・・・“あなたのいないはじめて冬が空を覆った”
残されたもの
松任谷 由実
冬枯れの景色は、何もない。だからこそ、そこに身をおいてみたら、自分自身と対話ができそうです。
ブランケットと、ポットに入れたあったかいお茶を持って、「枯野見」に出かけてみたら、忘れていた大切なことに、気づくかも。ただいま創作活動中の私も、ひとり「枯野見」、してみようかな。
それでもやっぱり寒い日は、どこかあたたかい場所から、ガラス一枚へだてた枯野をながめてもいいかもしれません。
冬の遊園地で観覧車に乗ってみるとか…「枯野見」のポイントは、ひとりの時間を味わい尽くす、ってことですね。
そして、「冬枯れ」の次にやってくる「雪景色」を楽しめる恒例のコンサート、2016年の開催が決定しております!
今回で36回目を迎える冬の定番「SURF & SNOW in Naeba」。苗場プリンスホテ ルにて開催します。
2016年2月5日(金)を皮切りに、全8公演。 チケットはすでに一般発売されていますので、詳細は私のオフィシャルサイトでチェックしてください!
みなさんにお会いできるのを、楽しみにしています。
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