2024/11/15 O.A
六本木の国立新美術館で開催中、「荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ」の会場からお届けしています。
今日のコードは「ペインティングス・アー・ポップスターズ〜Yuming × Ei Arakawa‐Nash 前編〜」です。
■今週のChordは“ペインティングス・アー・ポップスターズ〜Yuming × Ei Arakawa‐Nash 前編〜”
私は今、東京・六本木にある国立新美術館で開催している、「荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ」の会場にいます。
企画展示室2Eの、床面積2000平方メートルのフロアを9つのフィールドに分けて、あちこち行き来したり、作品に参加したり、時にはパフォーマンスにまきこまれたりする自由な空間、しかも無料です!
そんな「生きた」個展を開催しているのが・・・この方です。
荒川ナッシュ:こんにちは。「荒川ナッシュ」までが苗字の荒川ナッシュ医です。ロサンゼルスからやってまいりました。
ユーミン:医さんは、「えい」という字がお医者さんの「医」という字なんですよね。
荒川ナッシュ:はい。医者という字は昔、「くすり」と読まれていたらしくて。
薬のように世の中の役にも立つし、ドラッグにもなってしまうという・・・ユーザーによって使い分けられるという、そんな意味だと自分では解釈しております。
ユーミン:幼い頃はそんなことをご存知なかったんですよね?
荒川ナッシュ:もちろん、後付けです(笑)。
ユーミン:(笑)。
今回のこの個展のタイトル「ペインティングス・アー・ポップスターズ」。
なんだかちょっと、どこかで聞いた覚えがあるんですけれど・・・。
荒川ナッシュ:これはですね、ユーミンの「Babies are popstars」から引用しています。
私の夫が偶然発案しました、“21世紀のポップスター”というのは、発言や行動、影響力がかなり大きい方々ですので、ペインティングをポップスターに例えて、“絵画の影響を考察しよう”みたいな意味もあります。
ユーミン:なるほど。
荒川ナッシュ:そして、「Baby=新しい絵画のアプローチ」みたいなものを体感するような展覧会になっています。
ユーミン:その「Baby」というのが、“BabyがParentsを選んで生まれてくる”という設定だったんですね。だから、そのペインティングスがBabyだとしたら、それぞれミッションがあるという風に解釈します。
荒川ナッシュ:“未来の私たちを守るためにやってきた”ということですね。
ユーミン:そうですね。で、そのなかの1つ、「絵画と音楽」という展示に参加させてもらっているんです。その展示のために「小鳥曜日」という新曲を書き下ろしました。今日はそれをお届けしようと思います。お楽しみに。
ユーミン:「荒川ナッシュ医 ペインティングス・アー・ポップスターズ」がスタートして3週間ほどになりますが、荒川ナッシュさん、ほぼ毎日、会場に出没していらっしゃるんですよね。
荒川ナッシュ:毎日ではないんですけれども、毎週こちらで展覧会のツアーをしています。
ユーミン:展覧会のツアーとは?
荒川ナッシュ:会場が2000平方メートルでかなり広いので、展覧会を毎回違った角度から私が直接案内する。そしてそのなかで様々なパフォーマンスが行われるようにしております。
ユーミン:改めて、荒川ナッシュ医さんのプロフィールを簡単にご紹介すると、1977年、福島県いわき市に生まれた荒川ナッシュ医さん。
中学生の頃から「パフォーマンス」「エンターテインメント」「ダンス」などに興味を抱きつつ成長。
98年からニューヨーク、2019年からはロサンゼルスに居住中で、米国籍も取得されています。
現在、ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザイン、大学院アートプログラムの教授をつとめながら、グループ展や個展に参加されていて、これまでに、ロンドンの「テート・モダン」、ドイツの「ミュンスター彫刻プロジェクト」、MoMAことニューヨーク近代美術館などで作品を発表されてきた荒川ナッシュさんですが、今回は、アジア初、つまりは日本初、の個展ということで、注目を集めています。
パフォーマンス・アーティストって、一体どういうことをする人なんですか?
荒川ナッシュ:単純に言うと、パフォーマンス・アートというのは身体を使ったアートなんですが、コンテンポラリーアートでは、「身体」といっても、生物学的なことだけではなく、労働階級・国籍・肌の色・性別・セクシャリティ・家族などなど、様々な領域に出たり入ったりしているんです。
私の仕事はそういった固定化されない身体の考え方をパフォーマンを通してみんなで楽しく共有する場を提供しています。
ユーミン:なるほど。
荒川ナッシュ:今回の展覧会なんですけれども、“絵画とパフォーマンスの関係はいかに”ということですね。パフォーマンスといえば、汗をかいて踊ったり歌ったり、照明を浴びたり、役者として演じたり。そういったパフォーマンスというのは、実は、絵画の制作やその展示にも結びついているんです。
絵画とパフォーマンスの長い歴史があるんですが、それを美術館の展示空間として偶像劇として展開しています。
ユーミンにも、ぜひ私の「メガどうぞご自由にお描きください」フロアで何か描いてもらえたらと思います。
Babies are popstars / 松任谷 由実
ユーミン:もうすでにたくさん床に絵が描かれています。
荒川ナッシュ:そうなんです。毎週日曜日は、こちらに大人も子供も誰でも、美術館の床に絵が描けるという作品になっています。これは1956年の吉原治良という方の作品を引用した作品です。
ユーミン:現代アートって、そういう概念を紹介するとか、考え方それ自体がアートみたいな、ね。床に自由にみんなが描くということが表現ですよね。
荒川ナッシュ:そうですね。普段、美術館というのはある決められた過ごし方だったりするんですけれども、お客に「絵を描いてくれ」ということはほとんどないんですね。
だからちょっと、決まり事を破っていくような作品が多いです。
荒川ナッシュ:美術館も、ユーミンが床に絵を描いてくれてうれしいと思います。
ユーミン:本当に!?この空間が喜んでくれている感じ?
荒川ナッシュ:と思います。
ユーミン:うれしいです。
荒川ナッシュ:すごくデモクラティックな場所なので、誰でも描いてもらえる場所なので。
ユーミン:そして・・・やってきました。マティスのドローイングが飾られた、アンリ・マティス × 松任谷由実 with 松任谷正隆による「小鳥曜日」の部屋です。
荒川ナッシュ:こちらなんですけれども、天井高8m×6mくらいの長方形ほどのスペースに、額に入ったマティスのドローイング作品が3点、ちょっと高めに展示されています。その前に葉っぱの無い樹木が床から生えているように展示されているんですけれども、逆の壁に斜めに配置された照明があるんですが、その光が樹木に当たって影がゆっくりマティス作品や美術館の壁を移動するんです。
その時にユーミンの「小鳥曜日」がかかるんですけれども、こちらは正隆さんが考案したインスタレーションアートになっています。
ユーミン:展示されている絵の高さとか、木の影がどういう風にどういう速度で移動するかとかもすごく綿密に打ち合わせされたんですよね。
荒川ナッシュ:そうですね。マティス作品に影を落とすということは美術館的にはタブーなんだけれども、上品なインスタレーションになったと思います。
ユーミン:彼がね、そういう人なんですよ。タブーなんだけど、上品という(笑)。
荒川ナッシュ:上品なタブー。
ユーミン:そうですね。だからピッタリだったと思います。
荒川ナッシュ:この空間に、オルゴールのような前奏で「小鳥曜日」がまさにインスタレーションのなかに入ってくるんですけれども、それを会場に来たお客様がじっくり聴いておられるのを目にしております。
ユーミン:医さんから「マティスのドローイングが、もし何か喋ったり歌ったり呟いたりしたら」というお題をいただき、“どういうことを言うかな?”と一生懸命考えたんですね。
それで、第二次世界大戦禍のニースで制作をしていたときのことを・・・見たわけじゃないんだけれど、すごく思い浮かべてしまって。地中海っぽい、明るいんだけれど哀愁があるような曲にしたいなと思いました。特に思い浮かべた時代背景が、レジスタンス運動が盛んだったり、すごく抑圧されたなかでの出会いだったりを表現したいなと思ったんです。
荒川ナッシュ:それはすごく意外でした。
ユーミン:そうですか。
荒川ナッシュ:やっぱりマティスというと明るい色彩が多いので、もしかしたら色彩的にはもっと明るいかと思ったんですけれども、翳りとか憂いが出てきたので、そこはすごく興味深い結果でした。
ユーミン:英語の訳を椎名誠さんのお嬢さんの渡辺葉さんがしてくださっているんですけれど、英語だと、「鳥」が意味するのが、“訪れてすぐ去っていくもの”ということだと説明を受けました。
荒川ナッシュ:まさにパフォーマンス・アートの展覧会として、1か所にとどまらないということで、相応しい曲だと思います。
ユーミン:ありがとうございます。
ではここで、この、マティスの絵画がある部屋でしか聴けない曲を、初・オンエアします!
荒川ナッシュ医「ペインティングス・アー・ポップスターズ」とのコラボ曲、松任谷由実で「小鳥曜日」。
小鳥曜日 / 松任谷 由実
ユーミン:改めてこの会場で曲を聴くと・・・合っているなって思いました(笑)。ラジオで初オンエアを聴いてくださった方はどんな会場を想像されるんでしょうか。楽しみです。
医さん、いかがですか?改めて、この曲とマティスの部屋との関係というのか・・・。
荒川ナッシュ:本物のマティス作品とユーミンの曲を聴けるというのはすごく貴重なことで、普通、ユーミンには楽曲を書いてもらっただけで満足だと思うんですけれども、それを空間として表現していただいたということですごく貴重な展示になっています。
ユーミン:こちらこそありがとうございます。
そして!最も気になる、パフォーマンス・アーティスト、荒川ナッシュ医のルーツ・・・そのお話は来週、この会場にて、ディープに掘り下げてみたいと思います。
「小鳥曜日」も、来週もう一度特別にオンエアしますので、お聴き逃しなく。
今日は、「ペインティングス・アー・ポップスターズ〜Yuming × Ei Arakawa‐Nash 前編〜」というコードで、東京・六本木の国立新美術館から、パフォーマンス・アーティストの荒川ナッシュ医さんとのトークをお送りしてきました。
今回、私も、オリジナル楽曲「小鳥曜日」で参加しているだけでなく、こちらにいらした一般の方に混じって、絵を床に描いてきたんですよ。
どこに、何を描いたか、は秘密。ぜひ、会場で探してみてください。わりとすぐにわかるんじゃないかな。
コラボレーション企画も随時開催中なので、何度も足を運んでください!
そのために、入場無料となっています。
12月16日の月曜日まで開催中で、金曜日・土曜日は午後8時まで開館延長!
休館日は毎週火曜日となっています。
公式サイトには、「荒川ナッシュ パフォーマンス・カレンダー」も掲載されているので、そちらをチェックして行けば、荒川ナッシュさんにも会えるはずです。
くわしくは、公式サイトで確認してくださいね。
そして、私からのお知らせです。
11月12日からは、有楽町にあるSusHi Tech Squareで佐藤健寿さんが撮影された能登の写真展が開催されています。
佐藤さんが各地で撮影した被災地のリアルな様子や復興の状況、私も行った「あばれ祭」の写真が見られますので、こちらにもぜひ足を運んでみてください。
そのほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページやツイッター改め「X」、Facebook、インスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。