yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

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第500話 自分にyes!と言う
-【軽井沢にゆかりのある作家篇】ジョン・レノン-

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軽井沢をこよなく愛した、伝説のアーティストがいます。 ジョン・レノン。 ジョンは、亡くなる3年前から、毎年、軽井沢を訪れました。 オノ・ヨーコの別荘近くにある、万平ホテルが定宿。 ヨーコと、まだ2歳の息子・ショーン、3人の仲睦まじい姿は、旧軽銀座、鬼押し出し、白糸の滝など、各地で目撃され、写真にも残っています。 早くから避暑地として、多くの重鎮、外国人を迎え入れてきたこの地は、いい意味で、ジョンを放っておいてくれました。 過度に騒がず、干渉せず。 ビートルズ時代から、マスコミにさらされ、想像を絶する心ない言葉を浴びせられてきた彼にとって、軽井沢は、唯一、ホッとできる場所だったのかもしれません。 さらに、信州の涼やかで少し湿った風は、ふるさとリバプール、ストロベリー・フィールズを想起させたのでしょう。 写真に写るジョンは、どれも、リラックスしていて、素の表情を隠していません。 ジョン・レノンという唯一無二の芸術家の人生は、ある意味、自分にyesと言うための闘いの歴史でもありました。 多大な賞賛、歓声や評価を受けても、彼自身、自分を肯定することは困難な道のりでした。 1973年にリリースされた名曲『マインド・ゲームス』に、こんな歌詞があります。 「Love is the answer」そして「Yes is the answer」。 愛こそが人生の答えであり、自分にyesということこそが、全ての答え。 さらに歌詞には、こんな一節もあります。 「yesというのは、あるがままの自分に全てをゆだねること」 自ら産み出す音楽で世界を変えたレジェンド、ジョン・レノンが人生でつかんだ、明日へのyes!とは? ジョン・レノンは、1966年11月8日、あるギャラリーのドアを開けた。 ロンドン、インディカ・ギャラリー。 知人だったギャラリーのオーナーに紹介されたのは、黒髪の女性。 日本人だった。 お互い、何者か、全く知らない。 オノ・ヨーコは、ジョンの名前すら知らなかった。 ヨーコは、何も言わず、一枚のカードをジョンに渡す。 そこには、英語で「息をしなさい」と書いてあった。 ジョンは、素直にその場で深呼吸した。 大きく息を吐く。 彼女の髪が揺れるほど。 思えば、ここ最近、深く息をしていないことに気づく。 ジョンとオーナーは、一枚の絵の前にいざなわれた。 真っ白い、何も書かれていないキャンバス。 横には鎖でつながれたハンマーと、置かれた箱には無数の釘。 絵のタイトルは『釘を打ちこむための絵画』。 ジョンが、「釘、打ってもいい?」と聞くと、ヨーコは、「ダメ、個展は明日から始まるの」と返す。 オーナーはヨーコに言う。 「ねえヨーコ、このひと、とんでもないお金持ちなんだよ、きっと作品を買ってくれる。一本くらい打たせてあげてよ」 そこでヨーコは眉間に皺を寄せて考え、「OK! 5シリング払ってくれたら、いいわ」と言った。 そこで、ジョンはこう答える。 「OK、それじゃあボクは、架空の5シリングを払い、架空の釘を打ち込むことにする」 ジョンとヨーコは、見つめ合い、微笑んだ。 二人は、それだけのやりとりで十分、お互いを知ることができた。 オノ・ヨーコの個展会場。 ジョン・レノンがさらに進むと、大きな銀色の脚立があった。 脚立の上、天井には何か絵があるらしい。 しかもその絵から、虫メガネがぶら下がっている。 ジョンは、脚立に足をかけた。 一段一段、ゆっくりのぼる。 見上げる、オーナーとヨーコ。 ジョンは、いちばん上までのぼり、虫メガネを手に取り、それで、天井の絵を見た。 そこには、小さな文字が、たったひとつだけ、こう書かれていた。 『yes』。 その文字を見たジョンは、体中が喜びに包まれるのを感じた。 彼は思った。 「ボクは、この言葉をもらうために、ここに来たんだ」 幼い頃、両親に捨てられ、叔母さん夫婦に育てられた。 一度は父と暮らすが、父は他界。 ようやく母と会うようになった矢先、18歳のとき、母も亡くなる。 生まれてから、自分が生まれてきたことを肯定する環境がなかった。 ビートルズが世界を席巻し、周りのひとは皆言った。 「オーイエス! オーイエス! 君はすごいよ!」 でも、心には響かない。 100万のひとにイエスと言われても、自分で自分にyesと言えなければ、世界は閉じたまま。 軽井沢での避暑。 ジョン・レノンは、オノ・ヨーコと、レンタサイクルの店で自転車を借りた。 ショーンを乗せて、旧軽銀座の「フランスベーカリー」でパンを買う。 前の籠から頭を出すバケット。 中軽井沢の雑木林の中にある、喫茶「離山房」にも自転車で行った。 Tシャツに短パン。ゴム草履。 ジョンのお気に入りは、離れの東屋。 そこでショーンと遊んだ。 父親を知らぬジョンが、父になる。 ハンモックに揺られ、目を閉じる。 優しい風が、傍らを通り過ぎていく。 オノ・ヨーコとつき合い、結婚したことで、多くの非難、批判が生まれ、ジョンを苦しめた。 でもジョンは、言った。 「二つの魂、ひとつの運命」 ヨーコは、自分に初めてyesを教えてくれたひとだった。 そして軽井沢の風が、彼に最後の憩いのときを用意してくれた。 大好きだった「万平ホテル」の部屋は、128号室。 ジョンが亡くなったのは、12月8日だった。 「ねえ、心を開いて、yes!って言ってごらんよ。 全てを肯定してみると、あんがい、答えが見つかるもんだよ」 ジョン・レノン 【ON AIR LIST】 ◆Mind Games / John Lennon ◆Out The Blue / John Lennon ◆Oh My Love / John Lennon ◆Imagine / John Lennon ★最終話の撮影は、「万平ホテル」様、「フランスベーカリー」様、「ミカド珈琲」様 他、ジョン・レノンにゆかりのある軽井沢の皆様にご協力いただきました。ありがとうございました。
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RECIPE

レシピ

霜降りひらたけの爽やかバケットサラダ

今回は、軽井沢で盛んに生産されている野菜、レタスを使った料理をご紹介します。

材料 (2人分)
  • 霜降りひらたけ 1パック
  • スナップえんどう 6本
  • ベーコン(ブロック) 50g
  • レタス 1/2玉(200g)
  • ミニトマト 6個
  • 卵 2個
  • フランスパン 10cm(75g)
  • くるみ 10g
  • 【A】マヨネーズ 大さじ2
  • 【A】ヨーグルト 小さじ1
  • 【A】粉チーズ 小さじ1
  • 【A】レモン汁 小さじ1
  • 【A】オリーブオイル 小さじ1
  • 【A】塩 小さじ1/3
  • 【A】こしょう 少々
写真 カロリー / 461kcal(1人分)
調理時間 / 20分
使用したきのこ / 霜降りひらたけ
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。スナップえんどうは筋をとり、ベーコンは2cmの長さに切る。レタスは一口大にちぎり、ミニトマトは半分に切る。
  • 2.
  • 卵は茹でて、縦4等分に切る。フランスパンは一口大に切り、オーブントースターで3分ほど焼く。くるみは粗く刻む。
  • 3.
  • フライパンに霜降りひらたけ、スナップえんどう、ベーコンを入れ、弱火で火が通るまで炒める。
  • 4.
  • 全てお皿に盛り、上からくるみをのせ、混ぜ合わせた【A】をかけていただく。

yesとは?

番組概要

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』今週あなたは、自分を褒めてあげましたか? 古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。あなたの「yes!」のために。

語り:長塚圭史 脚本:北阪 昌人 ▸ Profile

放送時間
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29
  • TOKYO FM…SAT 18:00-18:30
  • FM大阪…SAT 18:30-19:00
  • FM長野…SAT 18:30-19:00
  • FM軽井沢…SAT 18:00-18:29
長塚 圭史

PROFILE

長塚 圭史
語り: 長塚 圭史
1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。 また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。
北阪 昌人
脚本: 北阪 昌人
1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。 TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。 『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。 主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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