yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

STORY

ストーリー

第481話 見ること、聞くこと、感じること
-【群馬県にまつわるレジェンド篇】小説家 徳冨蘆花-

Podcast 

群馬県の伊香保温泉でこの世を去った、明治・大正期の文豪がいます。 徳冨蘆花(とくとみ・ろか)。 幼少期より病弱だった蘆花は、自分の心や体の変調に敏感でした。 破天荒で自由人。時にわがまま、傍若無人。 でも、こよなく自然を愛し、体を整えるために旅を好み、しばしば、伊香保温泉を訪れていました。 自分に海が必要とあらば、神奈川の逗子で暮らし、山間を欲すれば、伊香保におもむく。 そして晩年、妻と農業をやりながら住んだ地は、東京、千歳村粕谷。 現在の世田谷区、蘆花公園です。 彼の名がついた庭園には、今も旧宅が保存され、緑豊かな自然が残っています。 徳冨蘆花の名を世に知らしめたのは、明治31年11月29日から国民新聞に連載された小説でした。 題名は『不如帰(ほととぎす)』。 主人公、浪子は、実家の継母に苛められ、嫁いだ先の姑に苦しめられ、やがて夫は日清戦争に出征。 ひとりになった彼女は結核となってこの世を去る、というストーリー。 流行の兆しがあった家庭小説というジャンル、そして、女性の苦悩をひたすら描いた斬新さと、結核という当時の感染症のリアルな描写に、読者は次号を待ち望みました。 この小説は、「あ丶辛い! 辛い! ――最早(もう)婦人(おんな)なんぞに――生まれはしませんよ。」という流行語を生みました。 さらに、夫の出征を見送るシーンで、浪子がハンカチを振ったことを受け、「別れ」に「ハンカチを振る」ことがスタンダードになったと言われています。 蘆花は、逗子にいた頃、ある女性から聞いた逸話を、『不如帰』という小説に脚色したと、自ら認めています。 彼は生前、よく知人に話していました。 「私は、見たこと、聞いたこと、感じたことしか、書けない」 ゼロから想像して書くひとを決して否定はしませんでしたが、自分の流儀は、あくまで、自然主義。 この世を美化しない。ファンタジーでごまかさない。 そのことで周りとの軋轢を深め、時に誹謗中傷を受けましたが、彼は終生、己の主義を貫いたのです。 あえて茨の道を選んだ作家、徳冨蘆花が人生でつかんだ、明日へのyes!とは? ベストセラー『不如帰』を書いた小説家、徳冨蘆花は、明治元年、1868年に、現在の熊本県水俣市に生まれた。 徳冨家は、由緒正しい家柄。 祖父は島原の乱で細川家に仕え、海辺から大砲を撃ち、大手柄。 水俣の郷を授かった。 しかし蘆花の父は、気弱で学問が好きな大人しい性格。 豪傑の祖父とは相性が悪かった。 祖父は、孫を心底可愛がり、甘やかした。 蘆花は、幼少期から虚弱体質。5歳になると顔中におできができた。 体の弱さが、わがままな性格を助長する。 すぐ怒り、すぐ泣く。 学校に行っても弁当がまずいと、家に帰ってきてしまう。 先生も手を焼き、家でも手がつけられない。 顔の腫れ物はますますひどくなり、かゆくて掻けばカサブタになり、血がにじむ。 友人からは忌み嫌われ、誰も近づかない。 お小遣いは使い放題の裕福な環境にありながら、脆弱な体と顔のコンプレックス。 そんな状況が彼に与えた心情は、世の中への絶望と、人間への失望だった。 彼の口ぐせは、こうだった。 「みんな、大っ嫌いだ!」 小学生時代の徳冨蘆花は、いつもいらいらしていた。 学業は、まわりの誰もが驚くほど優秀。 あまりに出来過ぎると、それもまたいじめの対象になるので、わざと間違えたりした。 そんな蘆花が夢中になったもの。 それは、書くことだった。 毎日、日記を書く。 言葉を知るために、古今東西の名作をむさぼるように読んだ。 幸い家には、読書好きな父がそろえた本が蔵いっぱいにあった。 もうひとつ、蘆花が始めたこと。 それは、善人帳と悪人帳をつけること。 家にやってくるたくさんのお客。 彼らをつぶさに観察し、まずは善人か悪人かに分ける。 そして細かく描写していく。容姿、性格、口癖。 感情のおもむくまま、書く。 そのときばかりは、いらいらを忘れた。 自分は人間を裁く神だった。 おだやかで優秀、弟思いで誰からも好かれる兄のことを、あえて悪人帳に書いた。 それを読んだ兄は、何も言わなかった。 徳冨蘆花の5歳上の兄は、後に近代ジャーナリズムの礎を築くレジェンド、徳富蘇峰(とくとみ・そほう)。 家族の誰よりも先に、蘆花の才能に気づいた。 弟の激しさ、気弱な仮面の下の情熱、そして文章を書く力。 豪傑だった祖父の血を継ぐのは自分だと錯覚した時期もあったが、違う。 多情多恨の弟・蘆花こそ、世の中を動かす存在になる。 蘇峰は、弟を京都に連れていく。 自分と同じように同志社に入れるためだった。 両親は猛反対。 弱虫の蘆花に寄宿舎生活などできるわけがない。 そもそも、熊本の秀才も京都では通用しないのではないか。 しかし、兄弟は京都にやってきた。 校長・新島襄(にいじま・じょう)のお目こぼしで、なんとか入学。 蘆花、11歳の春だった。 このころ、まるで魔法が溶けるように、顔のおできが消えた。 色白の整った顔立ちが、姿を現す。 新しい環境に負けぬよう、勉強した。人生で初めて努力した。 成績はあがり、新島襄も可愛がる。 しかし、徳冨蘆花は、決して舞い上がることはない。 彼の姿勢は変わらない。 己が、「見ること、聞くこと、感じること」以外、信じない。 心が鈍ると、自然の中に身を置き、こう念じたという。 「己を救うのは、己のみ」 【ON AIR LIST】 ◆STOP, LOOK, LISTEN / Marvin Gaye & Diana Ross ◆よく見てごらん(LOOK AT THAT) / Paul Simon ◆耳を澄ませて… / 小曽根真 ◆愛し合い 感じ合い 眠り合う / サニーデイ・サービス 【参考文献】 『徳冨蘆花』福田清人・編/岡本正臣・著(清水書院) 『弟 徳冨蘆花』徳富蘇峰・著(中央公論社) ★今回の撮影は、「千明仁泉亭」様にご協力いただきました。ありがとうございました。 ※蘆花恒春園の撮影については、事前に許可をいただき、撮影しております。
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RECIPE

レシピ

霜降りひらたけとサーモンのバターポン酢炒め

今回は、群馬県で生産が盛んな野菜、ほうれん草を使った、こちらの料理をご紹介します。

材料 (2人分)
  • 霜降りひらたけ 1パック
  • 生鮭 2切れ
  • パプリカ(黄・赤) 各20g
  • ほうれん草 1束
  • ポン酢 大さじ2
  • サラダ油 小さじ1
  • バター 20g
  • わさび 適宜
写真 カロリー / 264kcal(1人分)
調理時間 / 15分
使用したきのこ / 霜降りひらたけ
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。パプリカは一口大に切り、ほうれん草は食べやすい大きさに切る。
  • 2.
  • フライパンに油を熱し、中火で鮭を皮目からこんがり両面焼く。
  • 3.
  • 霜降りひらたけとパプリカを加えて、強火で焼きつけてから弱火にし、ほうれん草とバターを加えてフタをする。
  • 4.
  • バターが溶けたところでフタを取り、中火にしてフライパンを揺すりながら、ポン酢を加えて絡める。
  • 5.
  • 皿に盛りつけ、わさびを添える。

yesとは?

番組概要

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』今週あなたは、自分を褒めてあげましたか? 古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。あなたの「yes!」のために。

語り:長塚圭史 脚本:北阪 昌人 ▸ Profile

放送時間
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29
  • TOKYO FM…SAT 18:00-18:30
  • FM大阪…SAT 18:30-19:00
  • FM長野…SAT 18:30-19:00
  • FM軽井沢…SAT 18:00-18:29
長塚 圭史

PROFILE

長塚 圭史
語り: 長塚 圭史
1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。 また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。
北阪 昌人
脚本: 北阪 昌人
1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。 TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。 『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。 主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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