EDC 営業日誌(過去のお客様)
2023年9月2日放送
本日のお客様は、藤井健太郎様。
1980年、東京都出身。
立教大学を卒業後、2003年、TBSに入社。『リンカーン』などのバラエティ番組で経験を積み、現在は『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆正解は一年後』『オールスター後夜祭』といった人気番組の演出を手掛けています!藤井さんだからこそ知る番組制作の裏側、そしてこれからのお話など、たっぷり伺いました!
 
 
藤井さんが演出を務めるTBS『水曜日のダウンタウン』には、川島さんもゲストやプレゼンターとしてこれまでにも度々出演。ただ、収録の際に藤井さんと直接打ち合わせをする機会はあまり無く、本番前や合間に一言二言話す程度。そのため、しっかり向き合って話すのは意外にも今回が初めてだそうです!
川島さんから「なんで今日、『土曜日のエウレカ』に出てくれているんですか?」という質問が。藤井さん曰く、テレビにはあまり出たくないそうですが、ラジオのような狭い空間で少人数で喋るお仕事であれば、時々オファーを受けることもあるのだとか。こうして今回のドライブが実現したわけですが、早速、藤井さんの“そもそものお話”をたっぷりと伺っていきます!
 
 
元々、テレビが好きだった藤井さん。就職活動の際には、テレビ局、レコード会社、出版社といったエンタメ業界を中心にいくつかの企業を受け、その中で受かったのがTBS。ただ、通常の採用試験ではなく、制作専門での入社。採用試験では30人ほどで行う合宿があり、短時間で行われる通常の採用面接と異なり、比較的長い時間、担当者と一緒に過ごすことで、判断してもらえたことが、合格に繋がったのではと振り返ります。また合宿では、夜中に飲んでいる時に“今この状況で、みんなが欲しているものを買ってくる”という、バラエティ要素も取り入れた課題もあったのだとか!本当に必要なモノはもちろん、場を和ます面白いモノも買ったりしたり、かと言って、要らないモノばかり買うわけにもいかない…という、絶妙なセンスを問われる課題だったそうです。
(大学時代の藤井さん!大学時代、3回に分けて、ほぼ全ての都道府県を巡る旅に出掛けたそうです!)
(こちらも、大学時代の藤井さん!ジャマイカでのお写真です。)
 
 
2003年、TBSに入社した藤井さん。深夜のバラエティ番組を志望していた藤井さんは、深夜の情報番組『Pooh!』を担当。そんな中、藤井さんは入社1年目で出した企画が通り、2年目でプロデューサー兼総合演出を経験!これが『限度ヲ知レ』という番組で、“どこまでOKで、どこまでがNGなのか?”その限度を検証するという内容でした。例えば、牛丼チェーン店でよくある“ネギ抜き”などの特殊オーダーはどこまで通るのか検証すべく、肉抜き、米抜き、最終的には丼抜き…と、エスカレートしていく内容でした。こういった、大喜利チックなことを世の中に仕掛けるというコンセプトは、現在の『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆正解は一年後』などの企画にも通じるものがあると言います。
 
 
入社3年目、2005年秋にバラエティ制作の部署に異動し、そのタイミングで始まったのが、伝説のバラエティ番組『リンカーン』。ダウンタウンを中心に、さまぁ~ず、雨上がり決死隊、キャイ〜ン、山口智充さんらといった豪華メンバーによるお笑い番組の立ち上げに、藤井さんはチーフADとして参加。当時、TBSではお笑い芸人によるバラエティ番組があまりなく、そういった番組の制作ノウハウが無かったそうで、制作チームの皆さんは試行錯誤しながら番組を作っていたと言います。
川島さんから当時のダウンタウンの印象を伺うと…「まあ言い方はアレですけど…怖いじゃないですか。笑」と藤井さん。チーフADとして浜田さんにカンペを出すなど、コミュニケーションを取る機会があり、この経験があったことで、のちに出演者に怖気づくことが無くなったと言います。『オールスター感謝祭』を担当した際には“島田紳助さん、優しいなあ”と感じたとも。笑
また、「プライベートから怖い人という意味ではないですけど、現場を引き締める浜田さんの雰囲気は独特。」ともおっしゃいます。川島さんも「間違ったこととか、段取りが悪かった時に“しっかりしようぜ”と鼓舞させるような緊張感がある。」と共感しつつ、若手時代に『リンカーン』に呼ばれた際、収録現場にいるレギュラーメンバーがギラギラした目つきをしていいて、緊張感が凄かったと振り返っていました。
藤井さんは、番組の作り方、出演者への指示の出し方、コミュニケーションの取り方などを『リンカーン』を通して学び、「現在放送されているTBSのバラエティ番組を制作しているスタッフは、『リンカーン』が出発点になっていることがほとんどだと思います。」ともおっしゃいます。直接番組に携わっていなくても、『リンカーン』で番組制作のノウハウを学んだ藤井さんの下で番組を制作するなど、TBS局内に『リンカーン』のDNAが脈々と受け継がれているそうです。
(番組のスタジオ収録で、カンペを出される藤井さん!)
(『キングオブコント』優勝後の、東京03さんとのお写真!)
 
 
2014年に『水曜日のダウンタウン』の放送がスタート!
(『水曜日のダウンタウン』の番組ロゴ!)
しかし、藤井さんとしては『リンカーン』でダウンタウンのお二人とじっくり向き合ったこともあり、新番組は“あまりやりたくなかった”のだそう…。収録では誰よりも面白くしてくれるお二人ですが、その一方で妥協を許さないお二人。収録に臨むまでの準備、労力がとにかく大きいというイメージがあったこともあり、ダウンタウンの番組を手掛けるには覚悟が必要だったようです。
結局は藤井さんが携わることになり始まった『水曜日のダウンタウン』は、それまでのダウンタウンの番組とは異なり、お二人がメインではあるものの、VTRを見てリアクションをするという形式。このスタイルは、打ち合わせを重ねる中で決まっていったそう。ただ、当初からVTRを見せる番組として立ち上がった訳ではなく、実際、初期の放送ではそこまでVTRの分量は多くなく、しっかりと“説”を説いていました。が、回を重ねるごとに次第にVTRにシフトしていき、今では“説”がつけば何でもアリな部分もあるとか。笑
初期の頃は、藤井さんの色をそこまで出さず、おとなしくしていた印象がご自身でもあったそうですが、後になって振り返ってみると、割と初期の段階で藤井さん色満載の説も!『勝俣州和 ファン0人説』(2014年5月21日OA)や『ロメロスペシャル 相手の協力なくして成立しない説』(同日OA)など、番組のカラーを印象付けた説は、意外にもレギュラー放送開始から4回目で登場していました。ただ、開始当初、松本さんからは「お笑い全開でVTRを作ると(面白くなかった時に)怖いぞ。スタジオものだったら最悪の場合、トークでなんとか面白くできるけれど、VTRだとこっちではどうもできないから…」といったことを言われたこともあったとか。そのため、番組初期には“お笑いの要素はある程度抑えよう”という話し合いもあり、当初は“真面目っぽいのもありつつ、笑いっぽいのもありつつ”のバランスで構成されていたそう。ただ、しばらくして笑いのセンスを認められたのか、番組側としても自信がついたのか…次第に笑いの要素が増えていき、現在のスタイルが確立されていったそうです!
 
(親交の深いPUNPEEさんとの2ショット!
『水曜日のダウンタウン』のメインテーマもPUNPEEさんが担当されています!)
ここで、藤井さんが特に気に入っている説を伺うと…「そんなに振り返らないんですけど、なんか、ヤバい人が出てくるのとか好きかもしれないですね。」とお答えに!笑
川島さんも「ヤバさの角度がポップじゃないですよね。」と言い、最近のテレビではあまり見なくなった、視聴者が“ドキドキ、ハラハラ”するものが『水曜日のダウンタウン』にはまだ残っていると感じています。
川島さんが忘れられない説は『「ラヴィット!」の女性ゲストを大喜利芸人軍団が遠隔操作すればレギュラーメンバーより笑い取れる説』(2021年10月20日OA)。
朝の「ラヴィット!」生放送にあのちゃんが出演。しかし、その裏では千原ジュニアさんや野性爆弾・くっきー!さん、笑い飯・西田さんなどが遠隔で、クイズに対する大喜利の答えを指示している…という、川島さんはじめ生放送の出演者は全く知らずに進行していたドッキリ企画でした。この企画については、川島さんから「やっぱり生放送でやっちゃいけないですよね…。」とクレームめいた指摘が。笑
こういった企画を実施する場合、通常は架空の番組を設定することが多いのですが、「ラヴィット!」という実在の番組で、その様子が全国に朝8時からそのまま流れてしまっています。この点については藤井さんも、普通は面白い部分だけを編集で抜粋して放送するものの、生放送では当然失敗したり、つまらない部分もそのまま流れてしまうため、“ハイリスク・ハイリターン”な企画だったと振り返ります。でも、そのように異例づくめだったからこそ大反響を呼んだこの企画。川島さんも「ラヴィット!」が夜のお笑い番組の視聴者にも注目されるきっかけになったと、感謝していました。
 
 
ここで、藤井さんから川島さんに質問。それは「今後の目標や、やってみたい番組の種類は?」というもの。
川島さん曰く、お笑い芸人としてこれまで掲げていた目標がことごとく叶わなかったそう。朝のMCなど、現在のポジションは自分で意図したものではなく、他の人に導いてもらったものだと言います。だからこそ、縁やタイミングを大事にしており、今はあまり目標を持っていないのだそう。ただ、テレビが大好きな川島さんは、同世代の芸人達が軒並みYouTubeを始める中で、自分はやっておらず、“テレビでどれだけできるか”を模索し、「TVerとかもある中で、テレビというものを若い人にも面白いなと思ってもらいたくて頑張っている」と話します。
これを聞いた藤井さんは「具体的にやりたい番組はありますか?」とさらに質問。
すると川島さんは“深夜に15分、自分の好きなものだけを一人で語る番組”をやってみたいと話します。今週末の競馬のレースで走る馬についてひたすら話したり、美味しかった“おかき”について15分話したり…と、VTRも無く、語りやパネルだけで構成するアナログな番組。YouTubeでもできる内容ではありますが、“何となく見てくれる”というのがテレビならではの魅力だと言い、夜中に何となくテレビをつけたお風呂上がりの視聴者に見て欲しい番組なのだとか。藤井さんも「すぐにでもやれそうな企画ですね」だと太鼓判を押し、さらに「YouTubeももちろん面白い。出演者からするとやりたいことができて、良いこともたくさんあると思うけど、テレビには偶然知ってもらう面白さがある。その面白さもやっぱり捨てがたいというか、大事にしたいなって感じはありますよね。」とおっしゃっていました。
 
 
番組の事前アンケートで伺った、これまで藤井さんが手掛けた中でベストの企画は…年末恒例の特番『クイズ☆正解は一年後』!
毎年、年始に“今年起こりそうなこと”を予想し、年末の生放送でその時の様子を見ながら答え合わせするという、これまでに無かったクイズ番組。藤井さんも“似たような企画をやっていないという意味では、ある種、唯一無二のものになったかな”と感じているとか。
“一年後の出来事を予想する”という大喜利の要素もある番組ですが、この点について川島さんは「大喜利としてすごくやりやすい」と話します。また、藤井さんは、大喜利は本来答えが無いもののはずなのに、この企画に限っては、一年後のことなので答えが絶対無いとも限らないという点がお気に入りだとか。どんなにめちゃくちゃなことを言っても、その予想が実際に起こり得るかもしれない所に、この番組ならでは魅力があります。
 
 
藤井さんの最近の悩みは「プライベートの時間がほとんど取れないこと」。
仕事しかしていない日々が長らく続いていると言う藤井さん。見たい番組や配信なども全然見ることができず、遊びに行くこともほとんどできていないとか…。また、収録番組の場合、放送される前であれば、いくらでも修正ができるので、ベストを尽くすため、少しでも直したい箇所があれば直さずにはいられないそう。
川島さんが「今、何やっている時が楽しいですか?」と尋ねると、“自分が言ったこと、やったことで面白がってくれたり、評価されたりするのが一番楽しい”とお話しに。ただその一方で、「もうレギュラー番組やりたくないですね。」という言葉も…!
「『水曜日のダウンタウン』はもちろんやり切りますけど。」と付け加えつつ、新たにレギュラー番組を手掛けることについては「もうやりたくないですね。」と話します。その理由については「毎週(放送を)出すのがしんどい…」とのこと。プライベートの時間とのバランスが悪いと感じており、もし『水曜日のダウンタウン』のレギュラー放送が終了したら、“そこからはもうちょっとゆっくりしたい”と現時点では思っているのだとか。
川島さんは「(『水曜日のダウンタウン』は)まぁ終わらないですよね。」と言いますが、藤井さんは「(番組が)弱って終わるのも嫌じゃないですか。」と言い、番組の勢いが落ちてきて終わったり、世間の評価が下がって番組が終了することは避けたいと思っており、「いいところでダウンタウン引退してくれと思います。」という冗談まで飛び出しました。笑
これを聞いた川島さんからは“川島目線ですけど、松本さんと浜田さんはもう一回売れようとしている”という話が!還暦を迎えてもコンビで多数の人気番組やコマーシャルに出演していて、全く違和感が無いという現状に、「いやもう怖いですね。」と話していました。
話を戻して、“ずっと毎週、レギュラー放送を作り続けるのは嫌だなあ”と感じている藤井さん。今後の夢も特に無いとおっしゃいますが、もし時間を自由に調整できるとなったら何がしたいか伺うと…「旅行とか長く行きたいですね。」とお答えに。カナダに留学されたオアシズの光浦靖子さんのように、長期で違う暮らしをしたいという気持ちがあるそうです。
 
 
藤井さんのエウレカは、「神は細部に宿る」というもの。
“細かいことの積み重ねが全体になっている”と考えている藤井さん。イチ視聴者だった頃の記憶を遡ると、番組のワンシーンだけをなぜか強烈に覚えていることがよくあると言います。そういった“あの瞬間、このシーン、面白かったよね!”ということは、不思議と他の人も共通して覚えていることも多く、だからこそ、細かい部分まで手を抜けないと感じ、それと同時に“誰かの記憶に残るワンシーンを作りたい”とも思うのだとか!
藤井さんならではのこだわり抜いた作品が、より一層楽しみになる今回のドライブでした!
 
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