PASSENGER DIARIES

EDC 営業日誌(過去のお客様)

2023年8月12日放送

Passenger

宮藤官九郎

本日のお客様は、宮藤官九郎様。
1970年、宮城県出身。
1991年より『大人計画』に参加。2001年に映画『GO』で第25回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、2005年に映画監督デビュー作『真夜中の弥次さん喜多さん』で新藤兼人賞金賞など、様々な賞を受賞されています。他にも、『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』『あまちゃん』『いだてん~東京オリムピック噺~』など、人気作品の脚本を手掛ける傍ら、俳優としてご自身が出演することも。また、バンド「グループ魂」ではギターを担当されるなど、多方面で活躍中!今日は、そんな宮藤さんの知られざる裏話が満載のドライブです!

 

 

〜歯の矯正〜

今回、ドライブを進める前に宮藤さんからお断りが・・・それは現在、歯の矯正中だということ。娘さんが小さい頃に矯正をしていて、歯医者さんに「お父さんは矯正しなくていいのか?」と娘さんを経由していつも言われていたそう。最後には「一生自分の歯でご飯を食べたいなら来てください。」と言われ、ついに矯正を決断。先日、治療する際に先生から「宮藤さん、今忙しいですか?」と聞かれた宮藤さんは、少し謙遜して「そうでもないです」と答えたところ、ものすごく喋りづらくなる器具を装着させられたのだとか。笑 今回は、少し滑舌が悪い(!?)宮藤さんとの貴重ドライブです!

 

 

~あまちゃん~

川島さんが「特に衝撃的だった。」と話す宮藤さんの作品は、2013年に放送されたNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』。元々、朝ドラを見る習慣が無かった川島さんですが、『あまちゃん』が放送されていた当時、初めて毎朝アラームをかけてリアルタイムで観る習慣がついたのだとか。また、サバンナの高橋さんや銀シャリの橋本さんなど、同じく“あまちゃん大好き芸人”と、「明日どうなるだろう…?」と楽屋でいつも話していたそうです。
宮藤さんにとっても『あまちゃん』は特に思い入れの強い作品。
2011年に東日本大震災があり、東北をテーマにした朝ドラを制作するため、スタッフが事前に東北各地を回っていました。その中で、一時期話題になった“可愛すぎる海女”にまつわる場所を見に行こうということになり、宮藤さんがスタッフと訪れたのが『あまちゃん』の物語の舞台になった岩手県久慈市。
海女さんがいる小屋を訪れてみると、そこにいたのはベテランの海女さんばかりでしたが、そこで宮藤さんはあることに気づきます。それは、海女さん同士で会話している時だけ、「じぇ!」という言葉を相槌のように使っていること。この言葉について尋ねると、リアクションとして使われる言葉で、標準語で言うところの「えっ!?」や「へぇ~!」と同じ意味だと教えてもらいました。また、よりびっくりした時は「じぇじぇ!」、さらは「じぇじぇじぇ!」と数が増えていきます。宮藤さんはその言葉が面白いと感じ、『あまちゃん』の作中で使用したところ、大きな話題となり、「じぇじぇじぇ!」は2013年の流行語大賞にも選ばれました。ちなみに、『あまちゃん』の放送から5年程経った頃、宮藤さんが久しぶりに久慈市を訪れると、その小屋のあった場所には「じぇじぇじぇ発祥の地」という石碑が建っていたそう!宮藤さんが最初に訪れた時は、あまりに何もなく、朝ドラの舞台になるのか心配だったそうですが、『あまちゃん』の放送によって久慈市に人が訪れるようになり、宮藤さんは“1個のドラマでこんなに風景が変わるんだなあ”と、しみじみ感じたとか。
さらに川島さんが印象深いのは、2013年の『NHK紅白歌合戦』の中で放送された『あまちゃん』とのコラボコーナー。この年、大ヒットした『潮騒のメモリー』や『暦の上ではディセンバー』といった『あまちゃん』の劇中歌が、半年間放送された全156話の流れを踏まえた、大晦日ならではの特別な“第157話”の中で披露されました。川島さんは今でもこの録画を見返すほど好きだそうです!
すると、“第157話”にまつわる裏話を宮藤さんが教えてくれました!
実はこの構成、『あまちゃん』の放送後、宮藤さんが小泉今日子さんの舞台を観に行った際に、楽屋で小泉さんから直々に提案されたものだったそう!「ただやっても面白くないよね。」といった話から、こういった演出が生まれました。小泉さんの提案をもとに宮藤さんが書いた脚本は、日本中のお茶の間を感動で包み込みました!

 

 

~大人計画~

1991年、宮藤さんは21歳の時、松尾スズキさんが主宰する『大人計画』に参加されました。宮城から上京して、柄本明さんが座長を務める『東京乾電池』や三谷幸喜さんが主宰する『東京サンシャインボーイズ』といった小劇場の舞台を観に行くようになりましたが、その中でも“ずば抜けて変”だったのが『大人計画』だったとか。笑
“ここだったら俺みたいな人間も居てもいいんじゃないか…”と思った宮藤さんは『大人計画』に興味を持ちます。『大人計画』には『文芸部』というものがあるとチラシに書いてあり、事務所に電話したところ、出たのは松尾スズキさんご本人!『文芸部』について質問すると、「脚本を書いたり、演出したりしてもらおうと思っている。」と説明され、宮藤さんが「やりたいです。」と言うと、「何か書いたものを持ってきてよ。」との返事が。宮藤さんは、当時書いていた脚本を渡すため、『大人計画』が公演を行っていた下北沢の劇場で出待ちをします。しかし、いくら待っても松尾さんは出て来ず…すると、舞台に出演していた『大人計画』の俳優・池津祥子さんが出てきたので、その方に「松尾さんに渡してください。」と脚本を託します。すると後日、池津さんから「松尾さんが稽古場に来いって言っている。」との連絡が!こうして、稽古場に通うようになり、『大人計画』に参加することになりました。
ここで、川島さんから「その時の台本はどんなものだったのか?」という質問が。実は宮藤さん、その内容を先日ちょうど思い出したそう。気になるその内容は…“お金持ちの家をホームレスの家族が少しずつ侵食して乗っ取っていく”というストーリー。なんと、2020年にアカデミー賞作品賞を受賞した韓国映画『パラサイト』と内容が酷似!笑 しかし『パラサイト』公開時にはそのことに全く気付かず・・好きすぎて、3回も観たそうですが、同じような内容の脚本を書いていたことは完全に忘れていたそうです。笑

『大人計画』に入ってしばらく経った時、宮藤さんは大学を中退。このことは、番組の事前アンケートでも『キャリアにおけるマイ大事件』の一つに挙げていただきました。『大人計画』には演出助手として入りましたが、いつしか役者もするようになり、忙しい毎日で、大学に全く行けなくなってしまいました。ご両親に「『大人計画』の活動を続けたいから、大学を辞めたい。」と手紙を書き、大学を中退。そこから1年程の間に、今の奥様と結婚もされており、宮藤さんの人生の中で大きなターニングポイントとなりました。「その時、いろんな自分の人生のことを考えるのが面倒くさかったんですよ。だから先に決めてしまった。」と当時を振り返る宮藤さんですが、それだけ『大人計画』の活動に夢中になっていたのでしょうね。


(『大人計画』では俳優としても活動される宮藤さん。舞台上での姿がこちら!)


(他にも、『キャリアにおけるマイ大事件』として「グループ魂での武道館公演」も挙げてくださった宮藤さん。
今でも“あの日に帰りたい”と思うほど、気持ちいい景色だったとか。
バンドは2020年末に一度解散されましたが、2022年春に再結成!)

 

 

~コント番組~

その後、『大人計画』の活動と並行して、放送作家としても活動。元々、『ビートたけしのオールナイトニッポン』が大好きだった宮藤さんは、その放送作家を務めていた高田文夫さんに憧れを抱き、“一番好きな人の話を同じブースの中で聞けて、ハガキも選んだり…あの仕事すごく楽しいだろうな。”と思っていました。
『大人計画』に入ってからも“本当はコントも書きたい”という思いを持ち続けていました。そんな中、『大人計画』の公演をよく観に来ていた放送作家の高橋洋二さんの紹介で、竹中直人さんと東京スカパラダイスオーケストラによるコント番組『デカメロン』の作家を担当することに。ここから、バラエティ作家として『笑う犬の冒険』や『ワンナイR&R』『リチャードホール』など、様々なコント番組を担当するようになります。
当時は番組の会議がとにかく長く、夜7時から翌朝5時までの会議を毎週、多い時は週2回もやっていたとか。『笑う犬』をやっていた頃、木村拓哉さんの『TV's HIGH』という番組の放送作家も務めていた時期には、2つの番組の会議が連続して行われ、最長でお昼の1時から翌朝5時までずっと会議をしていたこともあったそう…!「もう、フジテレビにずっといた。」と当時を回想していました。

 

 

~IWGP~

2000年には『池袋ウエストゲートパーク』(通称:IWGP)の脚本を手掛け、一躍世間にその名を轟かせます。これは、監督の堤幸彦さんから「何人か新しい作家さんとやりたい。」という要望があり、それ以前から宮藤さんと付き合いのあった、TBSの磯山晶プロデューサーが宮藤さんの名前を出したことがきっかけで、試しに第1話の脚本を書かせてもらうことになりました。こうして原作を渡され、途中まで読んだものの、“これ全部読んでたら書く時間無いな…”と思った宮藤さん。“犯人は分からないけど、とりあえず会話だけ書いてみよう!”と、池袋にいる若者の会話だけをひたすら書き、事件が起こったところで第1話が終わるという大胆な脚本で提出しました。しかし、これが功を奏し、宮藤さんの脚本が採用されました。ただ、「今、『IWGP』を見ると、僕も堤さんも明らかに困ってるんですよ…。」とも話す宮藤さん。原作を最後まで読み切らずに脚本を書き始めてしまったため、最後の結末と辻褄を合わすために、いろんな設定を足していったのだとか。
『IWGP』について川島さんからは「窪塚洋介さんにしか出来ない“キング”のキャラクターが忘れられない!」という話も!これについて宮藤さんは、「みんな“僕が脚本を書いて、ああいうキャラクターにした”みたいに思ってくれているから黙っていますが…(笑)、ほとんど窪塚くんと堤さんであのキャラクターを作ったんじゃないかな。」とおっしゃいます。窪塚さん演じる“キング”は、原作ではもっと厳ついキャラクターで、一方、主演の長瀬智也さん演じる“マコト”も原作のキャラクターとは少し異なっており、バランスをとるために、窪塚さんのシュッとした雰囲気を活かしたトリッキーなキャラクターが生まれたのだとか。堤監督が生み出した“無茶ぶり”とも言える設定に脚本家の宮藤さんが応える…といったやり方については、「今思えば、バラエティの会議のやり方なんですよね。」とも。コント番組で鍛えられた宮藤さんならではの脚本で、『IWGP』は今も語り継がれる名作となりました!

 

 

~神様は天狗にさせてくれない~

『IWGP』の1年後には、映画『GO』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞!ですが、「僕、なんか上手いこといかないっていうか…」とぼやき気味の宮藤さん。
『GO』が脚本賞を獲ったタイミングは、宮藤さんが脚本を手掛けたTVドラマ『木更津キャッツアイ』の放送時期と重なっていました。宮藤さん曰く、『GO』が評価される一方で、『木更津キャッツアイ』の視聴率がどんどん下がっていたらしく…「きっと、なんか喜ばないようにされているんですよね。」とおっしゃいます。その後、『木更津キャッツアイ』が映画化され、盛り上がっていた時期は、同時期に放送されたTVドラマ『マンハッタンラブストーリー』の視聴率があまり振るわなかったそうで…「神様は天狗にさせてくれないですね。」と、ご自身の人生を振り返っていました。

 

 

~いだてん~

番組事前アンケートでお聞きした『キャリアにおけるマイ大事件』の一つに「大河ドラマ執筆」というお答えも挙げてくださった宮藤さん。2019年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の脚本を手掛けられています。
朝ドラ『あまちゃん』の脚本については、“やってみたら出来た”という感触だったそうですが、大河ドラマとなると“やっぱり、俺できないんじゃないか…”と不安があり、“僕、時代劇はやらない方が良い”と考えていたとか。
当初のオファーは“戦時中から戦後までを描く戦争モノの作品はどうですか?”というもの。ただ、古今亭志ん生師匠の“満州で終戦を迎えた後、なかなか満州から帰って来ず、日本では皆亡くなったと思っていたところ、ある時ふらっと帰ってきて、その後、人気を得た”というエピソードが好きだと言う宮藤さん。なんとか志ん生師匠のお話にできないか…というところから始まり、さらにはオリンピックもテーマに加えた作品となりました。
大河ドラマの中でも、かなり現代に近い時代を描く異色の作品となった『いだてん』。他の大河ドラマは時代劇のため、描かれるのは資料があまり残っていない時代の物語。資料があまり無いからこそ独自の解釈を入れる余地がありますが、『いだてん』が描く近代は、当時の資料がほとんど残っていました。そのため、史実に沿って物語を作り、その中で宮藤さんの世界観も出さなければならず、“なんでこの時代を選んだんだ…”と、後悔もしたと言います。
一方、『いだてん』を制作する中で楽しかったことは、キャスティングを選ぶ際に元となる人物の写真が残っているため、ビジュアルが似ている人をキャスティングすることができ、“本物に似せていく”という醍醐味があったとか。“東洋の魔女”と言われたバレーボール女子日本代表チームの主将役を演じた安藤サクラさんがものすごく似せてくれたりと、他の作品には無いキャスティングの面白さがあったと言います。
川島さんが「今後、また大河ドラマのオファーが来たら、どうですか?」と伺うと…「僕は絶対に戦国時代を書きます!」と力強くおっしゃいます。笑
資料が限られていたり、想像を広げる範囲がある時代の方ができることが多いそうで、「現代劇であの長さの物語を書くのは自分の処理能力がもう追いつかないかもしれない。」とも。それだけの労力をかけて作り上げた『いだてん』は、宮藤さんの代表作の一つとなりました。

 

 

~印象深い言葉~

宮藤さんの『これまで人に言われた言葉で一番印象深いもの』は、最近のワイドショーを見ていた娘さんに言われた一言。
それは、「お父さんは俊一郎(宮藤さんの本名)でシナリオを書いているから、“シナリオ・シュン”だね。」というもの。笑 無邪気な娘さんの一言に、“面白いなあ…”と思っていた宮藤さんですが、後日、さらに驚いたことがあったそう。
それは、娘さんのスマホの画面がチラッと見えた時のこと。なんと、娘さんが宮藤さんのLINEを“シナリオ・シュン”という名前で登録していたのだとか!
「そこまでしなくてもいいだろ!そこは“お父さん”でいいだろ!」とツッコむ宮藤さんでした。笑

 

 

~季節のない街~

宮藤さんが企画・監督・脚本を手掛ける最新作『季節のない街』が、現在Disney+ (ディズニープラス)にて独占配信中!

こちらは、黒澤明監督の作品『どですかでん』の原作として知られる山本周五郎さんの小説『季節のない街』をドラマ化したもの。黒澤監督の『どですかでん』は元々宮藤さんが大好きな作品。その原作である小説『季節のない街』を読んだところ、『どですかでん』の中では取り上げていないエピソードがあったそう。そこで、この小説を現代に置き換えて描いたのが今回のドラマ。原作は、戦後すぐの東京のバラックで暮らす貧しい人々のお話でしたが、バラックに馴染みの無い人も今の世代には多いのでは…という考えから、地震や水害などの災害により仮設住宅で暮らすことになった人々の物語に置き換えたそうです。全10話で、一つのエピソードが25分程度なので、あっという間に観られるそう! お盆休みは『季節のない街』をご覧になってみては?

『季節のない街』の詳しい情報は、こちらから!

 

 

~宮藤さんのエウレカ!(発見・気付き)~

宮藤さんのエウレカは、監督作『真夜中の弥次さん喜多さん』を海外の映画祭で上映した際のエピソード。
作中では、阿部サダヲさんが“色んなことを早合点して「わかった!」と言ってしまう”キャラクターを演じていました。その阿部さんが「わかった!」と決め台詞を言うたびに、映画祭では「Eureka!」と英語の字幕が出たそう。『土曜日のエウレカ』のタイトルにもなっている“Eureka”という言葉には、“発見”とか“気付き”といった意味があります。ただ、そのことを知らなかった宮藤さんは理解が追いつかず、観客にもあまりウケておらず、宮藤さんも阿部さんもスベったような雰囲気になってしまったのだとか…。今回、この『土曜日のエウレカ』に出演するにあたり、真っ先にこのエピソードを思い出したと言う宮藤さん。川島さんは「『土曜日のエウレカ』という番組に、若干苦手意識あったのでは?」とツッコみつつ、字幕の訳し方一つで観客のウケが大きく変わってくるという話に共感。「字幕の人ってめちゃくちゃセンスが無いと、ニュアンスを伝えられない」と話していました。

最後に宮藤さんの今後の夢のお話を伺うと、「長生きしたい。」というお答えが。来年や再来年のお仕事の話を聞くと、以前はワクワクしていたそうですが、最近は”俺、その時元気かな…”と、体や心、さらにはアイデアが出てくるのか…というところも含めて不安に思うようになったとか。40代後半になると、朝は早くから仕事できる一方、夜は全くできなくなってきてしまい、ついついテレビを見てしまうそうです。
これからも宮藤さんには健康的に年齢を重ね、様々な作品で私たちを楽しませていただきたいですね!

 

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PLAYLIST
  • 「BANG! BANG! バカンス!」
    SMAP
  • 「潮騒のメモリー」
    天野春子(小泉今日子)
  • 「VENUS [KH-R REMIX]」
    SHOCKING BLUE
  • 「忘却の空」
    sads
  • 「もうすっかり NO FUTURE!」
    グループ魂
  • 「君にジュースを買ってあげる」
    グループ魂