EDC 営業日誌(過去のお客様)
2022年10月29日放送
本日のお客様は、俳優の松尾諭様。
1975年、兵庫県出身。2000年公開の映画『忘れられぬ人々』で俳優デビュー。
その後、TVドラマ『電車男』、『SP
警視庁警備部警護課第四係』、NHK大河ドラマ『天地人』、朝の連続テレビ小説『てっぱん』など数多くのドラマに出演するほか、『進撃の巨人』や『シン・ゴジラ』といった人気映画にも出演されている実力派俳優!そして今年、「文春オンライン」に連載した自伝的エッセイ『拾われた男』が大ヒット!Disney+とNHKエンタープライズの共同制作でドラマ化され話題になりました。
本日は、拾われた男・松尾諭さんの、数奇な俳優人生を巡るドライブです!
 
 
 
松尾さんと言えば、数多くの話題作品に出演されている人気俳優!なかでも、自伝風エッセイ『拾われた男』が今年ドラマ化され話題になりました。こちらの作品は、Disney+とNHK
BSプレミアムで今年6月から公開され、10月からNHK の地上波でも放送が始まりました。ドラマでは、松尾さん役を仲野太賀さんが熱演。太賀さんについては「素晴らしいです!
“太賀君が僕に見える”という声が多い。彼は僕に寄せるために体重を10kg増やしたけど、“どういう風にすれば良いですか?”など、直接アドバイスを求めてくることはなかった。」と語り、本人に助言を貰っていないにも関わらず、“松尾諭”になりきった太賀さんの演技力の高さに感嘆しつつも、“10kg太れば、僕みたいな芝居になるのかな・・・”と、冗談も飛ばしていました。笑
エッセイ化された話は、この後詳しくご紹介します!
 
 
(幼少期の頃の松尾さん)
俳優になろうと思ったのは、高校2年生の時に観た演劇がキッカケ。学校行事の一環で、生まれて初めて舞台を観ることに。“演劇=吉本新喜劇”と思い込んでいた関西育ちの松尾さんにとっては、“笑えない芝居の何が面白いんや?”と、観るまでは期待していなかったそうですが、終演時のカーテンコールで、拍手と照明を浴びてる役者さん達のキラキラした顔を見た時、“人ってこんなに良い顔をするんだ!”と衝撃を受け、“自分も舞台に立ちたい!俳優になりたい!”という夢を持ったのです。ですが、高校2年生という敏感な時期。恥ずかしさで“俳優になりたい!”とは周りに言えませんでしたが、1人だけとても仲の良い友達に相談すると、「大学に行った方が、つぶしが利くんじゃない?」と、アドバイスを受け、演劇部に入るつもりで大学に進学。しかし、大学では高校から続けていたラグビー部に入部した松尾さん。笑 その後は、学校に行くこと自体に身が入らなくなり、3年間で単位を18しか取れず大学を中退。ただ、“俳優になりたい!”という漠然とした夢だけは持ち続けていた松尾さんは、上京を決意。そして、この決断が松尾さんを数奇な人生に誘うことになります。
 
 
(ラグビー部時代の松尾さん)
上京して間も無いある日。朝方に喉が乾き、家の前の自動販売機でジュースを買い、取り出そうとした松尾さん。すると、地面に封筒が落ちていることに気付きます。封筒を開けてみると、中には石川県行きの航空券が!当時、飛行機に乗ったことが無く、さらには、バイト漬けの日々で生活に余裕の無い時期。松尾さんには航空券がとても高額なモノに見えました。そして、“これはお金になる!”と思い、航空会社に勤めていた友人に払い戻しが可能なのか、確認の電話を入れます!笑 すると、その友人は、「落とし主が紛失届けを出していたら、犯罪者になる。だから交番に持って行った方がいい。」と、(松尾さんの人生を救う)適切な助言を与えます。それを聞いた松尾さんは、近くにあった表参道の交番へ。そこで、取得物の場所など詳細を記入し、最後にお礼を[望む・望まない]といった欄があり、松尾さんはもちろん“望む”に○を付け帰宅。すると、2〜3日後に、落とし主から電話があり、お礼をしたいということで表参道のカフェで会うことになります。現れたのは50代前後の小柄な女性。「(拾って頂き)ありがとうございました。」と伝えられ、御礼としてビール券3000円を差し出されました。松尾さんは、万単位のお礼を期待していたため、この時、“がっかり”されたそうですが・・・笑 会話を続けていると、「関西の方ですか?」と質問を受けます。最近上京してきたことを説明すると、
続けて「何をしに上京されたのですか?」と聞かれます。そこで、松尾さんは「役者になりたくて・・・」と、当時はまだ恥じらいがありつつも正直に伝えると、女性の方は「そうなんですか。私、プロダクションの社長をやっているんです。」と、お答えに!
松尾さんが拾った航空券の持ち主はモデル芸能事務所の社長(現・会長)!そして、この御縁から松尾さんは、女性が経営をするモデル事務所『FMG』に所属することに。たまたま拾った航空券は夢へのチケットだったのです!ちなみに松尾さんは、この出来事を人に話す時は、要点を掻い摘んで、「表参道でモデル事務所にスカウトされた。」と、言っているのだとか。笑
こうして、舞台経験が無いまま、モデル事務所『FMG』に預かりという形で所属し始めた松尾さん。しかしなぜ社長は、チケットの恩はあるものの、俳優志望の松尾さんを預かることにしたのか伺うと、「なんか、当時の社長がちょっと変な人で、昭和のモノが好きというか。うまく説明できないんですけど、モデル事務所なので綺麗な人ばっかりいるじゃないですか。ちょっとそれがつまらなかったんですかね。笑」と、推測されており、それを聞いた川島さんも「事務所内がキラキラし過ぎてたから、ちょっと骨董品的な・・・。」と、何故か納得していました。笑
(上京時の松尾さん)
モデル事務所のFMGは当時、演技のレッスンを始めたばかり。そのため、まだ新人の松尾さんは演技レッスンには呼んでもらえず、代わりに、モデル事務所ならではのモデルウォークのレッスンに参加。笑 当時のことを、「場違いでしたね。参加していたのは15人ぐらい。男性は僕を入れて2〜3人。しかも、僕以外はみんな“シュッ”としたモデルの体系の綺麗な人ばかり。僕は“ボテッ”としていたから先生も困ってましたね。笑」と振り返ります。その後、週1回は演技のレッスンに参加させてもらえることになりますが、生活するためにバイト漬けの日々。そんなある日、社長から呼び出され、「車の免許持っている?」「ラクビーやってたんだよね?」「口は堅い?」など、次々に質問を受けます。全ての条件に当てはまっていた松尾さんは、社長から「井川さんの運転手をやってもらいます。」と言い渡されます。井川さんというのは、事務所の先輩であり、看板女優のあの“井川遥”さん!ちょうどその頃、日本中を癒し始め、人気が急上昇していた井川さんは、電車やタクシー移動が難しくなり、社長は専属ドライバーを付けることにしたのです。募集をかけるとファンの方が殺到してしまうので、同じ事務所のいわば身内である、松尾さんに白羽の矢が!必要な条件は、運転が出来て、守ることができて、時間があり、一緒に歩いていても週刊誌に撮られない人。笑 全ての条件を満たしていた松尾さんは、役者の道を志す一方で、井川さんの専属ドライバーに任命されたのです。
井川さんとの思い出を伺うと、「最初は、何しゃべっていいのかなっていうのもあったんですけど、音楽の話で盛り上がって、そこから結構喋るようになりました。」とおっしゃり、キッカケは、EGO-WRAPPIN'の「色彩のブルース」!当時、関西では人気が出ていましたが、全国区ではなかったこの曲を車内でかけた時、井川さんが興味を示したそうです。松尾さんは、TSUTAYAでバイトしていて、様々な
CDを借りて、自分なりのコンピレーション作り、車内の選曲を担当。歳も近く、食べるのも呑むのも好きだったお二人は、共通の趣味もあり徐々に友人関係に。「本当に申し訳ないんですけど、仕事っていう感覚は少なかったですね。」と、松尾さんが振り返るように、多忙な日々の中でお互いにリフレッシュ出来る空間が車の中だったのかもしれません!
 
 
キャリアにおけるマイ大事件についてもお聞きしました。
1つ目は、2007年に放送されたドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』。オーディションに合格され、自身初のメインキャストに選ばれました。主演の岡田准一さん、真木よう子さん、堤真一さん、神尾佑さんと共に繰り広げた激しいアクションシーンも話題を呼び、ドラマは大ヒット!このタイミングで、松尾さんはバイトを辞め、役者一本の生活に。しかし、その後、期待していたほどオファーがなく、再びバイト生活に・・・。
2つ目は、2016年公開の映画『シン・ゴジラ』。公開前から話題になっていましたが、松尾さんは当時の心境を振り返ります。「やっぱゴジラですし、庵野さんですし、樋口さんもやってるし、まぁヒットするなとは思ってました。でも結構話がややこしいし、そんなにゴジラが出てこないし、大丈夫なんかなと思ってたんですよ。なんか僕が思ってた倍以上売れましたね。」と、予想を超えるヒットに驚いたそうです。その中で松尾さんは、保守第一党政調副会長・泉修一役で、長谷川博己さんが演じる主人公・矢口蘭堂をメンタル面でも支える重要な人物を熱演。作中で、矢口に水を渡しながら言った、「まずは君が落ち着け。」という台詞は、ある映画情報サービスが調査した『2016年映画流行語ランキング』で、5位にランクイン!『シン・ゴジラ』が大好きな川島さんも、「良いシーンでした!」と、絶賛していました。
そしてマイ大事件の最後は、やはり『拾われた男』。まず、書籍化までの経緯をお伺いしました。刊行元でもある、文藝春秋の編集の方と飲み会で出会い、どちらから頼んだのか定かではないそうですが・・・、松尾さんが何かを書いてみる、という流れになりました。その後、文藝春秋が発売している雑誌『文學界』への寄稿をお願いされた松尾さん。担当の方から「何を書いても良い!」と言われますが、今まで執筆活動の経験もなく、何を書いたら良いか分からず迷っていたそうです。そこで思いついたのが、今までに何千回と話してきた鉄板エピソード[航空券を拾った話]。散々喋ってきたことを文字にして寄稿すると、評判が良く、すぐに連載が決まり、書籍化も決定!さらに、最終話に向けて書き進めていた段階でドラマ化も決まります!ドラマ化にあたっては、松尾さんにある想いが。それは、NHKで制作をして欲しいということ。理由は、NHKの演出家・井上剛さんにお願いしたかったから。井上さんはこれまでに、朝の連続テレビ小説『あまちゃん』や、大河ドラマ『いだてん』などを手掛けている、松尾さんも大好きな演出家。一緒に仕事をされたことがあり、交流もあったため依頼したそうです。こうして、井上さんの演出でドラマ『拾われた男』は制作が進みますが、井上さんから「もう、動いている。」と言われて以降、詳しい情報は入ってきませんでした。するとある日、配信もやることになったと告げられ、蓋を開けると配信元は、まさかのDisney+! Disney+が日本製作のドラマを配信するのは初めてのこと。松尾さんも“俺の買いた本が、Disney+で・・・!?”と、驚きを隠せなかったと言います。配信始まった時の並びは、左にスター・ウォーズドラマ『オビ=ワン・ケノービ』、真ん中に『拾われた男』、右に『ドクター・ストレンジ』だったそうで、この話に川島さんは、「(事務所に入った時と)また似たような体験ですよね。周りをモデルに囲まれ時みたいに。」と、過去の松尾さんの経歴に似ていることを発見しました!
 
 
バイプレイヤーと評されることの多い松尾さんに、必要とされるがあまり、苦労することについてもお伺いすると・・・「説明セリフをよく振られがちって言うか・・・、別に染み入ることを言いたい訳じゃないけど、なるべく早めに主役にパスを投げるということが多い。」とのお答えが。今起きている状況を、視聴者にわかりやすく、かつ、わざとらしくなく伝え、主役に良いパスを出す立場が多いそうです!川島さんはこの話を聞き、「一緒だわ。」と呟き、続けて「若手の頃はそこまで“はみ出さない”人間で、企画のトップバッターをよくやらされていた。(この企画は)“こういう感じで、こういうルールですよ”っていうのを散りばめながら笑いを取り、最終的には狩野英孝ちゃんに渡すとか。笑」と、昔は、バラエティ番組でバイプレイヤーだったと同時に、その立ち位置も好きだったと振り返ります。
一方で、“バイプレイヤー”という言葉にあまり良い印象を持っていなかった松尾さん。なぜなら、作品によっては、主演も脇役もやる、つまりいつでも“プレイヤー”だと思っているから。主演のための作品ではなく、作品のための主演。チームプレーが必要なお芝居だからこそ、“バイプレイヤー”という言葉に疑問を感じていたそうです。周りの方は、良い意味で使用していましたが、ラグビー経験もある松尾さんならではの着眼点ですね!
 
 
松尾さんの思い出の場所は大阪・心斎橋。正確に言うと、アメリカ村の西の方の四ツ橋。大学時代から上京するまでの期間、一番入り浸っていたエリアで、レコード屋や、よく行っていたクラブがあったそうです。先日、その四ツ橋近くの美味しいベトナム料理屋さんを友人に薦められ、久しぶりに訪れた時、周りを見渡すと懐かしの風景が。実際に周辺を散策すると、レコード屋は別の店になっていましたが、クラブに関しては、店自体は無いものの形はそのまま残っていました。この光景を見た時、当時の楽しかった記憶が甦ってきた松尾さんは、ノスタルジーな気持ちになり、薄暗い階段で涙したと言います。
 
 
松尾さんは、来週の11月6日(日)から、舞台『しびれ雲』にご出演。
作・演出は、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんで、内容は、瀬戸内海辺りにある架空の島での日常のお話だそうです。また、ケラさん曰く“のんきに見れる芝居”だそうで、架空なのに何故か身近に感じ、多くの方が共感出来るような舞台となっているそうです。東京のみならず、兵庫・福岡・新潟など、地方公演もあるので、是非チェックしてみてくださいね!
※詳しくはHPをご覧ください。
https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/shibiregumo
 
 
松尾さんのエウレカは、“何事も早めに対処するということ。”
実は現在、2冊目の本を執筆中!しかし、締め切りはだいぶ前に過ぎており、何回か延長をしているそうです・・・。最初は笑顔で“大丈夫ですよ!”と言っていた編集者の方も、最近は笑顔が消えたそうで・・・笑 「人様に迷惑をかけて書いてるこの状況がすごくしんどくて・・・もっと早めに上げるべきだったと、今、痛切に思っております。」と反省している松尾さん。笑 ちなみに、内容はラブストーリーですが、「イケメンと、綺麗な女の子が出会ってキスするみたいな感じではない!」と熱弁するように、松尾流のラブストーリーを構想されております!
そして、今後の近い目標は、家族とゆっくり過ごすこと。今年は特に大忙しで、まとまった休みが取れていないそうなので、都心から離れたコテージのような場所で、家族とゆっくり焚き火をしたいそうです。
ご家族、そしてご自身の為にも、まずは、本の執筆・・・頑張ってください!
 
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