PASSENGER DIARIES

EDC 営業日誌(過去のお客様)

2022年5月14日放送

Passenger

尾崎世界観

本日のお客様は、尾崎世界観様。
1984年、東京都出身。高校在学中の2001年に『クリープハイプ』を結成。2012年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。同作は、「2013年CDショップ大賞」の入賞作品に選ばれました。その後も、名曲を数多くリリースされ若者を中心に人気を集めます。音楽活動の他、2016年には初小説『祐介』(文藝春秋)を書き下ろしで刊行。2021年1月に単行本が発売された小説『母影』は「第164回芥川賞」の候補作に選出されました。またテレビ番組「セブンルール」にレギュラー出演しているほか、ラジオパーソナリティやナレーターなどマルチに活躍され、メジャーデビュー10周年の今年、ますます注目を集めるミュージシャン・小説家です!

 

 

〜川島さんとの関係〜

以前、『タモリ倶楽部』で共演された尾崎さんと川島さん。出演された回は、文学作品の1行目を当てる「ファーストセンテンスゲーム」という企画。当時、小説『母影』が、第164回“芥川賞候補”となっていた尾崎さんと、芸人として言葉を扱う川島さんがゲームに挑戦!お二人は「凄く文学的で、とても楽しかった!そして、何よりタモリさんは凄かった!」と番組を振り返りました。
また、今回のドライブでは、尾崎さんに、『芸人・川島明』を一言で表してもらうことに!すると、「誰も傷つけない優しい毒を持っている。人の心にひっかかる言葉を自販機みたいに生み出す化物。」と表現。
“化物”という言葉を使って申し訳なさそうにする尾崎さんでしたが、川島さんは、「いやいや、嬉しい化物ですよ!誰も傷つけないというのは“乳酸菌”みたいな事ですかね?笑」と、喜んでいました。尾崎さんは、テレビなどでコメントを求められた時に、一言で笑いを生み出す川島さんの技術に興味があるそうで、なかでも、2020年のM-1グランプリの決勝進出者発表会で、進行役の川島さんが、大声で暴れ回る“おいでやす小田”さんに対して発した「荒れる株主総会」というフレーズが大好きだそうです!この会見を、映画館のライブビューイングで観ていたお笑い好きの尾崎さんは、「タイトルになりそうな強い言葉が出てくるのが羨ましいですね。」と伝えます。

これに対して川島さんは、「若手の頃は上手いことを言うのが苦手だった」と明かします。今田耕司さんや陣内智則さん、ブラックマヨネーズの小杉さんなどが、空間を切り裂くような声でツッコむのに対して、低音ボイスの川島さんはそれが出来ず・・・。そこで目立つ方法を考えた結果、ハッシュタグ大喜利のように“今、起こっている現象が絵画だったらこんなタイトル”というイメージで、一言で表すことを意識し始めたそうです。また、テレビ番組の時代の変化にも恩恵を受けていると言います。昔のバラエティー番組は制作費が高く、ひな壇に50人ほどの芸人がいましたが、最近は出演者の数が減り、1人あたりの話す時間が増えたことで、持ち味を発揮できるようになりました。ご自身のイベントに芸人さんをブッキングされるなど、芸人さんとの交流も多い尾崎さん。特に川島さんの後輩・ダイアンの大ファンで、ダイアンのために「二人の間」という曲を書き下ろしました。「カッコいいし、“本当にダイアンのことが好き”っていうのが凄く伝わりました。」と、川島さんも感想を語る「二人の間」は、ダイアンの公式YouTubeチャンネルでMVがアップされています!川島さん曰く、“中年の慰安旅行みたいなMV”という映像にも注目して観てみてください!

なお、クリープハイプの最新アルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』には、尾崎さんが歌う、クリープハイプ・バージョンの「二人の間」が収録されています。

 

 

〜そもそものお話〜

中学時代は、ボクシングジムに通っていたという尾崎さん。1人で通い、トレーニングに励んでいましたが、とあることがキッカケで辞めることに・・・。縄跳びやミット打ちなどの激しい練習後、尾崎さんは、ジムが用意していたペットボトルの水をよく飲んでいました。しかし、他のジム生はその水で、“うがい”をするぐらいで飲み込んでいなかったそうです。“飲めばいいのに・・・”と、尾崎さんは疑問を抱いていましたが、実はその水は、トイレの洗面所の水が入っていたそうで、飲む用ではなく“口をゆすいだり、潤す用”だったのです・・・!その事実を知った尾崎さんは、“なんか嫌になった!”と、辞めることを決心。笑
また、トレーナーからもあまり期待をされていなかったそうで・・・「それを知らずに飲んじゃう時点で、トレーナーには、ボクシングに向いてないと思われていたんでしょうね。笑」と、苦い思い出を振り返りました。笑

その後、周りで流行っていたこともあり、ギターを購入。子供のころからプラモデルや雑誌の付録など、何かを作ることに対して苦手意識があったそうですが、ギターを買ってすぐ、曲作りに挑戦!誰かの曲をコピーするのは難しく、譜面が読めなかったので、とにかく“曲を作れたらスゴい!”という思いで、オリジナル曲の制作に取り掛かります。
しかし、音楽には正解が無いため、“曲として出来ているのか?出来ていないのか?”という判断がつかなかったと言います。一方で、音楽というものが持つ“点数化されない曖昧さ”が救いとなってここまで続けてこられたともおっしゃいます。
中学時代、“ゆず”などの影響で流行っていた路上ライブをやっていた尾崎さん。選んだ場所は、なぜか埼玉県の草加市!東京出身の尾崎さんですが、渋谷などギラギラ感のある場所は避けて、草加駅や浅草の奥の方など、落ち着いたところを選んでいたそうです。「渋谷など、本気で出掛けてきている人の相手は出来ない。地元でちょっと買い物するぐらいの人の期待にしか応えられない。笑」と説明する尾崎さんに対して、川島さんは、「目立ちたいのか、ソッとしておいて欲しいのかわからないですね。」とツッコんでいました。笑
その後、17歳でバンドを結成。そのバンドが『クリープハイプ』。メンバーの入れ替わりはありますが、ずっと同じバンド名で活動を続けています。そして、ライブハウスにも出るようになりますが、当初はクリープハイプが奏でる音楽に対して、ライブハウスの人から「どのイベントに呼んだら良いか分からない」と、ブッキングに困っていることを伝えられていたそうです。
そんななか、褒めてくれる方が必ず口にしていたのは、「世界観あるね。」という言葉。しかし、この言葉に尾崎さんは、どこか濁されている気がして、“何か褒める言葉に困って言っているな。世界観って何だ?”と、ずっと腹が立っていたそうです。そして、そこまで言われるなら逆に名前として使おうと決心し、反骨心も含め、『尾崎世界観』と名乗り始めました。

 

 

〜小説家として〜

尾崎さんは音楽活動を続けながら、2016年に初の小説「祐介」を発表。そして2020年に小説「母影」が第164回“芥川賞候補”になりました。
そんな尾崎さんに小説と作詞の違いについて伺うと、やはり、“全然違うモノ”だとお答えになります。“歌詞はメロディーに何となく吸い込まれるイメージがあり、曲に歌詞が格納される感覚”があり、一方の小説は、自由に言葉を紡げるため、納める作業に苦労されたそうです。歌詞では“いかに説明をしないか”という点を意識されてきましたが、小説は文字だけで情景が浮かぶように細かな説明が求められ、それに悩むことが多いとか。
また、言葉の紡ぎ方に関しては“短距離と長距離の違いがある”とおっしゃいます。作詞では、短距離のように、「ここだ!」という1行に全力を込めることがありますが、小説でそれをしてしまうと、あとで読み返した時に恥ずかしい思いをすることがあるそうで、全体に力を均して書いていく、いわば長距離走。音楽は聴かせどころの“サビ”を作りますが、小説では“サビ”を作らず、全体を意識されています。この真逆の作業をやることによって、これまでにやってきた音楽活動にも良い作用があると言います。
小説を書くことで、“出来ない事をするのが好き”ということに改めて気付かされたという尾崎さん。小さい頃から、出来ない事をいくつも体験してきて、今でも“出来ない事がある”という環境がご自身にとっては心地よく、それを求めてしまうそうです。

そして、小説「母影」が第164回芥川賞の候補に選ばれた時の心境も伺いました。
候補者に選ばれた人には電話が掛かってくるという流れがあるそうですが、なかなか尾崎さんの電話は鳴らなかったそうです。予定の日よりも少し過ぎた時、諦めかけていた尾崎さんの携帯に1件の知らない番号からの着信履歴がありました。しかし、内心、“これで光熱費の催促の電話だったら本当に落ち込むな・・・”と、ネガティブな考えが頭をよぎりましたが、覚悟を決め折り返すことに。電話は繋がりませんでしたが、選考委員からの電話は折り返しても繋がらないというルールを知っていた尾崎さんは、少し可能性が上がったと期待を寄せます。すると、担当編集者の方から「正式なご連絡が届くと思うので、お待ちください。」とLINEが・・・!その後、電話が掛かってきて、正式に候補に選ばれた連絡を受け取りました。

尾崎世界観さんは先月、クリープハイプメジャーデビュー10周年を記念して、初の歌詞集 『私語と』を発売。インディーズ時代から最新アルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』までの楽曲の中から、尾崎さん自身が、言葉を中心に厳選した75曲の歌詞が収録され、さらに本書のために「帯」「はじめに」「おわりに」というタイトルの歌詞も書き下ろしされています。これまでに作られた数多くの楽曲のなかから、75曲を選んだ基準は、曲が無くても成立する歌詞。“メロディーのために書いた言葉(歌詞)”ではなく、“言葉のために書いた言葉(歌詞)”を選んだそうです。 皆さんもチェックしてみてくださいね!

ここで、話は言葉のチョイスについて。
ちなみに川島さんは、ツッコみなどで使いたい言葉などを、映画やドラマ、美術館などで見つけると、メモを取っているそうで、“いつ、このフレーズを使えるかな?”と、頭の引き出しに蓄えているそうです。例を挙げると、尾崎さんも好きだとおっしゃった「株主総会」。実はこの言葉は川島さんも以前からお気に入りだったそうで、“いつか使えたらな”と思っていた矢先に、おいでやす小田さんが暴れ回ってくれたそうです。笑
一方、尾崎さんは“こういう人がいたら面白いな”などのニュアンスをメモすることはあっても、特定のフレーズをメモすることはないそうです。ニュアンスのメモを取ることは繊細な作業で、捉えた感情が言葉(文字)になった瞬間に変わってしまう時があると言います。小説はそのニュアンスを書くことだと感じていますが、文字にすると、ご自身が感じる100%のニュアンスが、70%ぐらいに下がってしまうことも・・・。
この、“書いた瞬間に冷めてしまう感覚”に川島さんは、「テイクアウトしたらダメな食べ物だった。お店で食べといた方が良かった・・・“チーズ、カッチカッチになってるやん!”っていうことありますよね。」と同調。川島さんの例えに対して尾崎さんは、「“テイクアウトしたらダメな食べ物”ってのは、メモしてましたか?」と尋ねると、川島さんは「いやいや・・・ただ“チーズ、カッチカッチ”はよく咄嗟に出たなと思いました。笑」と、照れ臭そうに明かしていました。

 

 

〜野球好き〜

東京ヤクルトスワローズ”の大ファンで知られている尾崎さん。お父様の影響でスワローズファンになり、物心付いた頃から応援していた尾崎さんにとって、スワローズは生活の一部。ご自身のライブ前もギリギリまで試合観戦!また、ライブの本編からアンコールまでの短い休憩時間でも、気になって観ていたこともあるのだとか!笑 昨シーズン、20年ぶりに日本一に輝いた“東京ヤクルトスワローズ”。尾崎さんが喜んでいた姿が目に浮かびますね!

 

 

〜思い出の場所〜

尾崎さんの人生で思い出深い場所は、「東武ストア 梅島店」。19歳の頃に夜勤のアルバイトをされていた場所で、そこには悔しい思い出が・・・。
当時は24時間営業だったこのスーパーでレジ打ちを21時から24時まで行い、お客さんのラッシュが過ぎると、少し休憩を挟み、朝まで品出し作業。品出し中に、たまにお客さんが来るのは精神的にも体力的にも辛かったそうです。特に覚えているのは、近所のスナックの店員さん。かなり酔っていて、顔色は紫色!さらに、酒臭いというよりボンドのような匂いがしていたそうです。笑 その人は、店員をレジに呼ぶ際、手を“パンッ、パンッ”と叩き、尾崎さんは、犬を呼ぶようにして呼ばれたと言います・・・。それがとても悔しくて、心の中で“ボンドッ・・・!”と叫びながらも、接客を行っていたそうです。もう1人は、“ボンド”が働くスナックの社長なのかは分かりませんが、少しコワモテの偉い感じの人!朝方に、アジア系のスナックの女性を連れて来店し、女性に「好きなだけ買え!」と、スーパーで爆買いツアーをスタート!笑 そして、尾崎さんが仕事終わりの唯一の楽しみとして密かに狙っていた半額のいちご大福を、根こそぎ買って行くそうです。笑 その人が通り過ぎた和菓子コーナーには、毎回“月餅”しか残っておらず・・・。当時19歳の尾崎さんは月餅の良さがまだ分かっていなかったみたいで、“これはいらないな・・・”と残念な思いをされていたそうです。
そんな尾崎さんにとって、この「東武ストア 梅島店」は原点といえる場所。ここで悔しい思いをした時期があるから今があるとおっしゃっていました。

 

 

〜影響を受けた人〜

尾崎さんが、これまでに仕事で最も影響を受けた人は、ネットで悪口を書く人。普段エゴサーチをして、批判的な意見への怒りをガソリンに変えて、作品に向けたり、ラジオの話のネタにするなど、何かを生み出すための原動力にしています。意味のないネット上の発言から何かを生み出すことで、尾崎さんなりの復讐を果たしています。
最近腹が立った書き込みは、『“尾崎世界観”って名前、前から何かモヤモヤしてたんだよ。“世界観”というのは、何でもないことだから、それに信念をもって名前にしていることが理解できない。』という、名前に対する批判的なコメント。先述したように、“世界観”は、尾崎さんが反骨心を持ちつつ、この曖昧な言葉に皮肉を込めて、逆に利用する形で付けた名前。また、この話は様々なメディアで話しているということもあり、このコメントを書いた人は、尾崎さんのことを調べることもなく、ただ的外れな批判をしていることになります。こういう経緯も含め、尾崎さんはまず書き込んだ人のアカウントプロフィールをチェック!こういう批判的なコメントをする人は、大抵プロフィールでスベっているそうで・・・・笑
「まぁ、どっちもどっちですよね・・・。」と尾崎さんの怒りを鎮める川島さん。笑
尾崎さんも、冗談半分で怒りをぶち撒けてくださいましたが、「“トムとジェリー”のような関係で、仲良くやってます!」と楽しさも感じているそうです。
皆さん、SNSは節度を持って投稿しましょうね!

 

 

〜メジャーデビュー10周年〜

メジャーデビュー10周年を迎えたクリープハイプは、現在、全国ホールツアー真っ只中!また、先月、メジャーデビュー10周年を記念して、インディーズ時代の楽曲『exダーリン』を配信リリースされました。今作は、もともとメジャーデビューアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』のボーナストラックに弾き語りで入っていた曲。それを、バンドバージョンとして新しくレコーディングし直しました。ファンの方にとっても思い入れのある名曲が、10年の時を経て、パワーアップしました。是非、聴いてみくださいね!

クリープハイプ - 「ex ダーリン 弾き語り」(MUSIC VIDEO)

 

 

〜尾崎世界観さんのエウレカ(発見・気付き)!〜

尾崎さんが人生で見つけたエウレカは、『言葉の面白さと、不完全さ』
ミュージシャン・小説家として、言葉を使う仕事をされ続けている尾崎さん。最近は、言葉が過剰に受け取られる世の中だと思っており、だからこそ、“言葉は面白いし、言葉が頼りない”と感じています。そんなエウレカのなかで、尾崎さん自身も言葉に対する思いが変わって来たそうです。「ちょっと前までは、言葉に振り回されていたんですけど、最近は言葉が可愛くなってきました。」と最後に語ってくださり、“それも含めて言葉の魅力だな”とおっしゃっていました。今後も、尾崎さんが“紡ぐ言葉”に注目ですね!

 

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PLAYLIST
  • 「イト」
    クリープハイプ
  • 「二人の間」
    クリープハイプ
  • 「イノチミジカシコイセヨオトメ」
    クリープハイプ
  • 「ex ダーリン」
    クリープハイプ
  • 「ナイトオンザプラネット」
    クリープハイプ