PASSENGER DIARIES

EDC 営業日誌(過去のお客様)

2022年4月16日放送

Passenger

日髙のり子

本日のお客様は、声優の日髙のり子様。
1962年、東京都出身。幼い頃より演じることに興味を持ち劇団に入団。子役を経て、1980年にCBSソニーより「初恋サンシャイン」で歌手デビュー。その後もラジオ番組のパーソナリティ、テレビ番組の司会、レポーターなど様々なジャンルでご活躍されます。
1984年に声優デビュー。翌年、アニメ『タッチ』のヒロイン・浅倉南役に抜擢されます。以来『となりのトトロ』草壁サツキ役、『らんま1/2』天道あかね、『犬夜叉』桔梗、『名探偵コナン』世良真純、『るろうに剣心』瀬田宗次郎など、数多くの名作のキャラクターを演じられてきました。現在は「あさイチ」(NHK)、「cool japan」(NHK)、「ミライ☆モンスター」(フジテレビ)などのテレビ番組やCMのナレーションも担当されています。

 

 

〜あの声も日髙さん!〜

『タッチ』のヒロイン・浅倉南や、『となりのトトロ』の草壁サツキといった誰もが耳にしたことがある声の持ち主と言っても過言ではない日髙さん。実はドライブ好きの方なら、さらに身近に感じる声も担当されています!それは、「ETCカードが挿入されました。」というフレーズで聴き馴染みのある“ETC車載器”の声!(パナソニック製) ある日突然、ETC車載器音声のお仕事が来たそうで、機械音声を担当されるのは、アニメ作品などを含めても、その時が初めて。アニメ作品での声優業は、キャラクターに合った声だけでなく、感情を乗せる芝居を必要とされますが、機械音の収録現場は、求められることが全く違いました。まず受けた指示は“感情は要らない”ということ。声は波形が判断するので同じテンポ・高さを要求され、声優で培った経験が全く生きない現場に苦労されたのだとか・・・。また、難しい表現にはなりますが、“棒読みと無機質は違う”とのこと。それを聞いた川島さんは、以前林原めぐみさんが綾波レイ(エヴァンゲリオン)の役作りの際に同じようなことを意識していたとおっしゃっていたことを思い出し、日髙さんにそのことを伝えると・・・同じ声優仲間からすると、あまりにも自然に綾波レイの声を演じられていたので、そんな苦労をされていたことに気付かなかったそうです!素晴らしいキャリアを築きあげてきた日髙さんや林原さんですら苦戦することがあると知った川島さんは、声のみで魅せる“声優”という仕事の奥深さを、改めて学びました。

 

 

〜はいぱぁナイト〜

川島さんが日髙さんを知ったのは、ラジオ。中学生の時、既にお笑い芸人を目指していた川島さんは、毎週土曜日にKBS京都で放送されていた、“雨上がり決死隊”と“バッファロー吾郎”のラジオ番組『京都発!吉本決死隊』を愛聴していました。毎週のようにネタハガキを送り続けますが、人気芸人2組のラジオ番組ということもあり、選考のハードルが高いのか、なかなか採用されません。しかし、あまりにも採用されないので、“送ったハガキはKBS京都に届いているのか?” “地元の郵便局はちゃんと働いているのか?”と、ネタの内容以前にハガキ自体が届いていないのではないかと疑い始めます。笑 そこで、確認のために別の番組にハガキを送ってみることに。その番組が日髙さんがパーソナリティーを務めていた『はいぱぁナイト』でした。
すると、早速1枚目で“おなまエイド”というコーナー(ネタは不採用だけど、ラジオネームだけを読み上げるコーナー)で、川島さんのラジオネームが読まれたそうです!こうして、ラジオの中に自分の居場所を作ってくれた『はいぱぁナイト』を毎週聴くようになった川島さん。そこで初めて、日髙さんが『タッチ』の浅倉南役だということや、声優という職業を知りました。


(1986年の新宿ルイードでのLIVE写真)

「学校の人で、他に聞いてる人いましたか?」という日髙さんの質問に、川島さんは、「いました!いました!」と即答。さらに、リスナー同士の思い出話も・・・。日髙さんがラジオの冒頭で必ず言っていた挨拶「うりほぅ」という言葉を、学校のトイレの壁で発見した川島さん。しばらくそっとしておくと、後日、別の人が“日髙さんのラジオだ!”と書き加えていました。川島さんの母校の男子トイレの壁は、“はいぱぁナイトリスナー”の交換日記の場となっていたそうです。笑
若者を中心に絶大な人気を誇っていた『はいぱぁナイト』。日髙さんも当時のことを、「私もハジケきってやっていた。実家が東京で、京都府が放送対象地域のラジオだったから、“あんなこと言ったらダメ!”と親から注意されることも無く、野放し状態だった。笑」と振り返ると、「リスナー代表として言わせてもらいますけど・・・めちゃくちゃ伝わってました。笑 かなりの暴走と言うか・・・笑」と、川島さんも日髙さんのハジケっぷりには驚いていたようです!

 

 

日髙さんは今年1月に、デビュー40周年記念書籍『天職は、声優。』を発売されました。川島さんも、“はいぱぁナイトリスナー”を代表してアンケートに参加。川島さんが芸能界に入り、自ら2ショット写真をお願いしたのは日髙さんが初めてだったそうで、今でもスマホに大切に保管していると嬉しそうに話します。日髙さんに会うと、感覚が中学時代に戻ってしまうようです。日髙さんは、「先生が教え子に会う感覚ってこういうことかしら。トイレに落書きをしてた同級生に自慢してあげて!」とリスナードリームを叶えた川島さんと大笑いしてました。(お二人とも声を揃えて言っていましたが、トイレへの落書きはしたらダメですよ!)

 

 


(本日のドライブ終了後にも、川島さんから2ショットのお願いをしていました!)

〜声優になるまで〜

とにかくお芝居が大好きな子供だった日髙さん。10歳の頃に劇団に入り、舞台やテレビドラマで活躍する女優さんを夢見ていました。同じ劇団の児童部には、大場久美子さんや三原じゅん子さん、青年部には松平健さんや稲川淳二さんが在籍していたそうです。
その後、アイドル活動を経て、声優デビュー。声優業への挑戦はラジオがきっかけでした。当時、歌手やレポーターなどを中心に活動していましたが、俳優業への夢が捨てきれず・・・“決められたセリフを喋る役者の道に戻りたい!”と悩んでいた時期でもありました。そんな時、担当していたラジオ番組に、「日髙さんは声に特徴があるから声優に向いてるんじゃないですか?」というお便りが届きます。声優という職業は当時はまだメジャーな存在では無く、“セリフを喋る人=俳優”だと思い込んでいた日髙さんは、この時初めて、声優という選択肢に気付きます。このお便りをきっかけに、声優の仕事をしてみたいと思った日髙さんは、マネージャーさんと共に精力的に動き、音響監督や会社を調べ、デモテープとプロフィールを送ります。
こうして1984年、『超時空騎団サザンクロス』というアニメのムジカ・ノヴァ役で声優デビューを果たし、翌年、ご自身の代表作となる『タッチ』の浅倉南役に大抜擢されることになるのです!

 

 


(子役時代のお写真)

〜浅倉南〜

声優2年目で、『タッチ』の浅倉南という大役に抜擢された日髙さん。経緯を伺うと、ある日のアフレコ帰り、見ず知らずのスタジオ関係者に「今度、タッチのオーディションを受けてもらうから。」と、直接声を掛けられ、その流れでオーディションに参加することになったそうです。
さらに、デビュー40周年記念書籍『天職は、声優。』で、当時のマネージャーさんへのインタビューページを見て、日髙さんが初めて知った事実も!それは、マネージャーさんが一度、制作会社にオーディションを受けさせて欲しいと飛び込み営業を行っていたということ。その時は、デビュー2年目の新人をヒロインで使う予定はない、と相手にしてもらえなかったそうです。しかし後日、日髙さんから「“タッチ”のオーディションの話がある」と言われて、マネージャーさんは大変驚いたそうです!こうしてオーディションに参加し、見事合格した日髙さん。このオーディションに立ち会っていた方と、後に再会した時、当時の印象を伺うと、「第一印象は、自然に喋る人。」と言われたそうです。日常の会話とセリフにあまり変化がない印象で、声優としてはまだあまり上手ではないが、“あだち充”先生の描く、セリフの少ない作品には、技術が身についているベテラン声優よりも、自然なセリフを出せる新人声優の方が向いている、ということで日髙さんが抜擢されました。
とはいえ、まだ声優歴2年目の日髙さん。それまでは、現場に行くと先輩方から、「歌手とかタレントをやっているのり子ちゃんだ〜。声優も上手いね〜」と、ゲスト的な立ち位置で温かく迎え入れてもらっていましたが、『タッチ』ではヒロイン役。最初のアフレコで早くも洗礼を受けます。他の声優さん達の収録が順調に進むなか、日髙さんが喋るとカットがかかってしまいます。スタッフの方を振り向くと、皆が頭を付け合わせて相談しています。何がダメなのか分からないが、自分が悪いと言うことだけは分かる状況。その後、何回録り直してもOKは出ず・・・結局、1人居残りで収録を続けたそうです。
そんな悔しい日々が続くなか、救いだったのは主人公の上杉達也役を演じられた“三ツ矢雄二”さんの存在。失敗を笑いに変えてアドバイスしてくれました。例えば、“Tシャツを脱ぐシーン”(腕をクロスさせて服を脱ぎ、頭がスポッと出てくる)の声をアドリブで頼まれた日髙さんは、「ン゛ン〜〜〜〜〜〜〜ア゛ッ!」と演じます。すると、三ツ矢さんから「あんた、そのTシャツは鉄で出来てんの?普段もそんな風に着替えていたら毎日大変ね!」と指摘されます。笑 これには周りの共演者もお腹を抱えて笑い出しました。場合によっては皮肉にようにも聞こえますが、三ツ矢さんの人柄だからこそ出来るこのアドバイス。日髙さんの演技を指摘しつつも、現場が暗くならないよう笑いに変えてくれました。
こういうやり取りが何度も続くことで“失敗することと、笑われること”に慣れてきた日髙さん。笑 いきなり主役クラスに抜擢され苦労もありましたが、先輩の優しさと、ご自身の成長を感じた忘れられない現場になりました。

 

 


(浅倉南の始球式!?)

〜大変だったキャラクター〜

これまで、『らんま1/2』・天道あかね、『犬夜叉』・桔梗、『名探偵コナン』・世良真純、 『るろうに剣心』・瀬田宗次郎など、数多くの人気キャラクターを演じてきた日髙さん。演じるのが大変だったキャラクターについてお聞きしました。
喉への負担としては、『炎の闘玉児 ドッジ弾平』の“一撃弾平”。こちらは、“こしたてつひろ”さんによるスーパードッジボールを題材にした作品で、主人公の一撃弾平は、「うりゃぁぁあ〜」「炎のシュートを受けてみろぉ〜」など、常に絶叫をしている熱いキャラ。普通のセリフだけでも喉への負担は大きかったそうです。
演技として大変だったのは、『ワンピース』の“ベルメール”。ベルメールは、主人公・麦わらのルフィの仲間であるナミを母親代わりとなって育てていた人物。村を占領しようとやってきた敵からナミを守ろうとして銃殺されてしまうのですが、この最期のシーンは、ワンピースの長いストーリーの中でも名シーンとして人気があり、そのため、総集編や劇場版用に何回かリメイクされています。リメイクされても最初に収録した声を使い回すのかと思いきや、リメイクされるごとに監督が変わり、監督が変わるとカット割りやセリフの尺が異なるため、毎回、録り直し!過去に5回ほど同じシーンを演じられ、その度に以前と変わらない声や感情を維持するのが大変だそうです。
最後に挙げてくれたのは、庵野秀明監督が初めて監督を務めたSFロボットアニメ『トップをねらえ!』。女性パイロットが、“宇宙怪獣”と通称される正体不明の生物と闘う物語。この作品で、主人公のタカヤ・ノリコ役を演じた日髙さんは、収録に入る前、庵野監督から、“魂の叫び”を聞かせて欲しいと懇願されます。さらに監督自ら、その叫びのお手本を披露してくれましたが、叫んだ後にソファーに倒れ込むほどの勢いでした。声優として、監督には負けたく無かった日髙さんは、この作品で“声優人生終わってもいい!”という覚悟で、全力で叫びました。こうして完成した『トップをねらえ!』は当時の若者に多大な影響を与えます。声優人生をかけてまでやりきった日髙さん。多くの人に愛される作品に携わることができ、声優冥利に尽きるかと思いましたが・・・その影響は思わぬ形で還ってくることに・・・。それは、『トップをねらえ!』に影響を受けて、アニメ監督になった人たちが多くいること。その監督たちと仕事をする機会があると、必ずセリフで“魂の叫び”を求められてしまいます。笑 さらには、その監督に影響を受けた監督も現れ始め、10年ごとに“タカヤ・ノリコ ループ”が起こり始めているのだとか。笑 “私はいつまで叫び続けるのか?”と不安になることもあるそうですが、クオリティを下げたくないという思いと、好きでいてくれる人の期待を裏切りたくない気持ちが強く、日髙さんは叫び続けるのです・・・!

 

 


過去のNon Fesのお写真

〜『Non Fes Ⅲ』〜

5月31日に還暦を迎えられる日髙さんは、自らがオーガナイズするミュージックライブフェス “Non Fes”の第3弾・『Non Fes Ⅲ』を、誕生日直前の5月21日(土)に、『LINE CUBE SHIBUYA』で開催されます!出演者は、きただにひろし・奥井雅美・平野綾・中島愛・GARNiDELiA・井上喜久子・真田アサミ・熊田茜音 …and moreと、日髙さんにゆかりのある声優&アニソンシンガーが大集結します。また、当日は各アーティストのオリジナル曲に加え、日髙さんとのコラボ曲も披露される予定です。その日限りの特別な空間を味わいたい方は、是非チェックしてみてくださいね! 詳しくは、日髙のり子さんの公式HPをご確認ください。
https://norikohidaka.com

 

 

〜日髙のり子さんのエウレカ!〜

日髙さんのエウレカは、“真面目に考えることも大切だが、自分が楽しんだ方が仕事もプライベートも上手くいく”ということ。自分自身が“ワクワクする”ことで、楽しいエネルギーが加算され、キラキラした人生を送れると、最近、自信を持って言えるようになったそうです。しっかりしなければならないという気持ちを少し解いて、多少失敗したとしても、合格点は取れる。純粋に楽しむことは、大人になるにつれ難しいもの。だからこそ日髙さんは、子供の頃、劇団にいた時に感じた、“セリフを喋るだけで嬉しかった気持ち”に戻りたいと思っています。
また、緊張やミスへの向き合い方も上手になってきました。以前は、生放送でナレーションを入れる時など、第一声で喉が絡むこともあったそうですが、最近は、本番前に必ず“私は失敗しちゃうので”と心で唱えることで、気持ちに余裕を持つことに成功しました。すかさず「逆・米倉涼子!」と、川島さんはツッコミましたが、前向きに楽しく物事に向き合う日髙さんの人柄に惹かれていました。最後に、中学時代に聞いていた憧れのラジオパーソナリティとドライブが出来たことに「人生って凄いですね。」と、この状況を噛み締める川島さん。そして、教え子を見るかのように温かく見守っている日髙さんは、近年の川島さんの活躍を褒めてくださいました。「先生のお陰です。」と川島さん。本日は、同窓会のような締めくくりとなりました!

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PLAYLIST
  • 「タッチ」
    岩崎良美
  • 「RADIO」
    JUDY AND MARY
  • 「ウィーアー!」
    AAA
  • 「トップをねらえ! ~FLY HIGH~」
    日高のり子・佐久間 レイ