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25.04.15

物価高やトランプ関税をうけて消費税減税を求める声。消費減税のメリットとデメリット

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「物価高やトランプ関税をうけて消費税減税を求める声。消費減税のメリットとデメリット」

吉田:物価高やアメリカのトランプ関税引き上げを受け、自民党と公明党が政府に消費税の減税を求めることを検討していると読売新聞が報じました。神庭さん、まず消費減税を求める声が高まっている背景を教えて下さい。


神庭さん:物価高と選挙対策です。もともと、多くの野党は消費減税を主張していました。去年の衆院選で、国民民主は消費税5%、維新は8%への引き下げを主張していました。れいわと共産は0%、消費税の廃止を掲げていました。立憲は野田佳彦代表や枝野幸男最高顧問をはじめ消費減税には慎重な立場の議員が多いですが、最近は党内から期間限定で5%への減税や、食料品0%の引き下げを求める声があがり始めています。自民・公明に関して言うと、これまで消費税減税の「し」の字もありませんでしたが、このまま夏の参院選に突入したらボロ負けする可能性があります。国民の人気取りと選挙での「争点つぶし」もかねて消費減税論が出てきているのかなと思います。


ユージ:実際のところ消費減税の可能性はありそうですか?


神庭さん:大いにあるというか、与野党から消費減税を求める声が出てますから、かつてなく可能性が高まっているのは確かだと思います。ただ、自民党も一枚岩ではなくて特に石破氏の側近である森山幹事長は、消費税の引き下げに慎重だと言われています。朝日新聞によれば、消費減税に踏み込むと「自民党内が割れる」と石破氏を説得して、消費税ではなくて一時的な給付金の方に石破氏を誘導したそうです。自民党の鈴木総務会長も「一度下げると元に戻すことも相当な政治的なエネルギーがないとできない」と主張していますし、小野寺五典政調会長もやっぱり慎重な姿勢です。


吉田:改めてですが、消費税が今の10%になった経緯を教えて下さい。


神庭さん:1989年に3%でスタートして、1997年に5%、2014年に8%、2019年に10%と段階的に引き上げられてきました。少子高齢化で社会保障費が膨張しているため、2014年からの引き上げ分に関しては、すべて社会保障関係に使うと国が約束しています。いまは原則10%で、お酒や外食以外の食料品と、なぜか新聞に関しては生活必需品として軽減税率8%が適用されています。


ユージ:僕ら消費者としては、消費税の引き下げについて基本的にウェルカムですが、メリットはありますか?


神庭さん:1つ目はインフレ対策として即効性が高いということがあげられます。法改正が必要なので、給付金ほどスピーディーにはできないですが、モノの値段が即下がるので、国民も減税の効果を分かりやすく実感できますよね。そして、2つ目は「インフレ税」の緩和です。消費税はモノの値段に連動するので、インフレ下では自動的に上がっていきます。実質的な増税みたいなものですよね。そこで政府が取りすぎた税金を国民に還元するという意味合いでいいかなと思います。消費税は逆進性があり、低所得者ほど負担感が強いので、減税すればそれを緩和できるということです。メリットの3つ目は、消費を喚起して、景気を下支えする効果です。野村総研の木内登英さんの試算によれば、消費税率2%の引き下げで実質GDPが0.4%上昇し、消費税を完全に廃止すると1.99%の押し上げ効果があるということです。


吉田:一方で消費税減税のデメリットも考えられると思いますが、こちらはどうでしょうか?


神庭さん:デメリット1つ目は、巨大な財源が失われることです。日本の税収72兆円のうち、消費税が24兆円で3分の1を占めています。防衛費が6.6兆円、教育・科学予算が5.4兆円なので、どれほど大きな額か分かります。仮に消費税5%にすれば12兆円、0%なら24兆円、1年限りではなく毎年、政府の歳入に大きな穴があくことになります。2つ目のデメリットは、かえってインフレが悪化する恐れです。日本の財政への懸念が高まり、イギリスのトラス・ショックのようなことが起きた場合、国債や円が売り込まれ、金利の上昇や円安を招くリスクがあります。加えて、消費が喚起されて需要が高まることで、インフレを誘発する可能性もあります。インフレ対策で減税したはずなのに、結局またインフレになるという悪循環もあり得るわけです。


ユージ:求める声が高まっている消費減税について、神庭さんはどう考えますか?


神庭さん:給付金をばら撒くよりは、だいぶマシかなと思います。例えば、一律8%に下げて軽減税率をなくしてシンプルします。ついでに評判の悪いインボイスも廃止しちゃうくらいなら、アリかなと思います。ただ、私は消費減税よりも社会保険料の削減や所得減税の方がより優先度が高いと個人的に考えています。というのも、いま一番大切なのは働いてお金を稼いでいる現役世代の負担を軽減することです。現役世代と年金世代の世代間格差を少しでも是正しないといけないと思いますが、消費税は現役世代だけでなくて高齢者も負担していて、取りっぱぐれも少ないです。ある意味、どの世代にも公平な税で、これを減らしたり無くしたりした結果、「社会保障費が足りなくなったので、現役世代の社会保険料を上げますね」みたいな話になると本末転倒だと思います。「消費税下げます!所得税も下げます!社会保険料も下げます!」みたいな、そんな夢みたいな話はあり得ないと思っていて、きちんと優先順位をつけて欲しいです。選挙前にいい話ばかりするのでなく、社会保障の給付を削るとか、医療費を全世代3割負担にするとか、「痛み」を伴う改革についても、逃げずに説明するのが政治の責任ではないかなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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