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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.04.10

相互関税に関する情報錯綜が株価に大影響

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「相互関税に関する情報錯綜が株価に大影響」

吉田:アメリカ市場は7日の朝、トランプ大統領が大規模な関税措置、90日間一時停止することを検討しているという報道を受けて、大きく上がり下がりしました。9日にトランプ大統領は、相互関税の一部について、90日間の一時停止を許可すると発表しましたが、7日の段階では、まだ確証のない情報でした。そこで憶測の報道が経済に大きな影響を与えてしまった状況について塚越さんと考えていきます。


ユージ:塚越さん、まずアメリカ市場の大きな変動の裏にどんなことが起きていたのですか?


塚越さん:一言で言えば、大混乱です。トランプ関税の影響で、一気に売り注文が集中してダウ平均株価が先週末と比べて一時1,700ドル以上下がりました。そんな中、Xである投稿が注目されます。それが、トランプ氏が中国を除いて関税措置90日間の停止を検討しているというものです。今日、それが実際に起こりましたが、この段階では憶測だったわけです。しかも、それがホワイトハウスで経済政策を助言している国家経済会議のハセット委員長が発言したとXで誰かが投稿しました。信じたくなる内容だったので、すぐに金融系のインフルエンサーなどが、この内容を拡散しました。問題なのは、アメリカの経済チャンネル「CNBC」がこの拡散された情報を「たった数分後」に未確定の情報と発言しましたが、生放送で報道しました。テロップまでついたそうです。それを受けて株価は先週末より一時的に900ドルほど値上がりしたんですね。ただ、よくよく見るとハセット委員長は、この発言をしていません。株価が値上がりした20分後に、今度はホワイトハウスのXのアカウントが「フェイクニュースだ」と公式に否定。CNBCや、それを引用して報じていたロイター通信も訂正し、株価は再び下落したということです。


ユージ:裏付けのない情報をインフルエンサーが拡散して、それをメディアが報道してしまったということですね。


塚越さん:そうです。やはり影響力のある大きなメディアが、偽の情報を鵜呑みにしたということが非常に大きい影響を受けています。株価ですから、お金にも関わるので色々な影響を受けています。何で間違えちゃったのかというと、元々90日間の停止を呼びかけている投資家などがいました。その時に、ハセット委員長が株の取引が始まる前にテレビに出演した際に「関税の発動を90日止めますか?」とインタビューされました。ハセット委員長は、「それは大統領が決めること」と曖昧に濁しましたが、なぜか「停止する」と解釈されて報道されたということです。もちろん、今になると本当だったということです。その当時は、まだ何とも言えない状況でした。


吉田:根拠のない情報の影響を受けて株価が一喜一憂する状況、塚越さんはどうご覧になっていますか?


塚越さん:普通なら、なかなかありえないことかなと思います。というのも海外メディアなどの分析によると、最初に「停止する」という情報を出したXのアカウントのフォロワーは800人くらいで少ないです。それを今度はフォロワー数十万人の金融系インフルエンサーが拡散しました。これ、全然確かな筋の情報じゃないので、普通は裏撮りというのを必ずメディアはします。なので、CNBCも「未確定なので情報源を突き止めようとしています」、と発言しててもテロップが出ていますから、そうなると株価が動きますよね。悪いということを前提にして、その背景を考えるとまずは現場が混乱しているということです。トランプ氏はサプライズを沢山する人なので、そういうことがあるんじゃないかという心理が未確定な情報でも言いたくなったのではないかな、と社会心理学的にも興味深い点かなと思います。もう1つは、「速報合戦」です。他社よりも早く情報があったら伝えたいというところが影響してしまったのではないかと思います。他にも、昨今の金融取引のシステムだと、SNSのトレンドやニュースを分析して速攻でそういう情報が流れていると投資家に教えるシステムが沢山あります。そういうものがあると、ネット上の情報で投資家がすぐに判断してしまいます。なので、Xを見ていなくても、これが株価に影響したんじゃないかということもあったりしてメディアの責任も大きいと思います。


ユージ:そんなアメリカの金融市場の変動が日本にも影響するわけですよね。


塚越さん:そうですね。こういったことで日本も株が乱高下していますし、今回はトランプ氏がコロナやリーマンショックに匹敵するとも言われていますが、特殊なのはトランプ氏が1人で意図的にやっているということです。90日間一時停止ということですが、ディールをどうしなければいけないのか、日本はどうやって向かっていかないといけないのかが議論になっています。これから石破総理がトランプ氏とやりとりしないといけないですが、かなりプレッシャーをかけてきています。やっぱり、トランプ氏は安倍元首相以外だと麻生氏と茂木氏を覚えてて、評価が高いです。石破総理は、その2人と距離があるのですが、ここまでくるとそういうことではありません。国難と言っているわけですから、みなさんが持っている知識を総動員してやるというのが必要ではないかなと思います。そこは仲違いしないで頑張ってやってくれと思いますね。



そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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