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25.04.07

転職ころがしにメス!「就職祝い金」禁止の影響は?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーター引き続き、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「転職ころがしにメス!「就職祝い金」禁止の影響は?」

吉田:人材サービス業者が転職者に支払う「就職祝い金」が今月から全面的に禁止されました。背景には、人手不足の医療や看護、ITなどの業界を中心に、人材サービス側が短期間での転職を促す「転職ころがし」があったと言われています。そこで今朝は、神庭さんに祝い金廃止の影響や、転職ころがしの実態について解説してもらいます。


神庭さん:そもそも就職祝い金とは、転職エージェントや求人サイトが自社サービスを使って採用が決まった人に「おめでとう!」ということで、お金や商品券を渡すのが就職祝い金というものでした。業者側は採用された場合に年収の何割かの紹介手数料を会社側から貰うので、実際には転職先の企業が間接的にその費用を負担しているようなものです。転職エージェント、人材紹介会社がお祝い金を払うことは2021年から既に禁止されていたのですが、この4月から求人サイトでも禁止になりました。


ユージ:今回の禁止の狙いはどういうところですか?


神庭さん:転職ころがしの横行に歯止めをかけることが狙いです。転職ころがしというのは、せっかく求職者の採用が決まったのに、頃合いを見て「もっといい仕事がありますよ」と声をかけて、また転職させるようなやり口です。字面的には「転」職の時点で1回ころがっていますが、さらに2度、3度ところがしていきます。転職する側の労働者からしたらお得に見えるかもしれないですが、採用する企業側からするとたまったものではないです。「採用コスト、教育コストを投じて、ようやく業務に貢献してくれるかな?」という頃に業者が祝い金で釣って別の企業への転職を促す。人材サービス側は、転職すればするだけ利益が入るので、転職者が「この企業で長く頑張ります!骨を埋めます!」となるよりも、さっさとまた転職してくれた方が金になるということです。


吉田:「転職ころがし」ってすごい言葉ですが、結構広がってるんですか?


神庭さん:結構広がっているようで、転職ころがしだけに限らないのですが、厚労省が医療・介護・保育の有料職業紹介事業者を調査したところ、1152事業所のうち、6割にあたる716事業所で職業安定法違反が確認されました。具体的には、面接時に数千円の電子ギフトカードを支給。知人を紹介した人、紹介されて求職登録した人のそれぞれに数万円分の旅行券や電子ギフトカードを支給。紹介により就職し、一定期間後にアンケート回答した場合に数万円程度を支給。求職登録し、就職した人に無料宿泊券を支給。といった事例が報告されています。


ユージ:無料宿泊券はちょっと羨ましいと思いますね。


神庭さん:本当ですよね。これは数万円レベルではなく、高額の祝い金が支払われるケースもあるようです。日本経済新聞は「IT技術者の流出に悩む大手小売業の担当者の声」を紹介しています。レベルの高いシステムエンジニアの年収が1,000万円~1,500万円で、仲介業者は年俸の25~50%を受け取る。祝い金は手数料の30%ほどになるという話です。仮に転職者の年収が1,500万円で紹介手数料が50%。祝い金がその30%だとすると、単純計算で225万円にもなります。少なく見積もって、年収1,000万円で紹介手数料25%だとしても75万円になります。結構な大金なので「だったら転職しちゃおうかな…」と思う人が出てきてもおかしくはないと思います。


吉田:「就職祝い金」を禁止することで、転職ころがしに歯止めはかかるのでしょうか?


神庭さん:そうですね。今、申し上げたような高額なケースでは一定の歯止めにはなるかもしれないです。ただ、数万円の祝い金とか数千円のギフトカードとなると、正直「それ目当てに転職を決める人がどれだけいるんだ?」とは思います。医療・介護・保育などの職場は重労働で賃金的に報われないケースもままあります。エッセンシャル・ワーカーなのに待遇がエッセンシャルじゃないというのが、本質的な問題だと思います。もし短期離職が相次いでいるとしたら、それは祝い金のせいではなく、給与やワーク・ライフ・バランスなど職場自体の問題である可能性が高いです。遠回りなようですが、まず働きやすい職場をつくっていくことが、一番人材の定着に繋がっていくと思います。


ユージ:改めて、注意点はどういうところですか?


神庭さん:就職祝い金は禁止になったので、もしまだそんなことをうたっている人材業者があれば違法です。引っかからないように気をつけてほしいです。会社が合わなければ辞めるのは自由ですし、転職しながら給料を上げていくやり方もありますが、あまりに短期間で転職を繰り返せば履歴書に傷がつくし、企業からもジョブホッパーと見られます。そのリスクはしっかり認識した方がいいです。また、禁止されているのはあくまでも転職エージェントや求人サイトが払う祝い金です。企業が自分の会社に入社した社員に払う祝い金は何も問題ないです。IT系とか自動車会社の期間従業員とか、祝い金を払うケースは多いです。それから、失業保険の受給者が早めに就職が決まった際にもらえる再就職手当も「祝い金」と呼ばれますが、これも今回の禁止とは無関係でまったく問題ないものなので、誤解のないようにしてほしいです。


ユージ:そうですね。祝い金って同じ括りになると、OKなものとNGなものがちゃんとあるっていうのは、注意しないといけないですね。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。



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