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25.04.01

きょうから段階的に施行される、改正「育児・介護休業法」のポイント

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【きょうから段階的に施行される、改正「育児・介護休業法」のポイント】

吉田:改正された育児・介護休業法が、4月1日から段階的に施行されます。神庭さん、主な変更点を教えてください。


神庭さん:1番大きいのは「子どもの看護休暇」がより取りやすくなることです。まず、対象となる子どもは、以前は小学校にあがる前まででしたが、小学校3年生を終えるまでに拡大されます。また、これまで継続雇用期間が6カ月未満の従業員は、看護休暇の対象外でも問題ないとされてきましたが、今後は継続6カ月未満でも週3日以上働いていたら、看護休暇を取得できるように会社が制度を整えないといけなくなりました。取得する際の理由も、従来の「病気・けが」、「予防接種・健康診断」に加えて「感染症に伴う学級閉鎖」、「入園式、卒園式、入学式」もOKになりました。それに合わせて、休暇の名称も「子の看護休暇」から「子の看護休暇等」という形で“等”がつきましたね。


ユージ:これはいいですね。認められるのが遅かったんじゃないかと思うくらいです。他には、どうでしょう。どんなところが変わりますか?


神庭さん:残業の免除を申請できる年齢、労働者の対象が広がりました。子どもの年齢が従来の「3歳未満」から「小学校就学前」までOKになります。また、3歳未満の子を育てる労働者がテレワークを選択できるように対策することが、事業主の努力義務になりました。


吉田:さらに、新しく「給付金」ができると聞きました。


神庭さん:雇用保険法が改正されて「出生後休業支援給付金」が創設されました。子どもが生まれた後、両親ともに14日以上の育休を取得した場合に、最大28日間支給されます。気になる金額ですが、休業開始前の賃金の13%。これまでの育児休業給付金は、大体手取りの8割くらいだったので、収入ダウンを嫌って育休取得をためらう人もいました。そこに13%の新しい給付金が加わることで、手取りにすると10割、100%の支給が実現します。最大28日間とはいえ、子育て世帯にはありがたいですよね。ひとり親世帯や、配偶者が自営業やフリーランス、専業主婦・主夫の場合も対象になるので、ぜひチェックしてみてください。


ユージ:今回のような形に改正された背景としては、何があったのでしょうか?


神庭さん:やはり、共働き家庭が増えていることが大きいと思います。1985年の時点では、共働き世帯が718万、専業主婦世帯が936万でした。2023年の共働き世帯は1,206万、一方、専業主婦世帯は404万なので、およそ3倍まで増加しています。父親も母親も一緒になって育児をしていかないと、とてもじゃないけど家庭が回らないという状況があります。国の調査によると、2015~2019年のデータで、7割弱の女性が第1子を出産した後も働き続けていることが分かっています。1980年代後半は4割弱でしたから、だいぶ改善されてきてはいます。それでも、裏を返して言うと3割の人は今でも出産後に仕事を辞めているわけですから、まだまだ改善の余地があると思います。もちろん辞めたくて辞めることは全然否定されることではないのですが、「本当は働き続けたいのに、辞めざるを得ない」というパターンは、できる限り減らしていかないといけません。そこで、共働き家庭を支援する様々な施策を打ち出しているわけです。


吉田:男性の参加も重要だと思いますが、男性の育休の取得率は上がっているのでしょうか?


神庭さん:これは、上がっています。2023年度の男性の育休取得率は30.1%。前の年が17.1%でしたから、一気に1.7倍以上に上昇しています。一方で、課題もあります。積水ハウスの調査では、育休を取得した男性の妻の実に42%が「取るだけ育休だった」と回答しています。


ユージ:これはね、よく聞きます。


神庭さん:特に1週間未満の短期の場合、50.5%が「取るだけ育休」と評価しています。夫が取るだけ育休の場合、当然ながら妻の満足度は下がる傾向にありました。ソファにゴロゴロしているだけで戦力にならなかったり、育児と関係なく資格の勉強をしていたりというケースもあると聞きます。あくまで育児「休業」であって、業務を休んで育児に励む期間なので、育児「休暇」のように誤解してはいけないなと思いますね。


ユージ:こうなると企業側も対応が重要になってくると思いますが、企業側の課題は何でしょうか?


神庭さん:法改正に合わせて、企業側は育休まわりの就業規則を見直さないといけません。これまでは育休取得率の公表義務は従業員1,000人超の企業だけが対象でしたが、今後は300人超の企業も対象になります。だからと言って、「率」だけを追い求めると数日か1週間だけ育休をとらせて見栄えを良くしようというずるい発想になり、取るだけ育休が増えますからそれも良くありません。逆に法律が求める以上の手厚いサポートを用意している企業もあります。日経新聞によれば、大成建設は子どもが小学校を卒業するまで年15日の看護休暇を取れるようにする。SUBARUも、時短勤務の対象を子どもの年齢が18歳になるまで引き上げるということです。すごくいいなと思います。育休中の社員の仕事をフォローする職場の人たちに、最大10万円の応援手当を支給する三井住友海上のような例もあります。そして、これも重要ですが、会社には子どものいる社員、いない社員、子育てを終えた社員ら様々な立場の人がいますから社員の間で分断が生じないように、育休で誰かが休んでいる際の人員の補充や、応援手当を出す。それが無理なら目標を引き下げることなども検討していただきたいなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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