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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

24.10.21

なぜ、投票率は上がらないのか?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「なぜ、投票率は上がらないのか?」

吉田:第50回衆議院選挙は、いよいよ今週末、27日に投開票を迎えます。その選挙の課題の1つが、低迷する投票率です。そこで今朝は、なぜ投票率が上がらないのか?神庭さんと一緒に考えていきたいと思います。


神庭さん:まずは実際、投票率は下がっているのか?ということですが、衆院選の投票率は、戦後長い間70%前後で推移していました。ですが、1996年に小選挙区比例代表並立制になってガクッと下がり、60%を割ってしまいました。これは、仕組みが変わって大政党が得票しやすくなり、死票・死に票が増えて、有権者の投票意欲が削がれてしまったことが原因かなと思います。自民党から民主党に政権交代した2009年の衆院選では、69.28%と例外的に高くなりましたが、その後は前回まで4回連続で50%台と低迷しています。


ユージ:この低迷している理由については、神庭さんはどう考えていますか?


神庭さん:いま話したような選挙制度の問題もありますが、一番は「面倒くさい」からじゃないかなと思います。2003年に期日前投票をできるようにするなど、国も対策を講じてはいるのですが、何でもスマホで完結するご時世に、わざわざ投票所に行って1票を投じるというのはやっぱり面倒だなということだと思います。僕は例え話で「選挙は民主主義のログインボーナス」「投票券はガチャチケットのようなもの」だと言っているのですが、たとえ話ではなくて本当にそのレベルでネット投票ができるようになると、投票率はグッと上がると思います。ただ、ネット投票が技術的に実現できるとしても厳格な本人確認が必要になります。「秘密投票」の原則をどういうふうに両立するか?と問題が出てきます。加えて、立会人が不在の状況で誰かにスマホを持っている状態でスマホを集めて投票を強制されたりすることがないか?など、そういった課題があるので、すぐに導入するのは難しいかもしれません。


吉田:他にはどんな課題がありますか?


神庭さん:「どうせ自分の1票じゃ何も変わらないでしょ」という無力感も大きい気がします。前回2021年の衆院選では、10代が43%、20代が37%、30代が47%と特に若年層の投票率の低さが目立ちました。これに対して、60代が71%、70代以上は62%と高齢世代は投票率が高いです。いわゆるシルバー民主主義の問題。高齢者の支持が大きいから政策が高齢世代寄りになり、自分たちの意見は聞き入れてもらえないと絶望した若年層はますます投票所から足が遠のいてしまうということです。


ユージ:そうなると、悪循環になってしまいますね。


神庭さん:おっしゃる通りです。京都産業大学の中井歩教授は投票に行かない若者を「行けたら行くわ」と言って飲み会に来ない人に例えています。《若い世代は、人口数が少ない上に投票率も低いのですから、「行けたら行く」と言ってはいても「どうせ来ない」人達だと、政治家・政党から見られていることは、想像に難くありません》若年層の投票率が1%下がるといくら損をする、という試算もあります。1%低下で13万5,000円の損失だとか、7万8,000円だ、いや5万5,000円だと、色々時期によって様々な数字が乱立していて、どれを信じたらいいのか分かりません。少なくとも投票率が下がって、若者が得をすることは何1つありません。面倒くさい、ダルい、どうせ変わらないと言っている間に、財布からどんどんお金を盗まれているようなものです。「行けたら行くわ」と言っていないで、さっさと選挙に行った方がいいんじゃないかなと思います。


吉田:学生さんだと、住民票を移していない方もいらっしゃるかもしれませんね。


神庭さん:これも結構な問題です。進学や就職で都市部に出てきたんだけど、住民票を移していないパターンです。18〜20歳を対象にした2016年の調査では、投票に行かなかった理由として、「今住んでいる市区町村で投票することができなかったから」が最も多く、21.7%を占めました。せっかく18歳選挙権を解禁したのにもったいないです。そもそも、住民票を移すのは法律上の義務で、理由なく届出をしないと5万円の過料に処されてしまいます。ですが、実際には面倒だとか、成人式に呼ばれなくなるんじゃないかなどの理由で移していない人が結構います。


ユージ:学生さんは、結構多そうですね。


神庭さん:住民票を移しても成人式に出られる自治体も多いので、地元の役所に問い合わせみて欲しいです。住民票を移しても、3カ月経たないと今いる場所で投票できない場合は地元の自治体に「不在者投票」の投票用紙を請求すれば、わざわざ実家に帰省しなくても投票することができます。


ユージ:最後になりますが低迷する投票率について、神庭さんはどう思いますか?


神庭さん:難しいよと思う方はいますが、さきほど話したボートマッチのサービスをいくつか試してみていただけたらと思います。もう1つは「清き一票を」というのですが、清くなくてもいいのかなと僕は思います。私利私欲でいいですよ。あとは、あいつだけは絶対落としてやりたいなど、軽い気持ちでうっかり投票してもいいと思います。


ユージ:それでも立派な思いの1つですから。


神庭さん:投票って変に神聖化しないで、お風呂入ってトイレ行って歯を磨くのも同じレベルで考えて投票に行ってもいいんじゃないかなと思いました。

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