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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

24.10.03

自治体が管理する橋の老朽化対策と国の支援

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「自治体が管理する橋の老朽化対策と国の支援」

吉田:2012年に起きた笹子トンネルでの事故を受けて、国は全国の橋やトンネルの管理者に5年に1度の点検を義務づけています。2018年度までに行われた初回の点検に続き、23年度までに行われた2巡目の結果がまとまり、先月27日、都道府県別の進み具合を公表しました。


ユージ:塚越さん、全国の橋の老朽化対策、進み具合はどうでしょうか?


塚越さん:まず、話にあった山梨県の笹子トンネルでは、2012年に天井板が崩落して9名が亡くなるという大きな事故があり、そこから老朽化対策が一層重視されるようになりました。道路等の老朽化対策を自治体に促している国土交通省によりますと、まず2014年〜2018年度にかけて点検しまして、5年以内に修繕や撤去が必要とされた道路橋(要するに道路として使う橋)、合計6万482カ所ありました。その上で、点検の期限となる2023年度末までに作業に着手した割合は、全国平均で83%を超えました。逆に言えば、17%。1万353カ所は未着手ということですね。ちなみに、トップは佐賀県で100%。2023年度までに、修繕撤去が必要だった道路や橋664カ所、全てで作業が着手済みです。逆に最も低かったのは新潟県の57%、その他、秋田県60%、山口県65%になっています。


ユージ:なかなか難しいかもしれませんが、安全のことを考えると、老朽化対策は本来、佐賀県のように100%であるべきですよね。


吉田:対策がとられていない橋が17%、その原因は何でしょうか?


塚越さん:まず、国ではなく、市町村といった自治体が管理する橋で対策が遅れています。国や高速道路会社が管理している橋は、すべて対策に着手しており、8割以上は作業を終えています。一方、自治体が管理する橋で対策を終えているのでは、全体の66%にとどまっています。原因としては、国土交通省によると、やはり技術職員の不足や財政難が挙げられています。あとは、地域によっては海風や凍結防止剤の利用をすると塩害で劣化しやすく、対象となる橋が多くなってしまうのも影響があるとのことです。


ユージ:地方自治体のインフラ整備の人手不足や財政難の話、よく聞きますが、老朽化した橋の対策に国はどのような支援を行うのでしょうか?


塚越さん:まず特に危険性が高いとされる橋については、通行止めにするといった緊急的な対策を行うのですが、その上で財政面としては、国交省から地方公共団体向けの特別補助金を通じて、点検や修繕を支援します。財政的なお金の支援ということです。技術面としては、国交省の出先機関である「地方整備局」が道路管理者向けに、橋の技術講習会を開いたり、損傷発生時に国交省が技術的な助言をしたり、点検実施案の作成提供を行うとのことです。もう1つは、そもそも人手不足が問題になっているということがあるので、国交省が自治体に代わって修繕作業などを行う支援もあります。


吉田:そんな中で石破総理は、地方創生交付金の倍増を目指す方針の一方で、財政に関しては、デフレ脱却最優先の経済財政運営を掲げています。地方のインフラ整備と財政支援の両立はできるのでしょうか?


塚越さん:これが難しいです。きのう村上総務大臣が記者会見して、「地方こそ成長の主役」と話していて、石破総理も自治体のDXや行財政の効率化、地方創生や東京一極集中の是正といった課題に取り組むよう話しています。そうなると、財政支援、お金がかかるわけです。「また増税ですか?」という話になり、それはもう厳しいので、地方を元気することで経済が回るスキームを、限られた予算の中でどうにかしなければいけない。これは、かなりハードルの高い課題です。老朽化した橋は、完成してから50年以上経っているものがどんどん増えていきます。そうすると、もっとお金がかかります。修繕はとても大事ですが、公共事業では生産性を上げることは難しいです。それをする一方で、お金をどうやって地方で儲けるのか?というと、インバウンドをもっと誘致する。リモートワークやAIを使って、効率化したり、生産性をあげることが必要です。インバウンド消費が大事ということで、またお金がかかるということになって補助金になるとそれにもお金がかかります。そういうのを東京にいるプランナーのような会社に依頼すると結局はパッケージ化になります。街おこしなど同じ様な問題になります。これは、できないということになって地方の方が自分自身で限られたお金の中でインバウンド誘致、AIなど新しくできることを考えること。そういうことを含めて石破政権、舵取りが難しいと思いますが、このあたり考えないといけません。

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