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24.10.02

使用済み核燃料を『中間貯蔵施設』に初めて搬入。今後の課題は?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「使用済み核燃料を『中間貯蔵施設』に初めて搬入。今後の課題は?」

吉田:青森県むつ市に建設された、全国初の使用済み核燃料の「中間貯蔵施設」に今月26日、新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所から初めて、使用済み核燃料が運び込まれました。塚越さん、まずは「使用済み核燃料」とは何か、改めて教えてください。


塚越さん:はい。まず、エネルギーを発生させる原子炉で、核燃料を使用した後のものが「使用済み核燃料」です。こちらはウランやプルトニウムといった、核反応で生じた放射性物質を多く含んでいますので、核兵器への転用もできてしまうため、管理は徹底しなければなりません。そして、核反応を止めた後も燃料は熱を持っているので、原子炉に大量の水を溜めたプールをつくって数年単位の時間をかけて、冷却を続けなければなりません。


吉田:その「使用済み核燃料」が運び込まれた「中間貯蔵施設」。こちらは、どういった施設でしょうか?


塚越さん:中間貯蔵施設は、使用済み核燃料を再処理工場で処理するまでの、「一時的保管施設」です。大きさ幅62メートル、奥行き131メートル、高さ28メートルあって、巨大な倉庫、という感じですね。使用済み核燃料は「キャスク」という特殊な金属の容器に覆われているのですが、保管施設では電力などは使わず、自然の空気、空冷で使用済み核燃料を冷やします。この方法を「乾式貯蔵」というのですが、今回の青森県むつ市の中間貯蔵施設は、この方法を採用しています。資源エネルギー庁によると、この乾式貯蔵は電気も水も使わないので、比較的に維持管理がしやすい方法です。そのままだと出てきてしまう放射線は、キャスクと建物で遮って最長で50年間保管します。


ユージ:この「中間貯蔵施設」に、使用済み核燃料を運び込んだ理由についても教えてください。


塚越さん:一言で言うと、保管場所に限界があるからです。新潟県の刈羽原子力発電所での保管は、すでに全体の容量の8割に達していて、再稼働を目指している6号機、7号機に至っては9割を超えていて、だいたい4年間運転すると満タンになって運転ができなくなるという状況があります。柏崎の桜井市長は、この6号機、7号機の再稼働に同意する条件として、貯蔵率を概ね8割以下にすることを挙げているので、今回の運搬は再稼働に向けたものなのかなといえます。また今回は、4号機から運び出して、4号機の貯蔵率は68%から3%下がりました。ただ刈羽原子力発電所に限らず、全国的に原発内での貯蔵に限界がきています。電気事業連合会によれば、全国では6月末時点で、保管可能な容量のおよそ8割が埋まっているとのことです。なので、原発の敷地内に貯蔵施設をつくったり、あるいは今回のように、原発とは別の場所に建設を計画するところもあります。


ユージ:「使用済み核燃料」と「中間貯蔵施設」、今後どういう課題があるのでしょうか?


塚越さん:課題は、色々あります。そもそもの問題があって、使用済み核燃料からプルトニウム等を取り出して再び原発で使う「核燃料サイクル」という国の政策があるのですが、もともと進んでいません。そもそも、青森県六ヶ所村に使用済み核燃料をもう1回使えるようにする。再処理工場を建設しているのですが、1997年に完成予定でしたが、トラブルや不祥事で27回延期し、未だに完成していません。中間貯蔵施設はもともと、再処理をするために一時的に保管するところだったのに、再処理の見通しが立たないとなると、「中間貯蔵」ではなく、ずっと置いておくことになりかねません。なので、青森県でも最長50年保管といいながら、もっと長くなるのでは?と現地では反発もあります。


ユージ:「使用済み核燃料」と「中間貯蔵施設」について、塚越さんは、どうご覧になっていますか?


塚越さん:さきほど話した通り、そもそも再処理して使えるようにする「核燃料サイクル」が実現できていません。申し訳ありませんが、事実上の原発政策に色々課題があり破綻に近い状態になっています。なので、この中間貯蔵施設は、そもそも上手くいっていないので2000年に法改正をして原発の敷地以外にも核燃料を貯蔵できるようにするという法律を改正して今回の貯蔵施設ができました。やっぱり、お金がかかりますし予想のコストもかかりますし、今回は専用の舟ということですが、万が一災害が起きて何かあったときは怖いです。そういったリスクも上がってきます。現地だけではなく、色々反発もあります。なので、賛否があってすぐに止められないとはもちろん思いますが、こういった様々なことが関連していて原発政策が進んでいます。個人的には、考えたくないという人が多いと思いますが、やっぱり国の問題ですし我々も考えないといけないですから、目を逸らしてはいけないと強く思います。

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