network
リポビタンD TREND NET

今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

24.09.16

“手ぶら観光”、オーバーツーリズムにも効果あり?

null

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。


今日はダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。


「“手ぶら観光”、オーバーツーリズムにも効果あり?」

吉田:番組でもオーバーツーリズムについて何度か取り上げましたが、この解消にもつながるのではないかと、いま広がっているのが、「手ぶら観光」というサービスです。改めて、どういったサービスなのか?神庭さん、教えてください。


神庭さん:昨年、日本を訪れた外国人旅行者は2,507万人。コロナ前の8割まで回復してきています。街中で外国人観光客の方を見かけることも増えました。ただ、大きなスーツケースを持ち歩きながら観光地を回るのは大変ですし、非効率です。駅のコインロッカーやホテルに預かってもらうとしても、行動範囲や時間が制約されます。そういった不便を解消できるのが「手ぶら観光」で、空港や駅で預けた荷物を宿泊先に届けるとか、1泊目のホテルから2泊目のホテルに運ぶといった手荷物配送サービスが広がってきています。


ユージ:子供も多いし、荷物も多いですからね。すごい気になりますね。どんなサービスなのか、具体的に教えてください


神庭さん:JR東日本は9月19日(木)から「ロッカーホテル即配サービス」「ロッカーどこでも配送サービス」を始めます。ホテル即配サービスの方は、東京駅、新宿駅、上野駅、品川駅、池袋駅の「マルチエキューブ」という多機能ロッカーに預けた荷物を東京23区や千葉県浦安市内のホテルに届けてくれます。当日11時までに預けると夕方6時頃に受け取れます。値段はSサイズ:3,100円、Mサイズ:3,200円、Lサイズ:3,500円。最初は500ほどのホテルが対象で、順次拡大していく予定だそうです。「ロッカーどこでも配送サービス」は、東京駅や新宿駅のマルチエキューブに預け、自宅など指定の住所で受け取れるサービスです。どちらも事前に専用サイトで予約・決済する必要があります。


吉田:ロッカー埋まっている問題がありますので、その対策にもつながるからいいですね。どんどん循環していきますからね。他にはどんなサービスがありますか?


神庭さん:東京新聞によると、空港・ホテル間や宿泊先から宿泊先への手荷物配送を手がける「エアポーター」というサービスは月1万個以上の荷物を扱っており、コロナ禍前の2019年に比べると、取扱数が8倍に急増しているそうです。日経新聞によれば、西武ホールディングスは2日から手荷物配送サービス「pikuraku PORTER(ピクラクポーター)in東京」を始めました。池袋駅、西武新宿駅など西武鉄道沿線のスマートロッカーから、宿泊予定の首都圏のホテルに手荷物を当日配送できるサービスです。値段は小サイズ1,700円、中サイズ1,900円、大サイズ2,400円。10月31日まで期間限定で値段が少し安くなっているそうです。ロッカーに入るサイズなら何個送っても料金は一律。テトリスみたいにみっちり入れる人が出てくるかもしれない。


ユージ:「手ぶら観光」は今後も広がりそうですか?


神庭さん:大きく広がっていくのではないでしょうか。というのも外国人観光客以外にもメリットが大きいです。先日、京都に行ったのですが、バスも電車も激混み。人だけでなく、観光客の大きなトランクがかさばっています。観光客の方々からすると、日本のラッシュ事情とかを全然知らないので無理はありません。通勤時間・退勤時間で混み合う時間帯に大きなトランクをいくつも持って乗るということが普通に起きます。日本の会社員のようにラッシュを乗り切るためのすべというか特殊な訓練を受けていません。悪気なく扉付近に大きな荷物を置いて居座り、乗り降りの邪魔になってしまうこともあります。「郷に入っては郷に従え」といいますが、様々な文化圏からくる観光客の方々に、日本流のマナーとかモラルを説いても限界があります。その点、手ぶら観光サービスはただただ便利。「便利」はマナーもモラルも国境も超えるんじゃないかなと思います。


吉田:オーバーツーリズム対策にもなりそうですね。


神庭さん:その通りですね。物理的に公共交通機関に持ち込まれる荷物の総量を減らすことができれば、観光客ではない不安使いの利用者にも恩恵があると思います。日本人が国内旅行をする時も、手ぶら観光サービスは非常に便利です。「まずホテルに寄って、荷物を預かってもらって」とか「〇〇駅のコインロッカーに預けたから一度、そこに戻って」みたいな荷物メインの行動計画だけでなくて、自分メインで動けます。旅先の気になったところで途中下車するような、自由な動き方がしやすくなります。


ユージ:課題は何かありますか?


神庭さん:海外の空港だと、荷物を紛失するロストバゲージがまあまあな確率で起こります。日本は非常に少ないと言われています。世界に誇るべきものだと思います。それでも完全に定着するまでの間は、「荷物が届かない」「壊れている」のような小さなトラブルは頻発すると思います。そういうトラブルは起こるものだと考えて、いかに最小化するか手ぶら観光共通ロゴマークというものがありまして、政府はその申請にあたって料金体系の一覧を明示するなど、補償内容を英語で分かりやすく掲示するといった条件をつけています。今後、そのトラブルを減らしていくためにもそういったアナウンスをしっかり丁寧にやっていくのも大事だと思います。

  • X
  • Facebook
  • LINE
Top