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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

24.07.31

匿名・流動型犯罪グループ『トクリュウ』 その手口と対策は?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【匿名・流動型犯罪グループ『トクリュウ』 その手口と対策は?】

吉田:警察庁は先週金曜日、SNSなどで緩やかにつながって活動する「匿名・流動型犯罪グループ=トクリュウ」の動向や対策を特集した2024年版の警察白書を公表しました。塚越さん、この「トクリュウ」は、どのような犯罪グループなのでしょうか?


塚越さん:トクリュウは「匿名・流動型犯罪グループ」の略です。簡単に言えば、SNSや求人サイトで集めた人を実行役にして犯罪を繰り返す、新しいタイプの犯罪集団を指します。去年から各メディアで報道されていますよね。警察白書によれば、トクリュウはSNS上で「高額バイト」をうたってメンバーを集めて、事件ごとに離合集散を繰り返しています。特に匿名性が強い通信手段、例えば「テレグラム」という通信アプリを使っているのが特徴です。跡をたどるのが難しいので、暴力団に比べても指示役をはじめとした集団の中核となっている容疑者の特定が難しいのが問題です。それでも警察庁によれば、今年4月〜6月にトクリュウとみられる犯罪で検挙された人数は、詐欺や窃盗、強盗など合わせて824人います。多いのは詐欺で452人、続いて窃盗、薬物事犯、強盗が続いています。トクリュウの犯罪というと、去年大々的に報じられた狛江市の強盗殺人事件のような、強盗(叩き等と呼ばれる)、そして窃盗のイメージがありますが、実際には詐欺が多いとみられており、SNSでは資金の回収役である「受け子」の募集も行われます。他にも、多額の借金を背負った女性客に売春などをさせる悪質ホストクラブの背後で利益を得ている可能性も指摘されています。活動の幅がかなり広がっているということです。


吉田:「トクリュウ」は、実行役をSNSなどで集めていることが特徴ということでいいですか?


塚越さん:そうです。先ほど話した4月〜6月に摘発した計824人のうち、3割はSNSがきっかけで犯罪に関与したということです。他にも人のツテなどそういうところがありますが、白書によればグループが実行役を募集する際は、運転免許証の画像や顔写真を送信させて犯罪をためらったり、「2回目やだ」といっても写真や書類を脅迫に使って服従させたり、報酬を支払わないケースもあったということです。もう何度も言われていますが、個人情報は知らない人に簡単に送らない。またSNSに出てくる「高額バイト」といった類の投稿は必ず無視するか、通報することが大事です。


ユージ:この「トクリュウ」に対して、現状どのような対策がとられていますか?


塚越さん:警察も捜査手法の変革を急いでいます。基本的に犯罪組織の捜査では、例えば暴力団であれば末端から入って幹部にたどり着くという手法でしたが、トクリュウは末端の実行役と幹部の間に匿名性の高いアプリを使ったりと、大きな溝があって捜査ができません。なので私が課題だと感じているのは、逮捕される人はネットで集めた、いわゆる「末端」の「使い捨て」が多く、中核メンバーの逮捕に至らないことです。末端をいくら逮捕しても上に繋がらないことが問題です。なので、トクリュウ対策として資金の流れを重視する。トクリュウは特殊詐欺だけでなく、違法オンラインカジノや悪質なホストクラブといった犯罪への関与も疑われており、警察はそれぞれの収益のいきつく先に中核メンバーがいるとみられているのでそれぞれ捜査していこうと。警察庁は資金の経路を追うために、大規模な繁華街を管轄する警察に捜査部門を横断した新たな組織体制をつくる他、全国でおよそ700人を増員します。全国レベルで組織横断を実行していこうとしています。もう1つは「闇バイトの募集」を阻止する取り組みです。警察庁は去年9月、ネット上での犯罪実行者を募集する投稿を「重要犯罪密接関連情報」という類型に加えることで、SNS事情社に投稿の削除を要請しています。実際にその後、去年の9月〜12月の間に2,136件が削除されました。求人サイトも対策を強化しており、「バイトル」の運営会社は生成AIを活用して、不審な求人を検知する仕組みを導入しており、これによって人間の目視のみのチェックに比べて作業時間をおよそ80%減らせていて求人の方も対策を進めています。


ユージ:「トクリュウ」の手口や対策。塚越さんは、どうご覧になりましたか?


塚越さん:顔の見えない犯罪がどんどん増えてきているということです。あとは、暗号資産などもこのトクリュウが使っているとみられています。警察の内部にそういった情報通信にかなり詳しい方をどんどん入れていく。人材を募集していくことが大事です。青少年が闇バイトなどにどんどん入りやすい傾向がありますので、そこは対策が必要になっていきます。この2つは、重要になっていくのかなと思います。

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