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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

24.07.18

カスハラ対策だけではない「名札」の変化

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【カスハラ対策だけではない「名札」の変化】

吉田:顧客による理不尽な要求や威圧的な言動などの迷惑行為を指す「カスタマーハラスメント」が社会問題になる中、企業や自治体では、職員や従業員が付けている「名札」について、顔写真の掲載をやめるフルネームの記載から名字だけに変更するなど、名札を通じて名前が公表されないようにする動きが広まりつつあります。


ユージ:塚越さん、自治体や企業による「カスタマーハラスメント」対策、進んでいますか?


塚越さん:政府が先月まとめた「骨太の方針」の中では、カスタマーハラスメントを含む職場のハラスメントに対して、法的措置も視野に入れた対策を強化すると明記されています。これを受けて厚生労働省では、法令改正に向けた検討が見込まれています。また自治体でも、例えば東京都はカスハラ条例制定に向けて、2023年度に「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会」を設置しています。他にも三重県や愛知県でも、条例制定に向けた協議会などを設置する動きがあります。一方で企業でも、例えば百貨店の高島屋が先日、カスハラに対する基本方針をホームページ上で公開しました。百貨店では初めてとみられていますが、カスハラと判断した場合は対応を断り、来店を断る場合があるとしています。要するに「出禁」ですね。カスハラ行為としては、従業員への人格否定や差別発言、また土下座の要求があります。またNTTグループは、この7月にカスハラに対する基本的な対応をグループ3社で策定したことを発表しており、さらにANAグループとJALグループが「共同」でカスハラに対する方針もまとめています。競合しているJALとANAですが、ここは共同で一緒に作るということで、グループ企業だったり業種ごとに連帯して対応を決める動きが出ていると言えますね。この動きは更に加速すると思います。


吉田:カスハラ、無くなって欲しいですが、そんなカスハラ対策のために職員や従業員が付ける名札に変化が出てきているようですね。


塚越さん:今年1月、茨城県の土浦市で女性職員が来庁した男性に対応していたところ、男性が無断で女性をスマホで撮影したことがありました。特にトラブルがあったわけでもなく、意図は不明ですが、不審に思って画像を確認すると、名札も写っていました。女性職員は強い不安を感じたとのことですが、それは怖いですよね。顔と名前が一致しています。これがきっかけで土浦市では、4月から職員の名札をフルネームから名字だけにして、顔写真の掲載もやめたとのことです。他の自治体でも実名表記をやめているところが増えています。名札から分かることは多くあり、最近ではSNSで悪質な嫌がらせをするケースもあります。


ユージ:自治体だけでなく、企業でも名札に変化が出ているんですよね?


塚越さん:コンビニ大手のローソンは、6月から名札表記を見直して、これまで通り実名でもよいですが、アルファベットやイニシャル表記も可能としました。京王バスでも、4月1日から現在の本名だけでなく、乗務員自身が考案した「ビジネスネーム」を導入して、自分の判断で表記を選べるようにしたり、大手コーヒーチェーンの「タリーズ」も名札を実名からイニシャルに変更するなど、こうした対応をする企業が増えています。私がよく行く喫茶店でも、店員さんのネームプレートがイニシャルに変わっている店があります。


ユージ:でも、フルネームである必要ありませんからね。塚越さん、こういった名札で「実名表記」しないという変化、カスハラ対策に繋がっていくのでしょうか?


塚越さん:やはり一番大きな要因は「SNS」での誹謗中傷です。真偽の程が定かではなくても、SNSには拡散力があります。事実無根の内容でも、匿名アカウントが「この◯◯という店員はダメ」といった投稿をされたら、嫌ですよね。※あと、実名をみてSNSで友達申請してくるケースもあるようです。それも困りますよね。あるいは実際に被害を受けなくとも、そうした「リスクがある」ということだけで、特に就職を控える大学生などは、敢えて人前に出て仕事をしたくないと思ってしまいます。その意味では接客業としては、人材確保の面でもこうした配慮をしていると考えられます。先ほど、ユージさんが言った通り実名で店員さんを出して欲しいかというと微妙ですよね。従業員さんが匿名でもいい加減になる意見はありますが、お店で働いているので名前が分からなくてもイニシャルでちゃんと正当なクレームや講義であれば事象があれば伝わります。クレームする側も緊急時を除けばある程度落ち着いている必要があります。勘違いでも脊髄反射的にSNSに投稿できてしまう。その上で、もっと大きいトラブルになっちゃうことがあるので、お客さんもお店側もということですよね。そこは、もういいのではないかと思います。個人的にはビジネスネームも面白いなと思いましたけど。(笑)


ユージ:仕事とプライベートで分けてもいいと思いますけどね。


塚越さん:ここでは、「ジョージ」と呼んでくださいみたいな。そういう時代がきてもいいと思います。


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