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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.09.26

安倍元総理の国葬

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【安倍元総理の国葬】

吉田：安倍元総理が亡くなった６日後の７月14日に岸田総理は記者会見で国葬を執り行うと発表。その後、７月22日に閣議決定され、国葬が行われることが正式に決まりました。その後、反対を訴えるデモが行われるなど、賛否が分かれる中、いよいよ明日に迫った国葬ですが、国葬前日、今考えるべき事、どのように国葬を迎えるべきか、神庭さんに解説してもらいます。まずは、国葬を巡るここ最近の動きについて教えてください。


神庭さん：国葬への出席をめぐって、与野党で「ねじれ」が浮かび上がったことが興味深いと思っています。立憲民主党は国葬に法的根拠がないとして、党執行部９人が欠席することを決めているんですが、党の重鎮である野田佳彦元総理が、BSテレ東の番組で出席を表明したんですね。野田さんは国葬決定のプロセスについて「拙速」「独善的」と指摘しつつも、出席する理由をこう説明しました。「伊藤博文以来、内閣総理大臣の経験者は64人しかいない。その重圧と孤独を私も短い期間だが味わった。それを最も長く経験された方。元総理が、元総理の葬儀に出ないのは、私の人生観から外れる。長い間ご苦労様でしたと、花を手向けてお別れしたい」という風に話したんですね。


ユージ：そうですよね…。


神庭さん：野田さんは安倍さんとの間で、激しい国会論戦を戦わせた元ライバルですが、同じ総理経験者として一定のリスペクトを感じさせる発言だったと思います。野田さんは幼少期にアメリカのケネディ大統領の暗殺に衝撃を受けたと、折に触れて語っていますので、凶弾に倒れた安倍さんに対しても思うところがあったのかもしれませんね。


ユージ：一方、野田さんとは逆のパターンで、自民党議員から国葬欠席を表明する人も出てきていますよね。


神庭さん：元行政改革担当大臣の村上誠一郎衆院議員なんですが、「国葬を決定する経緯にいろいろな問題があるので欠席する」とコメントしています。村上議員は安倍さんの生前から厳しく批判していたんですね。時事通信によると、村上議員は安倍さんについて「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と話したんです。「国賊」は「非国民」とか「売国奴」と同じでかなり強い言葉です。安倍派の議員を中心に「絶対許さない」「除名だ」という声が広がっているそうです。野田さんと村上さんは正反対の立場ですが、それぞれ所属政党とは異なる意見を表明した、という点は共通しています。今後、両党の内部で火種になっていく可能性もあるかなと思いますね。


吉田：今日のAuDee JUDGEのテーマでもあるんですが、国葬問題による岸田内閣の支持率への影響については、どう見られていますか？


神庭さん：産経新聞の最新の９月17、18日の世論調査で、岸田内閣の支持率は42.3％。先月から12ポイントも下落しました。同じ調査で、安倍元総理の国葬に「反対」の人は62.3%と前回から11.2ポイント増。「賛成」は31.5％で9.3ポイント減らしています。「検討使」と言われ、決断しない岸田さんが、おそらく初めて異論を押し切って決断した結果、皮肉なことに支持率がダダ下がりしてしまいました。国葬だけでなく、旧統一協会問題も大きく影響しているとは思いますが、そもそものところで、「保守層からの支持を固めたい」とか「最大派閥の清和会（安倍派）をおさえて、党内基盤を安定させたい」とか下心が見え見えだったので、そういうところも国民に見透かされているのかなと思います。


ユージ：それにしても、１ヶ月で12ポイントの下落は大きいですよね。


神庭さん：もともと賛成だった人まで減ってきてしまっているのは、岸田さんの説明のまずさも大きいと思います。国葬の費用見通しも当初は２億5000万円と言われいましたが、後出しジャンケンで16億6000万円に膨らんでしまいました。先ほどの産経の世論調査でも国葬についての岸田総理の説明に「納得できない」という人が72.6％を占め、「納得できる」の18.9％を大きく上回っているんです。国葬自体の賛否もさることながら、岸田さんの「説明」のあり方に対する不満が見てとれるのかなと思います。


吉田：神庭さんは、国葬について、改めてどういうお考えですか？


神庭さん：先週申し上げた通りで、112万人の自民党員の間で１万円とか３万円を集めて立派な党員葬を開いて、静かな環境で安倍元総理をお送りするのが一番良かったんじゃないかなと思います。安倍さんは2017年、秋葉原での演説で「安倍やめろ」とヤジられて、「こんな人たちに負けるわけにはいかない！」と力強く言い切ったんです。いい悪いは置いておいて、敵味方を鋭く峻別して支持を集めていくのが安倍さん流の政治スタイルだったんです。税金を投入するということは、安倍さんが言うところの「こんな人たち」からもお金をとる、香典を受け取るということです。今回、国葬にして税金を投じたばっかりに、格好の口実を与えて、ヤイヤイ言われる結果を招いてしまいました。税金を使わない党員葬だったら、誰も何も文句を言われず、心から安倍さんを敬愛する人たちだけ集まって、静かな式ができたのにと思います。


ユージ：いろいろな意見があるなか、いよいよ明日、国葬が開かれるということなんですよね。


神庭さん：インフレや円安への対応、ロシア・中国・北朝鮮との間で厳しさを増す安全保障など、日本には重大な問題が山積しています。国葬をめぐるゴタゴタによって、重要度の高い政治課題がかすんだり、後回しになったりしている状況は問題じゃないかなと思います。後世になって、この時代は岸田総理っていう人がいてね…という話になった時に、「岸田さんの最大の功績は、安倍元総理の国葬を成し遂げたことなんだよ」となってしまったら笑えないですよね。悲惨な話ですが、このまま支持率が急落していくと、そういう事態も起こり得ますから、いま一度「聞く耳」を発揮して、優先順位をつけて政治課題に取り組んでいただきたいです。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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