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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

22.09.21

この冬の電力需給“安定供給”の見通し 急場しのぎという指摘も

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
コメンテーターは引き続き、情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら！


この冬の電力需給“安定供給”の見通し 急場しのぎという指摘も

吉田：経済産業省が先週木曜に公表した、「この冬の電力需給の新たな見通し」によりますと、最大の需要に対する供給の余力を示す「予備率」は全ての地域で4％以上となり、“安定供給”に最低限必要とされる3％を上回りました。ただ、この見通しについて、“急場しのぎ”という指摘もあります。塚越さん、この冬も電力の需給は“ひっ迫する”と言われていましたけど、それが今回、“安定供給”の見通しとなったのはどうしてなのでしょうか？


塚越さん：主な背景としては3つあります。1つ目は、経産省が電力会社に対して休止していた火力発電所の再稼働を求め、稼働の見通しが立ったことです。2つ目は、今年3月の福島県沖地震で損傷した、福島の火力発電所の復旧について、来年3月だった予定のものが、来年1月中頃に前倒しで復旧できるということです。3つ目は、西日本では設備の不具合で定期検査中だった高浜原子力発電所3号機が、今年の7月から運転を再開していることが挙げられます。こうした背景があり、今年の冬が10年に一度の厳しい寒さになると仮定した場合の2023年1月の予備率は、東京電力で4.1％、2月には4.9％の見通しです。関西電力など、他の6つの電力会社でも4％を超えています。今年6月段階で発表された冬の予備率の見通しが1％台半ばだったので、それと比べると、かなり状況は改善されたと言えます。今年は夏にも電力逼迫が懸念されたこともあり、対策が進んだと考えられます。


吉田：今回の見通しについて、“急場しのぎ”という指摘もありますよね？


塚越さん：全体として、まだまだ懸念点があります。まず、火力発電の再稼働は来年1月であり、寒波が12月に起きた場合は関東等で電力供給が足りなくなる恐れがあります。今年の夏も、想定より早い6月下旬に猛暑がきたので電力不足が懸念され、政府の節電要請が生じました。さらに、火力発電所は老朽化が進んでいるので、保守点検を丁寧に行っても、不測の事態が生じる可能性があります。さらに、火力発電の主な燃料である液化天然ガス（LNG）だが、輸入全体の9％はロシアの石油・天然ガス事業「サハリン2」から調達しています。ロシアのウクライナ侵攻によって情勢が不安定化しているので、冬になって不測の事態が生じることもあり得ます。これら様々な不安定要因があるので、安心はできない状態です。


ユージ：この冬の電力需給の見通し、塚越さんはどのようにご覧になっていますか？


塚越さん：予備率3％を超えるといっても、現状の見込みであり、述べてきたように不安な部分はいくつもあります。そこで経産省は、夏に続いてこの冬も全国の家庭や企業に対して、無理のない範囲での節電を要請する方針を示しています。冬の節電要請は、2015年以来7年ぶりとなります。電力会社にも発電所の保守点検・燃料確保を求めます。一般の私たちも、生活の中でできる範囲の節電は心がけるべきで、また節電に応じてポイントが付与されるような、政府や企業の対策が生じることも予想されると思います。今後も電気が心配されるなら、火力発電や原発を作ればいいという意見もあるかもしれませんが、日本の総使用電力は2010年あたりをピークに10年で10％以上減っています。原因は景気後退、少子高齢化の影響や工場の海外移転があります。他にも、2011年の東日本大震災以降は節電が注目され、省エネが進んだことも要因として考えられます。家電を替えることで省エネにもなりますし、それによって電力の消費量が減っている状態です。


ユージ：家電もどんどん増えて、電化製品にまみれた生活が当たり前になっているので、正直増えていると思っていました。


塚越さん：実は省エネになっています。そして、今後は休止している施設の再稼働はあっても、新しく発電所を作るという判断は難しいと思います。さらにいえば、発電所は計画しても、すぐに作れるものではないです。対策としては、節電を中心に省エネ化を進める必要があります。その他、再生可能エネルギーや蓄電池を効率的に利用・普及する方法を考えること。クリーンエネルギーへの投資による、中長期的な政策を使って経済成長に繋がればいいと思います。


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