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22.01.17

きょう召集される「通常国会」

nullネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。

今日は「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。


きょう召集される「通常国会」

吉田:通常国会はきょう召集され、岸田総理の施政方針演説などの政府4演説が、衆参両院の本会議で行われます。会期の延長がなければ6月15日まで開催される予定ですが、今回はこの通常国会の注目ポイントについて神庭さんに解説していただきます。
さっそくですが、今回は政府の提出法案が例年にくらべ少ないということですが、これはどうしてなんでしょうか?


神庭さん:58本という提出本数は過去10年で3番目に少ないんですね。通常国会の会期は、6月15日までの150日間なんですけれど、政府は参院選の党開票日として7月10日を想定していて、会期延長で選挙日程に差し障りが出ないようにあらかじめ本数を絞り込んだ、と言われています。野党と対立しそうな対立法案の提出を見送って、参院選前に世論に悪影響が出るのを避けたい、という狙いもあるようです。


ユージ:具体的にどんな法案が提出を見送られたんですか?


神庭さん:ひとつは「感染症法改正案」です。こちらは、新型コロナの病床確保のために政府・自治体の権限を強化し、行政と医療機関が結ぶ協定に、法的な実効性を持たせる、という内容なんですね。医療機関に国や自治体への協力を義務付けるような法案になる予定だったんですけれど、岸田総理は9日にフジテレビの番組で「6月までに中長期的な課題をしっかり洗い出したうえで、法改正を考えていく」と話し、通常国会への法案提出を見送る考えを示しました。これには与党内からも反対が出ていて、自民党の鈴木馨祐議員はTwitterにこう投稿しています。

《 国民の皆さんの協力で他国よりも感染を抑えられているのに、これまで大量の公金を投入してきた医療提供体制が脆弱なために「危機的状況」になってきたのが我が国の実態。その問題を解決し病床確保の実効性を上げるための法改正を見送るという判断は正直理解に苦しみます。 》

と言っているんですね。


ユージ:党内からも反対が出ている、ということなんですね。


神庭さん:そうなんです。この問題を熱心に報じている産経新聞も怒っていまして《 感染症法改正案 今出さずにいつ出すのか 》という、林先生みたいなタイトルの社説のなかで、
「政府の緊張感のなさにあきれる。事態は深刻である。二の足を踏んでいる場合ではない。」「政府・与党は参院選を前にした医師会関係者の反対論を気にせずに法改正を実現すべきだ。」と強く訴えています。
少し補足しますと、医療関係者の間では感染症法改正に対する慎重論が根強く、産経は別の記事で日本医師会幹部の「強制されないと医療機関が動かず、言うことを聞かない、という判断は誤りだ」という声を紹介しています。
日本医師会は会員数が17万人を超え、ものすごい集票力を持っていますので、与党側からすると、参院選を前に「刺激したくない」「敵に回したくない」という心理が働くのは、ある意味自然なことなんですけれど、オミクロンの流行も本格化していますから、選挙目当てでなく、国民本位、政策本位の政治を進めてほしいな、と思います。


吉田:ほかに提出が見送られた法案は何かありますか?


神庭さん:新型コロナで外出制限を強めるための「特措法改正案」。これは私権制限を強める内容なので、感染症法と同様に反発を招く可能性がある、と。あとは、日経新聞によると「マイナンバー法改正案」も見送りになったということです。こちらは、現在、税や社会保障などの分野に限られているマイナンバーの利用範囲を拡大する内容なんですけれど、これもやはり、野党から監視拡大を懸念する声が出てもおかしくない、ということで、対立を避けるためにいくつかの法案は見送りになっているんですね。


ユージ:逆に提出される法案にはどんなものがありますか?


神庭さん:はい。「経済安全保障推進法案」が注目で、背景には米中対立があるんですね。具体的な内容としては…
半導体や医薬品などの戦略物資が安定的に確保できるように供給網を強化し、特定の国に依存しすぎず、国内や友好国で調達できるような体制を整える、という法案なんですけれど、核関連や量子暗号といった先端技術が海外で軍事技術に転用されることを防ぐために、特許の公開を制限する、と。その間に出願者がもらえるはずだったライセンス収入に関しては国が保障しましょう、という内容で、2010年の尖閣問題のさなかに起こったレアアース危機や、最近の半導体不足のような事態を防ぐためにも、経済安全保障を強化することはとても重要だと思います。一方で、ストレートに国益=企業益とならない部分もあるので、民間のビジネスを過度に制約して成長を妨げないように、規制の範囲は予め法律でしっかり明文化しておく必要があると思います。


ユージ:そのほかの注目法案はありますか?


神庭さん:はい。薬機法の改正案です。コロナ禍で欧米に比べてワクチンや治療薬の実用化が遅れたことを教訓に、危機の際に承認手続きをスピードアップする「緊急承認制度」というものが盛り込まれる見通しですね。
それから「こども家庭庁」の設置法案も提出される予定でして、児童虐待や子どもの貧困対策に力を入れるのはとても良いんですけれど、木原官房副長官は「縦割りを排す」と言っていたのに、幼稚園・保育園を一体的に運用する「幼保一元化」は、結局見送られてしまったんですね。幼稚園を所管する文科省などの抵抗あったということなんですが、国会での質疑を通じて、こども家庭庁のあり方について議論を深めてほしいですね。

見送られた法案、提出される法案、それぞれに注目しつつ、国会論戦を見守ってもらえたら、と思います。



そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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