22.01.11
新型コロナウイルスをきっかけに考える日米地位協定
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
BuzzFeed Japan News 副編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら！
『新型コロナウイルスをきっかけに考える日米地位協定』
吉田：外務省は9日、在日米軍関係者の基地からの外出について、10日から14日間は、必要不可欠な活動に制限するとした日米合同委員会声明を発表しました。全国各地にあるアメリカ軍基地周辺での新型コロナウイルス感染急拡大を踏まえた措置です。一方で、岸田総理は在日米軍での感染拡大をめぐり「日米地位協定の改定は考えていない」と明言しています。
神庭さん、コロナ感染拡大とアメリカ軍の対応について、改めてまとめてください。
神庭さん：日米地位協定の9条2項では、《合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される》と定められてるんですね。ちょっと難しいので平たく言うと、“米軍の飛行機とか船で直接基地に入る場合は、検疫は米軍任せ”という運用なっていたんです。それでも米軍がしっかり検疫対応をしてくれれば良かったんですけれども、実際には、完全にザルになってしまっていたと…。日米両政府は、2020年7月に米軍が日本の水際対策と『整合的な措置』をとることで合意したんですけれども、日本中が第5波で大変なことになっていた去年の9月に、米軍は独自判断で出国前の検査を取りやめてしまうんですね。入国後の検査は、そもそもやっていなくて、マスクも徹底されていなかった、そのうえで、米兵の飲酒運転なども相次いでしまったと。結果、12月になって沖縄のキャンプハンセンとか山口県の岩国基地など、各地で米軍クラスターが広がってしまったんですね。
吉田：アメリカ軍の対応が甘かったわけなんですけれども、それに対して日本政府はこれまで、何かアクションを起こしていたんでしょうか？
神庭さん：日本政府が米軍のガバガバ対応を知ったのはつい先月のことで、沖縄でクラスターが発生した後のことだったんですね。毎日新聞などによると、岸田総理は憤慨して、林外務大臣に「最大限抗議しろ」というふうに指示し、林大臣は先月22日にラップ在日米軍司令官に電話で『遺憾の意』を伝えました。米軍側はですね、先月26日から出発72時間前の検査を始めて、30日からは入国後24時間以内の検査もするように運用を改めたんですけれども、時すでに遅しで、年明けから感染が拡大してしまったと…。事態を重くみた日米両政府が昨日から厳しい措置に乗り出したということなんですね。
ユージ：“アメリカ軍が甘い”という考えもあるし、“日本政府の対応が遅い”というのもあるかもしれませんけども、今回、アメリカ軍がある地域で対応が難しかったのは、「日米地位協定があるから」という声があります。 この『地位協定』について、改めて教えて下さい。
神庭さん：1960年に日米安全保障条約が改定された際に締結された協定なんですね。基地の管理権を米軍が持つことであるとか、米軍関係者の様々な特権、あるいは、税の免除などについて定められています。戦後の占領期と変わらないような取り扱いも一部引き継がれてまして、日本側からは、「不平等だ！」とか、「治外法権だ！」といった批判も大きいんですね。中でも、『地位協定17条5項』は、容疑者の身柄が米国側にある場合は、日本側が起訴するまで米国側で身柄を拘束するように規定しているんです。1995年に沖縄で起きた米兵による小学生の少女暴行事件の際は、米軍側が当初この規定を盾にとって、日本側への身柄引き渡しを拒んだんですね。それで、8万5000人が集まる大きな抗議運動に発展しました。2004年に沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落してしまった時も、地位協定に基づいて日本の警察や消防は締め出されてしまって、満足に捜査することもできなかったと…。こうした問題が起こるたびに、『地位協定の見直し』を求める声はあがってきたんですけれども、政府は条文の改定そのものには手をつけずに、『運用の見直し』でしのいできたんです。
ユージ：それだけの問題が過去に起こっているのに、手を付けていないということは、変えるのは相当難しいということなんですか？
神庭さん：地位協定は発効から60年以上、一度も変わってなくて、政治的なハードルが非常に高いのは確かなんです。日本政府の側からすると、米軍に“守ってもらっている”立場で、出過ぎたことを言って、「だったらいいよ！」と米軍に撤退されてしまうようなことが万が一でも起きたら困るという恐怖感があるわけで、実際、トランプさんは、2016年の大統領選で、「米軍の駐留経費を日本が大幅に増額しなければ撤退もあり得る」なんて言っていましたよね。アメリカ側からすると、日本側に全面的な裁判権とか捜査権を認めた場合に、米兵がどんな処遇を受けるか不安があるんですね。悔しいけど言い分に根拠がないわけでもなくて、日本の刑事司法は、『人質司法』とか、『代用監獄』とも呼ばれていて、冤罪の温床になっているとも言われているので、そういった点は改善していかなければいけない。じゃあ、地位協定は絶対に変えられないか？というと、そんなこともなくて、日本と同様にアメリカ側と地位協定を結んでいるドイツとか韓国は、過去に改定を実現しますし、その結果、米軍が撤退したということもないんですね。
吉田：日本が今後、在日米軍をどう考えていくかが、ますます重要になりますね。
神庭さん：そうですよね。中国が尖閣近海で侵入や挑発を繰り返してますし、台湾海峡をめぐっても緊張感が高まってます。日米安保条約も含めたアメリカとのパートナーシップは、今後、ますます重要になってくると思うんですよね。ところが、こういったかたちで、米軍の杜撰な対応によって感染が広がるようなことが繰り返されると、地元の反基地感情が高まって、信頼関係にヒビが入ってしまいます。パートナーシップというのは、信頼のうえに成り立つものですから、“親しき仲にも礼儀あり”で言うべきことはしっかり言っていくべきじゃないかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ��
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) January 11, 2022
「新型コロナウイルスをきっかけに考える日米地位協定」について
日米地位協定は、1960年に日米安全保障条約が改定された際に締結された協定です。?戦後の占領期と変わらないような取り扱いも一部引き継がれていて、#ワンモ
#ユジコメ ��
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) January 11, 2022
日本側からは、「不平等だ」「治外法権だ」という批判も大きく、?見直しが前々から言われていました。
米軍基地ではマスク無しでの入国があり、不満の声もあがっています。
米軍基地があることによるメリットもありますが、デメリットもあります。
#ワンモ
#ユジコメ ��
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) January 11, 2022
?日米地位協定が締結されたのもかなり前なので、僕は見直すべきだと思います。
過去に、日本同様地位協定を結んでいる韓国やドイツが改定を実現している事実もあるので、
交渉して見直していく余地はあると思います。
米軍がある地域だけ苦労することは不公平だなと思います。
#ワンモ
