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21.08.30

自民党総裁選

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【自民党総裁選】

吉田:自民党総裁選の日程が9月17日告示、29日の投開票で決まりました。菅総理のほか、岸田前政調会長、高市前総務大臣、下村政調会長も立候補の意向を示しています。党内では菅総理への不満が高まっており、選挙戦の行方は見通せない状況となっています。そこで今朝は、今回の総裁選、どんなところに注目していけばいいのか、神庭さんに解説して頂きます。まずは、総裁選のシステムについて教えてもらえますか?


神庭さん:候補者たちは国会議員票383票と全国の党員・党友による地方票383票の合計766票を奪い合うことになります。昨年、菅さんが総裁に選出された際は選挙期間を短くするために、地方票が各県3票ずつの141票しか与えられなかったんですが、今回は「フルスペック」での開催となり、地方票の重みが増すということですね。


ユージ:菅総理は立候補の意向を示していますが、菅さんの再選の可能性はどうでしょうか?


神庭さん:菅総理は「その時期がきたら、出馬をさせて頂きたい」と話しており、続投の意思が固いんですが、4月の衆参トリプル選、7月の東京都議選、今月の横浜市長選と主要選挙で自民党の連戦連敗が続き、菅さんのコロナ対応への不満も高まっているんですよね。支持率もかなり下がってきています。党内でも、菅さんでは選挙の顔にならないんじゃないかと、特に若手は選挙基盤が弱く、自分の進退がかかってることもあり、菅離れが進んでいるという話も聞こえてきています。


ユージ:再選の可能性はありますか?難しいですかね?


神庭さん:そう単純な話でもなくて、世論と党内力学はまた別なんですね。自民党内の重鎮をイニシャルをとって3A、2Fといいます。3Aは、安倍晋三前総理、麻生太郎副総理、甘利明党税調会長、2Fは2階、つまり二階俊博・党幹事長のことを指します。このうち安倍さん、麻生さんは菅さん支持を示唆しており、甘利さんも麻生派の一員。二階さんは記者会見で菅さんを支持するか聞かれて、「当然のことじゃありませんか。愚問だよ」と答えました。若手はともかく、実力者たちは一応、菅さん支持の構えを取っています。


吉田:菅総理以外では、どの方が注目ですか?


神庭さん:まず、岸田文雄前政調会長。昨年の総裁選では大差とはいえ菅さんに次ぐ2位につけました。先日、記者会見をしまして、これまでは「地味」「優柔不断」「発信力に欠ける」とも言われてきたんですが、この日の会見では自分の言葉で、国家観・ビジョンを語っているように見えました。今回、事実上、菅さんと岸田さんの一騎打ちじゃないかという評もあります。記者会見の中では、「党役員の任期を明確化すべきだ。総裁を除く党役員は1期1年、連続3期までとすべきだ」と言っていて、「特定の方を念頭に申し上げたつもりはない」と言うものの、二階さんは歴代最長となる5年以上の長期にわたって自民党幹事長に君臨していますからおり、二階さんへの牽制とも取れるかな、と思いますね。


ユージ:他に、注目の候補はいますか?


神庭さん:高市早苗前総務大臣は月刊誌『文藝春秋』で総裁選出馬を表明しました。菅さんを「就任当初の溌剌とした表情が消え、発する言葉からは自信も力強さも伝わらなく」なったと批判しています。安倍総理の経済政策をアレンジした「ニュー・アベノミクス」路線を敷くと言っています。財政緊縮派とも目される岸田さんに対し、高市さんは積極財政を掲げている。菅さんは99代総理です。もし仮に高市さんが総裁になると、第100代総理大臣が初の女性総理、ということになり、選挙戦を戦ううえで一つのエポックになる可能性はあります。ただ、高市さんは無派閥で立候補に必要な20人の推薦人を集められるか微妙なところです。同じことが、下村博文政調会長にも言えて、彼も総裁選出馬を表明していますが、やはり20人の推薦人が集まるかどうかが課題となるかなと思います。


吉田:衆議院選挙への影響についてはいかがでしょうか?


神庭さん:菅さん以外が総裁になれば、ご祝儀的に衆院選での自民党票も多少は増えるんじゃないかと推測はできます。菅さん再選の場合、議席減など相当な逆風が待ち受けていると思います。ではなぜ、それが分かっていても3A2Fは菅さん支持なのか。安倍さんや麻生さんからすると、菅さん支持を降りて他の候補者を応援した後に菅さんの続投が決まった場合、二階さんの影響力がますます強まるわけです。ジャーナリストの後藤謙次さんは、「降りるに降りられないという三すくみのなかで、菅さんの立場が安定しているのが、今の自民党の権力構造」と指摘しています。


ユージ:他にも自民党総裁選を考えるうえで大切なポイントがあるんですよね?


神庭さん:一つは、「近い将来、総理大臣になるかもしれない人を選ぶ選挙」だということ。こちらの視点に立ってこれまで解説してきましたが、もう一つ忘れてはいけない点があります。それは、政権与党とはいえ「一政党のリーダーを決めるための党内手続きに過ぎない」ということです。自民党は総裁選を通じて出身派閥や支持母体の異なる議員が総理総裁になることで、「擬似政権交代」を繰り返しながら、長く政権にとどまってきたんですが、しかし「疑似」は「擬似」であって、本番はあくまでも解散総選挙の方だということを忘れずにいたいなと思いますね。



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