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21.08.23

東京パラリンピックの学校観戦

nullネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。

今日は「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。


東京パラリンピックの学校観戦

吉田:いよいよ明日から始まる東京パラリンピック。そのパラリンピックを小中学生らが観戦する「学校連携観戦プログラム」が波紋を広げています。感染への懸念から参加を見送る学校がある一方、多様性の理解につながる貴重な機会として参加を予定する学校もあり、判断が分かれています。明日からパラリンピックが始まりますが、改めまして、現在はどんな状況なんでしょうか?


神庭さん:「学校連携観戦プログラム」には、18日の時点で都内の8自治体と都立学校23校の生徒ら、13万2000人が参加の意向を示しています。東京都教育委員会の会合が18日にありまして、教育委員会の事務方が予定通りプログラムを実施する考えを示した一方で、委員5人のうち4人が反対に回りました。こういうのは大体、事務方の案にみんなが賛成して終わるのがほとんどなので、異例の事態と言って良いかと思います。
毎日新聞によりますと、東京都教育委員会の担当者は「観戦の機会を奪うのではなく、可能であれば実施できるよう支援していくのが我々のとるべき立場」と説明しています。一方委員側は、山口香委員が「医療が逼迫する中で、大変な状況に置かれている医療従事者に寄り添い、感染者を増やさないためにどういう行動をとらなければならないかが求められている」と発言していまして、新井紀子委員は、プログラム参加者に特別支援学校の生徒が多いという点に触れて「実施すべきではない」と主張しています。また、4人が反対したことを「重く受け止めてほしい」とも話したと報じられています。


ユージ:政府や東京都の方針は、どうなっているんですか?


神庭さん:報道によると、丸川珠代五輪相は「学校連携は自治体からも大変強い要望があった」と説明していて、「組織委員会が関係自治体としっかり連携をしながら万全の対策を講じる」と話しています。要は「自治体が要望したからやる」みたいな言い方をしている、と。
小池都知事は「パラリンピアンのパフォーマンスを実際に見て頂くことは、極めて教育的価値が高い。安全対策をしっかりと講じ、保護者の方々の意向も踏まえて行う」と理解を求めています。


吉田:一方で、こういった状況もありますので、慎重論もありますよね。


神庭さん:そうですね。新型コロナ分科会の尾身茂会長は参議院の内閣委員会で、五輪の開催時期に比べ、感染状況がさらに悪化していると説明していまして、「状況はかなり悪いので、観客を入れるのはどういうことかと考えていただければ、当然の結論になると思う。」と厳しい見方を示しました。
これまでに比べ、デルタ株では10代以下の感染拡大が目立ってきていまして、主に大学生・高校生が中心ですが、学習塾で小中学生のクラスターも発生していて、学校側の警戒水域もかつてなく上がってきている状況です。神奈川や沖縄では夏休みを延長する学校も出てきまして、大阪府は修学旅行の延期を決定し、京都府では部活動の停止を決めました。


ユージ:ちなみに……神庭さんは、学校観戦は賛成ですか?反対ですか?


神庭さん:難しいんですけれど「無理するところじゃないんじゃない?」ということに尽きると思います。自宅療養者は10万人に迫る勢いで、都内では家族で自宅療養していたお母さんが亡くなる、という痛ましい出来事もありましたし、千葉では自宅療養中に出産した赤ちゃんが亡くなってしまう、という悲しい出来事もありました。
ふだん一緒に授業を受けているクラスメイト同士でスポーツ観戦すること自体は、そこまで感染リスクを上げる行為とは思いませんが、外部へのアナウンス効果も考える必要があるかなぁ、と思っていて、お盆前には、菅首相がオリンピックを開催した際のロジックを逆手にとるような形で、「コロナに打ち勝った証として帰省する」「バブル方式で帰省する。感染拡大の恐れはないと認識している」「帰省を中止することは一番簡単なこと、楽なことだ。帰省に挑戦するのが国民の役割だ」といった言葉がネットで散見されたんですね。これはもちろん皮肉であって、実際にそういう行動に出た人ばかりではないかと思いますが、ある意味で格好の「口実」を与えてしまった面はある訳ですよね。
IOCの広報部長は、コロナ禍での五輪開催について「パラレルワールドみたいなものだ。私たちから東京で感染を広げていることはない。」と言っていたんですけれど、もうこれ以上、日本に「パラレルワールド」をつくるべきではないと僕は思っていて、「教育効果」と言うのであれば、大人たちが身をもって「どんな時でも必ずプランBは用意しよう。」とか「時には名誉ある撤退も大切だ。」と子どもたちに伝えることも、大きな教育効果だと思っています。


ユージ:確かに!教育効果という面では素晴らしい着眼点だなぁ、と思いました。パラリンピックを皆で見る、というのも素晴らしい教育になると思うんですが、こういった状況でやるかどうか、というのを議論するのが一番重要なことかもしれませんね。まずは「現地で観戦したいかどうか」というのを含め、子どもたちと一緒にみんなで議論するのもひとつの方法かもしれませんよね。


神庭さん:あぁ、それは有りかもしれませんね。大人たちがやるだけじゃなくて。それは良い教育になると思いますよ。


ユージ:ね!



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