「2017年本屋大賞」を大予想!(2017/2/16)
木曜日は、「カルチャー」。
まずは、紀伊国屋書店 和書一般の
ウィークリーランキング ベスト3をご紹介!
第3位 『 自分でできる! 筋膜リリースパーフェクトガイド/竹井仁(自由国民社) 』
第2位 『 人生の「真実」に目覚める時/大川隆法(幸福の科学出版) 』
第1位 『 白石麻衣写真集 パスポート(講談社) 』
そして今日は、4月に発表される「2017年本屋大賞」のノミネート10作品から、オススメの小説を文芸評論家の杉江松恋さんに伺いました。
最初の小説は、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷(幻冬舎)」。こちら、杉江松恋さんが直木賞受賞を言い当てた作品です。
今回の10作品の中で2016年を代表する作品だと思っているのは、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」なんですけれど、青春小説でもありますし、音楽に関する才能を扱った小説の中でも、描かれた事がないタイトルですね。これは、浜松市が主催している国際ピアノコンクールをモデルに決勝までを描いた作品で、4人のピアニストがその中で才能を開花していくんです。読んでいると色んな形でその人が才能を開花していく場面が描かれているので、自分の中にあるものが刺激され、これからの人生を歩む上で前向きな気持ちをもらえる様な感じになります。とても読後感が良い小説。ピアノの演奏って、音楽ですから文字に直すのは非常に大変なことだと思いますが、ありとあらゆる手を尽くして、美しいピアノの演奏はどういうことかということが描かれていて、そのバリエーションだけでも楽しめると思います。
続いての小説は、森見登美彦さんの「夜行(やこう)(小学館)」。
夜行というのは、怪談の小説なんですよね。“やこう”もしくは“やぎょう”どちらか?読み方はカバーに書いてないのですが、一連の連作の大河がありまして、各編のモチーフとなっているのです。色々な怪奇現象が起きるんですけれど、傍らにはその「夜行」という作品が必ず飾られている、と。で、ある女性が失踪したという事件があって、何年後かに関係者たちがもう一度集まって、過去の話をしているうちにどんどん怪しいことになっていくという、非常に雰囲気のある良いホラーなんですよね。失われた青春、止まってしまった青春の時間の針が戻って動き始める時、というのがテーマとしてあると思うのです。で、もうひとつは色んなパターンの男女の関係が恐怖と言いますか、影がある描写とともに語られていく、という側面があるんですね。
3冊目は、森絵都さんの「みかづき(集英社)」。
みかづきというのは、昭和36年から平成にわたっての数十年に及ぶ、朝のテレビ小説のような非常に長いドラマなんです。理想の勉強の教え方みたいなものを思いついた男女が、学習塾を開いて奮闘していくという話で、大河小説として非常に面白いですね。三代に渡るのです。最初のゴロウとチアキという男女から何年後とかに、こうベクトルが続いていくのです。長い物語で登場人物も多いのですが、ひとつ1つのエピソードは完結して読めるようになっているので、そういった意味ではストレスなく読み進めることが出来ると思います。
最後は、原田マハさんの「暗幕のゲルニカ(新潮社)」。
原田マハさんは美術業界になじみのある方なんですけれど、非常に影響を受けたピカソの「ゲルニカ」という作品をテーマに、どういう風にこの作品が描かれ、美術館に置かれるようになったのか?ということと、現代の色んなところで戦争の影が忍び寄っているところもあったりして、それとこの「ゲルニカ」が描かれた当時のことを重ね合わせて書かれていて、現代の世情を描いた小説としても、大変優れていると思いました。ピカソのゲルニカの展覧会をしようという話が起きるのですが、実現するために動くと、政情などが絡んで上手くいかないんです。その実現のために美術館で働くのがこの作品の主人公です。サスペンスというのがひとつあるんでしょうかね。なんですが、そのピカソという非常に恋も多く、才能にも恵まれた特殊な人物が出てくるので、伝記的な要素もちょっとあります。
以上、文芸評論家の杉江松恋さんがオススメする4冊。皆さんはどの作品を手にとってみますか?「2017年本屋大賞」は4月11日に発表されます。
今日は「2017年本屋大賞」ノミネート作品の中から、文芸評論家の杉江松恋さんがオススメする小説をご紹介しました。