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紀伊國屋書店 文芸ベストセラー ベスト5(2015/7/16)

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木曜日は、「カルチャー」。


今日は、紀伊國屋書店の最新デイリーランキング
7月14日付の『文芸ベストセラー ベスト5』をご紹介します。



第5位【 あの家に暮らす四人の女 】三浦しをん(中央公論新社)

第4位【 ぼくは愛を証明しようと思う。 】藤沢数希(幻冬舎)

第3位【 君の膵臓をたべたい 】住野よる(双葉社)

第2位【 教団X 】中村文則(集英社)

第1位【 火花 】又吉直樹(文藝春秋)


1位は3月に出版され、今回の芥川賞候補作にもなっている、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんのデビュー作「火花」でした。そのあらすじは…


売れない芸人・徳永は、師として仰ぐべき先輩・神谷と出会う。奇抜な発想の天才でありながら人間味溢れる神谷と、その神谷を慕う徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩むふたり。あるとき神谷は、徳永に「俺の伝記を書け」と命令します。それによって彼らの人生はどう変転していくのか…。


又吉直樹さんの「火花」を高く評価している、文芸評論家で聖徳大学文学部教授の重里徹也さんにお話を伺いました。


作家としての又吉直樹さんの魅力として、ある種の小説の系譜というか、例えば夏目漱石や太宰治、あるいはドフトエスキーといった作家が挙げられると思うんですが、人間は何のために生きているのか、人間の美しさとは何なのか…みたいなところをはっきりと見据えて描いている、非常に視野の深い作家だと感じました。芸人の方が書いた小説とは思えない出来映えです。
「火花」を読んだ誰もが印象的に感じると思うのが、その書き出し。熱海の花火大会の日に漫才をしていて、その前を観光客がどんどん通り過ぎていく…この場面から始まって「笑いとは何か」ということが少しずつ深められていきます。会話をしながら、あるいは観客の反応を描きながら、その中で主人公は成長していく訳ですけれど、だんだん笑いというものの本質が見えてくる、そういう中で物語が深まっていくと感じます。
非常に印象に残ったシーンのひとつに、漫才の中に神様を出してはいけないということを先輩に教わり、本人もそれを納得するシーンがあります。どうして神を出してはいけないか?先輩は「自分たちが信じていないものを漫才に出すと、聴衆の心を打たない」このあたりは非常に面白い芸術論みたいになっているように感じました。全体の内容としては先輩の軌跡、そしてそれに接した主人公の心の成長、そのふたりの変化や「笑いとは何なのか」といったことを通して、人間というのは悲しくも面白い存在だという風に伝わってくるのではないでしょうか。

「火花」は今夜選考会が行われる「芥川賞」の候補作でもありますが?


「芥川賞」は、世界でもあまり例のない新人発掘システムだと思います。学閥や門閥、出身も国籍も関係なく、小説をフラットに読んで、そして引き上げる登竜門として非常に優れた文学制度、文芸システムだと考えています。この「火花」という作品が芥川賞を受賞する可能性は…非常に難しいことで、またこういうことを数字でいうのも恐縮ですが、たぶん6割…60%くらいの可能性で受賞するのではないかと考えています。
この作品の力を評価する選考委員は必ず何人かいます。その人たちが頑張って、いかに他の選考委員を説得できるかが受賞のカギとなってくるでしょう。

第153回芥川賞・直木賞の選考会は、築地の料亭「新喜楽」で行われます。いったい誰の作品が受賞するでしょうか?
今日は紀伊國屋書店『文芸ベストセラー ベスト5』をご紹介しました。