本の雑誌が選ぶ40年の400冊 編集部編ベスト3(2015/5/28)
木曜日は「カルチャー」。
『本の雑誌』6月号が創刊40周年を記念して
「本の雑誌が選ぶ40年の400冊」という特集をしています。
編集部が選んだ最近40年の40冊に加え、執筆陣が
9つのジャンルで40冊を選び、合計400冊を紹介する企画。
今朝はそのうち編集部が選んだ40冊のベスト3を
浜本茂編集長のコメントと共にご紹介します。
『本の雑誌』は創刊30年のときにも「30冊」
創刊100号のときには「100冊」を選ぶ企画をやっていて
そうした常連作品は避けつつ、編集部の方が本を持ち寄り
ざっくばらんに決めたそうですが、ジャンル・作品ともに
バラエティに富んだ結果となっています。
第3位【 オシムの言葉 】木村元彦(文春文庫)
名将の秀抜な語録と激動の半生。2005年に当時のジェフ市原を優勝に導き、2006年から2007年11月に病に倒れるまで、サッカー日本代表の監督を務めたイビチャ・オシム氏。数々の名言の背景にあるものとは?こちらは文庫化に際し、大幅加筆されています。
浜本編集長「これはもともと集英社から刊行されていたものが、文春文庫に移っても販売されているくらいの一冊です。編集部に浦和レッズの年間シートを持っているくらいの熱心なレッズサポーターがいまして、その彼がこの会議のときに40冊くらい本を持ってきたんですよ。その一番上にあったのがこの本で、これはサッカー本というよりも、世界の中の日本人ということを考えさせられる一冊なのではないかと思います。これはもう哲学書ですよね。」
第2位【 猫を抱いて象と泳ぐ 】小川洋子(文春文庫)
「大きくなること、それは悲劇である。」…この警句を胸に、11歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指す。その名もリトル・アリョーヒン。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、自分の姿を見せずに指す独自のスタイルから、いつしか“盤下の詩人”と呼ばれ、奇跡のように美しいチェスの指し方を生み出す、という作品です。
浜本編集長「小川洋子さんの場合はですね…何でも良かったといえば良かったんですよ。映画化された【 博士の愛した数式 】ですとか…。小川洋子さんの世界というものがあって、自分の身体がきれいになっていく錯覚を受けるんです。自分が“今のままじゃイカン!”と思うんですね。頭のてっぺんから足の先まで血液が入れ替わっていくような深い感銘を受けるんですよ。いつも読むたびに!自分の心を綺麗にしてくれる作品だなぁと思いますね。」
第1位【 ビブリア古書堂の事件手帖 】三上延(メディアワークス文庫)
古書に関しては並外れた知識を持つが、極度の人見知りという美しい古本屋店主・栞子が、客が持ち込む古書にまつわる謎を解いていく。日常の謎系のビブリオ・ミステリ(=本や本の内容が絡むミステリー)。現在6巻まで発売されています。作中で扱われる古書は実在するもので、それらの書籍の売り上げが伸びたり、絶版本が復刊されるなどの影響を与えています。
浜本編集長「これは古本屋さんの謎解きがあったり、恋物語があったりと、古本を題材にした大ベストセラー作品なんですが、ひとつは栞子さんという店主のキャラクター、あとは作品に登場する古本の古書としての価値ですとか、登場人物にとってどれだけ価値のある本なのかということを、三上延さんの視点を通して描かれている…これが非常に“古書マニア”の方たちにも正しい本だ、という認識で受け入れられているんです。」
中西さんはこの3冊のうち、やはり第3位の【 オシムの言葉 】に一番感銘を受けたようで、「僕が思う一番オシムらしい言葉は“リスクを冒して攻めろ”ですね。当然ながら、リスクを冒さないと前には行けないわけですし、前に行けなければ点も獲れない訳ですからね。」とおっしゃっていました。
上位3つの作品はいずれもジャンルの違う本がランクインしていますので、3冊全てを読み比べてみるのも楽しいかもしれませんね。
今日は『本の雑誌が選ぶ40年の400冊 編集部編ベスト3』をご紹介しました。