好きなアニメ作品 トップ3(2014/3/20)
木曜日は、「カルチャー」。
今日は、雑誌「日経エンタテインメント」が昨年
日本のテレビアニメの礎「鉄腕アトム」の放映から
50周年を記念して行ったアンケート
【 好きなアニメ作品 】のトップ3をご紹介します。
第3位『 となりのトトロ 』
第2位『 ドラゴンボール 』
第1位『 機動戦士ガンダム 』
以上、雑誌「日経エンタテインメント」が行った【 好きなアニメ作品 】のトップ3でした。
このアンケートは、1960年代から90年代のテレビアニメ、発売されたOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)、劇場公開作品から200作品を選出し、25歳〜54歳の男女計1000人に好きな作品を聞いたものです。
そして今日は1位にランクインした『機動戦士ガンダム』について、現在45歳でまさに“ガンダム世代”のアニメ評論家・藤津亮太さんに解説していただきました。
藤津さん:数あるシリーズのうち、最初に放映された1979年の『機動戦士ガンダム』は、月の裏側にある“サイド3”というスペースコロニーが「ジオン国軍」と名乗り、地球連邦軍を相手に独立戦争を始め、この戦争に15歳の少年アムロ・レイが巻き込まれ、たまたま乗ったガンダムで仲間たちとともに、生き延びるため地球を放浪する…というストーリーです。
中西さん世代にはおなじみのこのストーリーも、10代や20代となると、名前は知っていても見たことがない方も多いのではないでしょうか。そこで今日は、藤津さんに「ガンダムの素晴らしさ」を知るための3つのポイントについて伺いました。
■等身大の主人公
藤津さん:それまでのロボットものの主人公は、元気が良くて非常に好戦的なタイプのキャラクターが多かったのですが、アムロは内向的で、趣味はパソコンを作ること…というようなインドアな主人公。その主人公がやむにやまれず戦争の中に放り出されることで、色々な人と出会い接点を知っていくというストーリー展開が、当時の10代…現在の40代くらいの人から共感を呼びました。
その後の“内向的な主人公”というと、代表的なのは「新世紀エヴァンゲリオン」の碇シンジのように、ロボットものの主人公のひとつの形として受け継がれています。どこにでもいる人が、何らかの理由で戦いに巻き込まれるというのは、その時々の10代の共感を呼んでいます。
■国家間の戦争
藤津さん:それまでのロボットアニメは、敵が異星人や特殊なところからやって来た“人類ではないもの”、あるいは悪の科学者や犯罪組織などかなり毛色の変わった人たちが多かったが、ガンダムはそれを“国同士の戦争”で、両方ともそれぞれの言い分がある、という状況で描いています。
そして、その道具として巨大ロボットを「モビルスーツ」という名前に変え、戦争の道具として少し突き放したような、客観的な書き方にしたことにより、世界観にリアリティを獲得して描かれています。大事なのは、国家間の戦争でもイデオロギーそのものを説くのではなく、自分とは遠い戦争にノンポリな主人公が巻き込まれるという構成で、70年代後半にガンダムが作られたときの時代背景に対応していると思います。
■時代の空気
藤津さん:ガンダムが放送された1979年頃というのは、PCが急速に普及し始めたり、インベーダーゲームが大流行したり、ウォークマンもヒットしています。これらの共通点は「個人で楽しむ趣味」のもの。
それまでの時代は「人間は何か理想を求めて、政治的な活動をすべきだ」という政治的な時代がありましたが、それが“個人の趣味”にこだわって生きた方が楽しいのではないか?という生き方が浮き上がってきた時代です。そのときに等身大の主人公が戦争に巻き込まれながらも、自分が幸せに生きるため、生き延びるために戦う…という話の展開をしたガンダムは時代とシンクロする形でした。
村上春樹さんの「風の歌を聴け」もこの時代で、政治の季節における個人の気持ちが描かれている小説なので、当時の若者の中で色んな細部が理解できるという感覚を持っていました。
実写映画の世界では、全年代でアンケートをとると「七人の侍」や「東京物語」といった作品が上位に入ってきますが、「機動戦士ガンダム」というのは、アニメーションの歴史を見たときに、それと同じくらいに価値のある存在感を持った作品だと思います。
“ガンダム世代”の皆さんはもう一度、若い世代の皆さんは改めてこの作品に触れたくなったのではないでしょうか。
今日は【 好きなアニメ作品 】トップ3をご紹介しました。