ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2015年8月16日のショートストーリー

「風船は、糸が切れたら旅が始まる」

[ストーリー]

久しぶりに来た地元の夏まつりは
当時と変わらない賑わいを見せていた。

雑踏の中で見かける懐かしい顔ぶれは
家族を連れてとても幸せそうだ。
この町に残っていたら、
自分も今頃はそんな風になっていたのかな？

仕事で海外を飛び回り、
気が付けば３０代半ばを超えて独り者。
充実していないわけじゃないけど、
なんとなく引け目を感じてしまうところもあった。

その時、金魚すくいの列に、また一つ懐かしい顔を見つけた。
中学生の頃の担任の先生だ。

「風船は、糸が切れたら旅が始まる。」

突然、先生が卒業する時にくれた
はなむけの言葉が甦ってきて、我に返った。
きっと。
あの時、先生の手から離れた僕たちは
それぞれの旅をしているだけなんだろう。
なんだか、妙な焦りがふと落ち着いた気がした。

孫の手を引く先生は
今でもあの頃のままのやさしい笑顔を見せていた。

兵庫県「ゆーみん」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・杉山錠士

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