ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2015年3月29日のショートストーリー

「春は自らの心の中にある」

[ストーリー]

もともと季節の移り変わりに敏感な方ではない。
でも、４月を目前にして、
桜が咲き始めていることにも気づかないほどなのは
初めてのことだ。

妻は、産まれたばかりの息子と二人で
やっていけるのだろうか？
僕は生まれて初めて海外で暮らすことになる。
いわゆる単身赴任というやつだ。
急に決まったこともあって、まだ整理がつかないままだ。

「もう、春だね。」

唯一の救いは、妻が笑っていることだ。
本当は不安なはずなのに、一瞬だって暗い顔を見せることはなかった。

いよいよ出発の時だ。
ふーっと息をついて、靴を履いた。

「春は自らの心の中にある」

玄関まで見送りに来た妻が言った。
小学校の先生にそう教えられて以来、
どんなに大変な時も自分の中に春を見つけては
前向きに生きてきたという。

なんだか、大丈夫な気がして、笑みがこぼれた。
顔を上げると目の前には一枚、桜の花びらが舞っていた。

熊本県「のっぽ」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・杉山錠士

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