ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2013年6月23日のショートストーリー

「夢は逃げない。逃げるのは自分」

[ストーリー]

都内のホテルで久しぶりの同窓会。中学時代から、早や15年。
みんな三十路を迎え、それなりに歳を重ねた顔つきをしていた。

「加藤、ひさしぶり！」と声をかけてくれたのは、沢村だった。「これ、よかったら」と手渡してくれたのは、木でできたネームプレート。生まれたばかりの娘の名前が刻まれている。

「子供、生まれたって聞いたからさ」とはにかんだ笑顔に面影がよぎる。

聞けば、沢村は三年で会社を辞め、ずっとやりたかった木のおもちゃ屋さんを始めたらしい。

「通販で地道に売ってるんだけど」

そういえば、中学のときから、ものを作るのが好きで、夏休みの宿題で木のあやつり人形をつくってみんなをあっと驚かせた。

「好きなことが仕事になっていいな」と本音を言うと、彼は、
「高校のときの先生がさ、こんなふうに言ったんだ。
　『夢は逃げない。逃げるのは自分』。
会社に勤めながら、ずっとその言葉が心に残ってたんだよな」

いい笑顔だった。娘の名前が入ったネームプレートは、優しくてあったかい木の香りがした。

埼玉県「あきちゃん」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・北阪昌人

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