ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2013年4月28日のショートストーリー

「無欲という欲を持て」

[ストーリー]

ああ、また落ちた。
一次審査を通過したひとの名前が載った文芸誌を床に投げる。
絵本作家への登竜門。この賞が欲しかった。
賞さえとれれば自分の書いたものが本になり出版される。
でも、ダメだった。会社勤めの合間をぬって書いてきたのに・・・。

落胆してソファに寝転がる。
ふと、高校時代の先生の言葉がよみがえってきた。

『無欲という欲をもて』

ズシンときた。そうだ。そもそも僕が絵本を書くようになったのは、海外単身赴任でめったに逢えない幼い子供のために、自分で作った物語を聞かせたいという思いからだった。
先生は言った。無欲こそがブレない自分をつくる。
そうだよね、先生。我が子の笑顔のために書いていたのに、いつしか賞をとりたいという欲で気持ちがブレていた。

僕はまた気持ちをあらたに、子供に語りかけるようにパソコンに向かった。

ありがとう、先生！

東京都「みーすけ」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・北阪昌人

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