ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2016年6月19日のショートストーリー

「型にはまらないで、しなやかに生きよう」

[ストーリー]

小さな指が奏でる、ショパンの「雨だれ」。
ぎこちない指の運びを見ているうちに、遠い記憶が蘇った。

私は3歳からピアノを始めた。
最初は楽しかったけど、小学校も高学年になると課題も増え、
徐々にやる気をなくしていった。

そんな私の胸中を察したのか、
ある日、父がジャズ・コンサートに連れて行ってくれた。
その時の驚きと言ったら…。

ルールに縛られない自由な演奏、ピアニストの嬉々とした表情。
目の前の靄が一気に晴れた。

父は、恩師から学んだという大切な言葉を私にくれた。

「型にはまらないで、しなやかに生きよう」

私は今、雑誌のライターをしながら、
近所の子供たちにピアノを教えている。
その生活がとても楽しい。

私なりに、音楽の楽しさ、クラシックの魅力を伝えたい。

そう思いながら、今日も、小さな指先に語りかける。
型にはまらなくていいんだよ、と。

東京都「いぶちゃん」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・市川幸宏