2025.01.14
テクノロジーの力で医療の可能性を広げていく
ONE MORNING「 The Starters 」
火曜日のこの時間は社会に風穴を開けようと取り組む若き起業家をお迎えして
そのアイデアの根っこにあるものや未来へ向けたビジョンを伺います。
今週のゲストは先週に引き続き、株式会社マイシン 代表取締役の原聖吾さんです。
原 聖吾さんは大学の医学部を卒業後、研修医を経験。内閣特別顧問の秘書やシンクタンクを経て、マッキンゼーに入社。
ヘルスケア分野のコンサルタントとして活躍し、2015 年にマイシンの前身となる情報医療を創業されています。
先週は主な事業について伺いました。いち早く展開したオンライン診療を中心に、医療の分野で革新的なサービスを提供されていると。さらに保険も手がけていらっしゃるということですね。どんな保険なんですか?
「健康な方が病気に備えて入るものが保険なんですけど、私達は一度病気になった人が入れる保険というのを出しています。例えば一度がんになった方、乳がん、子宮頸がん、卵巣がんの経験者専用のがん保険というのを出していて、一度がんになった方が再発をする不安を抱えていて、それを補償する保険というのを作っています。」
今までは一度かかってしまった方というのは保険に入りづらかったんですか。
「そういう方は一般的には保険は入れないか、5年ぐらいたって結構保険料の高い保険に入らざるを得ないという選択しかなかったんですけれども、そういう人たちの不安がやっぱりすごく大きいなというのを、我々も医療の事業をやってる中ですごく感じることが多くて、こういう方達向けに保険を作れないかということで作ったのがこの保険です。」
保険会社、今いろんなとこありますけども、がんに既になったことがある方にやっぱ保険を用意できないというのは理由があると思うんですね。
「そうですね、今までは古典的な保険のデータを使って作っていたんですけど、我々は医療の事業をしているので、もうちょっと臨床医学に近いデータを活用して、これまで作れなかった保険商品というのを開発してきています。こういう医療の領域のノウハウがここに生かされています。最近は先ほどの女性系のがんの保険以外にも胃がんや大腸がんの再発保障する保険など、がんの領域をいろんなラインナップを広げていっています。本当に届けた方にはものすごく感謝されていて、自分は保険なんてもう入れないと思っていたんだけども、ようやく保険に出会えたとすごく感謝されている保険です。」
ということで、今週は会社を創業される前後のお話伺っていきたいと思います。原さんは東京大学の医学部のご出身で研修医もされていたそうなんですけれども、このままお医者さんになろうというふうにはならなかったんですか?
「そうですね、私は研修医はやったんですけれども、元々医学部のときに自分が体を壊した経験があって、顔が麻痺するという病気になってしまってですね、これは直らないかもしれないというようなことも言われて、そういう中で自分がやりたいことをやりたいときにやるのが重要だなと思ったのが一つと、あとは人が病気や死に直面したときに後悔のない生き方をしていくような、何かそういう世界を作りたいなということで、あんまり今までの仕組みにないやり方で世の中の医療の仕組みを変えていきたいなと、そういう思いを持つようになったというのがきっかけです。」
研修医も経験されて、そのときは将来お医者さんとして病院で働くかもという意識は強かったわけですね。
「元々医学部に行ったときには、医者として働こうと思って言っていたんですが、医学部での経験だったり、あとは研修医で見ていた患者さんでも、やっぱりこの病気に向き合ったときになんで自分がこういう病気になってしまったんだろうかとか、こんな病気になるんだったらこんなふうな生き方してなかったのになとそういう患者さんを多く見る中で、もう少し臨床医として関わる以外にできることってあるんじゃないかということで、キャリアを変えていったという経緯があります。」
ただそこから起業するとスタートアップに興味を持つきっかけというのは何かあったんですか?
「学生の頃にちょうど2000年代の初頭だったんですが、大学でちょうどベンチャーがいろいろ盛り上がってるタイミングで、大学でもベンチャーの起業家を育てようというような企画があって、そこで最初に参画をして、スタートアップを立ち上げるようなあの方々ともご一緒してですね、新しい価値を生み出していくということが面白いな、そういうチャレンジをいろんな仲間とやっていくのがやりがいがあるなということで興味を持つようになりました。」
医療に関わることで何かやりたいという気持ちがあったんですか?
「そうですね。やっぱり私は医療に興味がずっとあって、その領域で仕組みを変えていっていうことをしたいなと思ったので、そういう意味ではすぐ起業に至ったわけではなくて、まず制度作りとか政策作り、こういうものが仕組みを変えるのに重要だろうということで、研修やった後は実は医療政策の仕事を何年かしていました。医療っていろんな規制があったり、制度上の仕組みがあったりするので、この仕組みをもうちょっと良くしていくことができれば、医療の仕組みって良くなるんじゃないかということを最初考えて、そういうところから仕事を始めたというキャリアです。」
経歴で僕が気になったのはマッキンゼーに入られるんですね。コンサルで有名なすごい所ですが、そこに入られたのはどうしてだったんですか?
「そうですね、政策の仕事をしていく中で、やっぱり新しい価値をゼロから生み出していくっていうところがすごくやりがいがあるし意味があるなと思って、そうするとビジネスという切り口が重要だなと思ったんですけど、いかんせんあんまりビジネスについて経験も全くなかったので、そういう観点で自分をもう少しビジネスの領域でちゃんとやれるようにするにはどうしたらいいかということを考えたときに、コンサルティング会社がそういう場として適してるんじゃないかということで、コンサルティング会社に行きました。」
やっぱ軸にあるものってのは基本変わってないんですね。
「ずっと医療の仕組みを良くしたいということを模索しながら政策であったりコンサルティングであったりということを経てきています。」
スタンフォード大学のビジネススクールに留学という情報を目にしました。
「スタンフォード大学はやっぱりこの事業を始めるというアントレプレナーシップの聖地のような場所で、そこでいろんな方が来ていて、みんないろんな経歴あるんですけども、そこから新しく何かを作っていこうということに向き合ってる方々が多くて、そこで本当に挑戦する価値を感じました。何かを成し遂げるということよりも、何か難しいチャレンジに挑戦しているということ自体が価値だと、そこにすごく感化されました。」
改めてマイシンを創業するきっかけというのを教えていただいていいですか?
「そのコンサルティングの会社を経て、私自身臨床医・政策・ビジネスといくつか経験をして来ていた中で、元々大学時代にも経験した自分で事業をやるということ、そこにおいて自分の経験としても、あとは一緒にやる仲間としても集まったなというようなタイミングがあって、それで2015年にこのマイシンという会社を立ち上げるってことになります。」
今でこそオンラインがものすごく身近なものになりつつありますが、始めた当初は2015年ということで、当時は病院の先生たちの理解がなかなか得られなかったということですが、その壁はやっぱり大変でしたよね。
「そうですね、本当に多くの先生方にはこんなものをオンラインで診療なんかできないということも多く言われましたし、ただ救われたのが100人に1人ぐらい、でもこれってやっぱり将来の患者さんのために必要だよねというふうに共感してくださる先生もいて、そういう方々が少しずつ始めて、始めていくと、これってでもいいよねとそういう先生方の考え方も少しずつ変わっていって、患者さんからもこれ必要だよねというような声が増えていって、少しずつ変わっていったかなと思っています。」
コロナを経て医療業界の課題や問題点より指摘されていますけれども、やはり労働時間もね本当に深刻な問題だと思います。こういった課題は今後デジタル化で解決できそうでしょうか?
「そうですね、デジタル化がまさにこういうところは貢献できるところだと思っていて、オンライン診療なんかも医者も時間や場所に依存しないで診療することができるようになるというのもありますし、必要な業務に専念することができるようになる、これで医療の資源が限られている中でも、必要な医療を提供し続けるということができるんじゃないかなと思っています。」
最後に、これからの夢を教えてください。
「我々の会社でもビジョンで掲げているんですが、全ての人が納得して最期を迎えられる世界を作りたいということを本当に思っていまして、やっぱりいろんな方が長生きしたり、病気とともに暮らすようなことが増えてくる中で、本当に納得して最期を迎えられるように生きていく、こういう世界を実現していきたいなと思っています。」
株式会社マイシンの原聖吾さんにお話を伺いました。ありがとうございました。