NAGOMI Setouchi

2019
08/17

瀬戸内国際芸術祭 edition
Setouchi Triennale 2019
「豊島編②」

もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」

瀬戸内国際芸術祭2019の夏会期が始まりました。瀬戸芸スペシャル・ナビゲーターの前田エマさんは、瀬戸芸の舞台となる島や町、集落を訪れ、取材しました。今週も、豊島を旅します。
「瀬戸内国際芸術祭2019」

「テシマサイト」主宰、豊島の名ガイドであり、瀬戸内の島々のメディア・コーディネイターとしても活躍する、森島丈洋さんの案内で、前田エマさんは「瞳保育所」へやって来ました。
「テシマサイト」

お休みの日でしたが、三谷恭子園長が迎えてくださいました。この2月から新しい園舎になりました。日本の地方と呼ばれる地域、そして瀬戸内の島々でも、少子高齢化が進んでいます。かつて島にあった学校が休校、廃校になったり、複数の学校がひとつに統合されたり。小さな子供の姿を見なくなってしまった島もあると言います。豊島も、ずっと子供の数が減っていて、保育園も休園の危機を迎えたそうですが、ここ数年、島への新しい移住者や、島に戻ってきた人たちもいて、子供が少しずつ増えてきていると言います。昨年、「瞳保育所」には、5人の新しい子供たちが入園しました。三谷さんも、6年ほど前に、神戸の保育園から豊島のこの場所へと出向でやって来た移住者。「自然が豊か、美しく、とても暮らしやすい場所です」と語ります。「地元の、地域の人たちみんなが子供たちを愛し守っているので、やさしい子供たちが育っています。素晴らしい環境ですね」

すぐ目の前が小学校。「幼稚園の子供たちが、ちょっと年上のお兄さん、お姉さんたちを身近に見られる。元気で楽しそうに、そしてがんばって学校生活を送っているのがわかります。それは、保育所の子供たちにとって、とてもいいことだと思います。子供たちはいつも園庭から小学校の様子を見ています。『あ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、がんばっているから、自分たちもがんばろう!』って思うんですね」

新しくなった園舎は、ほんとうに心地よさそうです。

園長の三谷恭子さん、貴重なお時間、おはなしを、ありがとうございました!

ランチは、「食堂101号室」へ。地産地消、島の野菜や果物、肉や魚を素材とした、ナチュラル志向の手作りごはんがとっても美味しい古民家食堂です。
「食堂101号室」

庭も素敵な島の古民家、その1階が食堂になっています。がらがらっと引き戸を開けて中に入ると、まるで誰かの家にやって来たような気分。土間で靴を脱いで畳の部屋へ上がります。敷居や引き戸はすべて開放されて、広々とした和風のリビングルームが奥まで広がっています。木枠のガラス窓の向こうに庭を望み、座布団の上に腰を下ろすと、思わずほっこり、ゆったり、和みます。「食堂101号室」は、初めて訪れてもどこか懐かしく、そして、真新しい場所。そして、自然志向の美味しいご飯を味わえます。

大阪に暮らしていた長屋諒子さん。「一度、島という場所に暮らしてみたかった」と、豊島に移住してこの店を開きました。島でとれるものにこだわる、長屋さん流の家庭料理。長屋さんは言います、「食べることは生きること。大切な時間とエネルギーを共有して、一緒に何かプラスになれたら」。

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