- 今月の旅人
- 小宮山雄飛(ミュージシャン)
ミュージシャン、ホフディランのボーカル&キーボード担当、そしてカレー研究家でもある小宮山雄飛さんが、瀬戸内を旅していきます。今回の旅先は、広島県の尾道、百島、大崎上島、大崎下島、竹原、西条などなど。アートを楽しみ、牡蠣に舌鼓を打ち、オーガニック・レモンの農園を訪ね、日本酒の酒蔵へ。
もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。
ミュージシャン、ホフディランのボーカル&キーボード担当、そしてカレー研究家でもある小宮山雄飛さんが、瀬戸内を旅していきます。今回の旅先は、広島県の尾道、百島、大崎上島、大崎下島、竹原、西条などなど。アートを楽しみ、牡蠣に舌鼓を打ち、オーガニック・レモンの農園を訪ね、日本酒の酒蔵へ。
町には、煉瓦造りの煙突がいくつも建っています。
ここは広島県、東広島市の西条。西条は「日本三大酒処のひとつ」と言われてきました。標高250メートルから300メートルの盆地に位置し、町の背後には、豊かな森を抱く龍王山があります。「西条には、酒造りに最適な気候風土がある。ここは、日本酒作りの原点とも言える、理想郷だ」と、地元の人たちは胸をはります。ここ西条盆地で酒造りが始まったのは、1650年頃と言われています。そんな酒の都、西条へ、「無類の酒好き」を自認する小宮山雄飛さんはやって来ました。
「西条酒蔵通り」を歩く小宮山雄飛さん。
まだ午前中ですが、とりあえず目についた酒蔵に入って……
駆けつけ一杯!(仕事です)
酒蔵通りから一歩入った小径沿いにも、「酒」を感じさせる仕掛けが次々と。
酒蔵の入り口には必ず「杉玉」が飾られています。杉の葉(穂先)を集めてボール状にしたもの。はじめ杉玉は蒼々としています。むかし、蒼い(新しい)杉玉をかけることは「搾りを始めました」という意味だったそうです。つまり、蒼い杉玉を酒蔵の入り口にかけると、「今年も新酒ができました」という合図になります。蒼い杉玉はやがて枯れて茶色になっていきます。町の人々はそうやって色が変わっていく杉玉を見て、「新酒の熟成具合」を知り、自分にとっての「今が飲み頃」というときに、酒を買いに行ったのだとか。杉玉は、「酒林(さかばやし)」とも呼ばれるそうです。
試飲のハシゴで酔っ払ってしまう前に……と小宮山さんがやって来たのは、純米酒にこだわる酒蔵「賀茂泉酒造」。
純米醸造にこだわる賀茂泉酒造株式会社、取締役で、蔵の4代目となる、前垣壽宏(まえがき・かずひろ)さんが、小宮山さんを案内してくれました。なんと、同じ大学出身、小宮山さんとは先輩、後輩の関係であることが判明! 2年違いですから、学部は違えど、同じキャンパスでニアミスしていた可能性があります。なんというご縁。
賀茂泉酒造の杜氏、新谷寿之さんにもおはなしを聞きました。
蔵の屋上へと小宮山さんを案内する、前垣さん。西条盆地を見渡しながら、「やはり、水がキーワードなんです」と語りました。最高の酒を醸造するために欠かせないのが、純粋な水と米。米は水がなければ育てられないので、何よりもまず水が最初。前垣さんは言います。「あちらを見ると山が見えますよね。龍王山(りゅうおうざん)の名で地元民に親しまれている山です。山は雲を集め、雨を降らせます。緑豊かな山に雨が降り注ぎその台地へ染みこんでいきます。やがて、龍王山の伏流水が井戸水となり、この西条の町に湧き出てます。西条に、酒造りに適した純粋な水が豊富にある由縁です。さらに水は川となって流れ、瀬戸内海へと注ぎ込みます。栄養をたっぷり蓄えた川の水が海へと注ぎ、牡蠣や小魚を育てるのです」。小宮山さんはそのおはなしを受けてこう言いました、「すごい循環! つまり水が、酒と、酒の肴と、両方を作っている!」
ということで、小宮山さんお待ちかねの試飲タイム!
仕事として……
仕事なのです!
美味しいお酒との出逢いがありました。そしてそれは、美味しい水との出逢いでもありました。
杜氏の新谷寿之さん、賀茂泉酒造株式会社取締役の前垣壽宏さん、貴重な時間とおはなしを、ありがとうございました。
1973年生まれ。ミュージシャン、ホフディランのボーカルとキーボード。無類のカレー好きでカレー研究家でもある小宮山さんは、この夏、渋谷に一坪の小さな小さなレモンライス専門店「LemonRiceTOKYO」をオープン。レモンライスとは、レモンが香る爽やかなライスに、オニオンアチャール、バジルピクルス、香菜、エキゾチックチリソース、カレーソースなどをかけあわせた、まったく新しい食べ物なんだとか!
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