- 今月の旅人
- 平野啓一郎(小説家)
小説家の平野啓一郎さんが瀬戸内を旅します。旅の舞台は、兵庫県、淡路島。島で生まれ育った人、外から移住してきた人、島にルーツのある人……。いろんな人たちが交差して、淡路島で生まれているいろいろなこと、そして、様々な場所。平野啓一郎さんが、「今、淡路島に生きる人たち」のライフ・ストーリーに耳を傾けます。
もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。
小説家の平野啓一郎さんが瀬戸内を旅します。旅の舞台は、兵庫県、淡路島。島で生まれ育った人、外から移住してきた人、島にルーツのある人……。いろんな人たちが交差して、淡路島で生まれているいろいろなこと、そして、様々な場所。平野啓一郎さんが、「今、淡路島に生きる人たち」のライフ・ストーリーに耳を傾けます。
コケコッコー。
純国産鶏の「もみじ」さん、こんにちは。
淡路島北部、育波(いくは)にある、「北坂養鶏場」の直売所へ平野啓一郎さんはやって来ました。
直売所で平野さんを迎えてくれた、北坂養鶏場の二代目、若き代表の、北坂勝さん。お父さんが創業した養鶏場を受け継いだ勝さん、たまごの販売だけではなく、島内外のマルシェに出店するなど、積極的に外へ出て、色々な人たちと関わり合いながら、家業を営んでいます。淡路島の島民の数とほぼ同じ、15万羽の国産の鶏を飼育しながら、たまごの販売もしている、北坂養鶏場で飼育されている鶏は、日本に種があるわずか5%ほどの希少な鶏。「自分が暮らす土地の鶏のたまごをもっと食べて欲しい」、そんな想いを伝えたくて、この直売所をオープンしたそうです。
いろんなことを「しかけている」北坂勝さん。そのひとつが「庭に二羽、にわとりを飼うプロジェクト」。北坂さんは言います、「スーパーでたまごを買うとき、それを見て『鶏が産んだものだ』と考える人は実は少ない。でも、たまごは鶏を飼育してもらうことで、そんな鶏が産んだもので、ふたつと同じ鶏はない。たまごとはいのち、尊いもの。鶏を飼育することでそういうことに気づいてほしい」と北坂さんは語ります。
パッケージが可愛い!
自販機で売られてヒット!
「たまごまるごとプリン」。
「いろんなお誘いを断らないようにしています」と北坂勝さんは言います。「鶏について知りたいなら、どうぞ来てください、知っていることは教えますよ、と伝えます。一緒に何かやりたいと言ってくださったら、会って話を聞いて何ができるか一緒に考える。相手の熱意を感じられれば僕は断りたくないんです。自分の想いを不特定多数の人に伝えるのではなく、熱意ある個人個人へ向けて伝えることを大切にしています。そうやって伝えた情報が少しずつ広がっていけば、その源に共感する仲間ができていくと思うのです。面白い何かが始まると思います。この番組の取材で声をかけてくださったのも、そういうことのひとつだと考えています」。
北坂勝さん、いろんなおはなしを聞かせてくださって、体験をさせてくださって、ありがとうございました!
1975年愛知県蒲郡市生まれ。北九州市出身。京都大学法学部卒業。1999年大学在学中に文芸誌『新潮』に投稿した『日蝕』による第120回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表、各国で翻訳紹介されている。2004年、文化庁「文化交流使」として1年間パリに滞在。2008年より三島由紀夫文学賞選考委員。
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