もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。

尾道水道と呼ばれる川の流れのような海。向島と尾道の間を流れる狭い海峡です。渡船と呼ばれる船が、尾道水道を行ったり来たり、尾道と向島を結びます。乗っている時間はわずか5分程度。

向島の立花にある、井出雄士さんの工房へ行く前に……まずは腹ごしらえを。時間はちょうどお昼どき、お腹が空きました。渡船を渡ってすぐのところにある食堂「ばんや」で、ランチタイム。いただくのはもちろん、「尾道ラーメン」。沖仁さん、尾道をよく知る知人から「尾道で一番うまい！」とすすめられてやって来ました。確かにおいしい！　尾道ラーメンは、店ごとに出汁やスープ、麺など、いろいろあって千差万別なのですが、「ばんや」の尾道ラーメンは、実にあっさりしながらも、じっくり味わい深いスープ、真っ直ぐの手打ち麺も実に美味。大満足の沖仁さんでした。

井出雄士さん、30歳。高校生のとき、アントワープ王立芸術アカデミーの瀬尾英樹氏の卒業コレクションに感銘を受け、ファッションの世界へ。世界各地の民族服を見るために、20歳から6年間、地球上を放浪。60か国以上を旅して回ったそうです。

井出さんの描くデザイン、紋様は、どこか宇宙的でもあります。宇宙人と交信して生まれたデザイン……らしい（笑）。

「アトリエ・アントワープ」のお2人、井出雄士さんと、鳴輪裕子さん。
「アトリエ・アントワープ」facebook

アトリエの真ん前が、青く輝く瀬戸内の海。ものすごいロケーションに、沖仁さんも、スタッフも、びっくり。

コーヒーを飲んでから、沖さんは2人を海辺に誘いました。