- 2018
- 04/21
坂本美雨の瀬戸内紀行
「猫と子供、音楽とアート。男木島、高松、丸亀、春の旅」03
もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。
- 今月の旅人
- 坂本美雨(歌手、音楽家)と、なまこちゃん(愛称)
坂本美雨さんが、愛娘のなまこちゃんと一緒に瀬戸内を旅していきます。人より猫の方が多いと言われる男木島へ。高松では鉄の作家と、ガラスのアーティストに出会います。丸亀の森にある樹木をテーマにした空間では母娘で遊び、丸亀の美術館でおおはた雄一さんとの「おお雨」ライブ。もちろん、讃岐うどんを食べて、瀬戸内の新鮮な魚に舌鼓を打ち、青い海と春の光に寄り添って……。坂本美雨さん、盛りだくさんの春の瀬戸内旅、はじまり、はじまり。
四国、香川、丸亀。坂本美雨さんは、娘のなまこちゃんと一緒に、丸亀の森の中にある「KITOKURAS」へやって来ました。
「KITOKURAS」
樹木に囲まれた木の部屋、ここは気持ちのいいカフェ・レストラン。木のプレートにのったスイーツやカレーライスを味わえます。
丸亀の木材製材所「山一木材」の三代目、熊谷有記さんが開いた「KITOKURAS」、ここは、「木と暮らすいろんなアイディア、ヒントを教えてくれる場所」。熊谷さんは言います、「日本は森の国。国土の実に7割以上が森に覆われています。日本は海に囲まれた島々ですが、同時に樹木が豊かな国でもあります。日本の木の美しさ、逞しさ、便利さ……木の可能性をたくさん感じて欲しいと思って、ここを作りました」。
木の椅子に座って、木のテーブルに向かって、木の器を使って、「ごはんごっこ」。もちろん、木の床に寝転んで絵本を開いてもいいし、木のボードゲームで遊んだり、積み木をしてもOK。大人たちは、カフェで美味しいコーヒーを飲み、熊谷さんとスタッフの皆さんが選んだ選りすぐりの日用品をショッピング、一方、子供たちは、庭で遊んだり、こうして木の部屋で過ごしたり。
こちらは熊谷さんの愛犬、そして山一木材KITOKURASの工場と森を自由自在に行き来して過ごしている「ムク」。そう、無垢の木のムク。なまこちゃん、大きな犬はちょっと怖いみたいです。
熊谷有記さん、楽しい時間をありがとうございました。そして、美雨さんも、スタッフ一同も、(ここへやって来るといつもそうなのですが)たくさん、たくさん、買い物をしてしまいました……。
美雨さんはここで、気になるガラス作品を見つけました。独特の青い色。「これは瀬戸内ブルー。庵治石ガラスから生まれた、瀬戸内の海の色なんですよ」と熊谷さんが教えてくれました。「杉山利恵さん、というガラス作家の方が作っているものです。高松に杉山さんのアトリエとショップがありますよ」。
ガラス作家、杉山利恵(すぎやま・りえ)さん。瀬戸内海の色そのもののような青く透き通ったタンブラー、ワイングラス、皿、置物、小鳥……。香川県産の高級石材でもある庵治石を原料にした「さぬき庵治石硝子」の作品作りをしています。地元香川県高松出身、四国学院大を卒業後、県内のインテリア会社に一度就職。「もともと物作りにずっと興味がありました」と杉山さん。あるとき、丸亀市のガラス工房を訪れ、「これだ」とひらめいたそうです。36歳のときにそれまでの仕事を辞め、東京ガラス工芸研究所へ。その後、富山県でもガラスを学びました。いつしか「自分は瀬戸内の海や山、香川の土地から生まれるガラスを作りたい」と強く感じるようになり、故郷へ戻ります。様々な試行錯誤があり、やがて、この独特の青、生み出しました。故郷の瀬戸内ブルーを表現し続けている、ガラス作家・杉山利恵さんです。
美雨さん、探していたものを見つけました。
杉山利恵さんの人気作品のひとつ、「幸せの青い鳥」。
生まれたばかりの杉山利恵ちゃんの赤ちゃん。2月末にご出産されたそうです。可愛い元気な男の子、名前は「蒼(あお)」。そう、杉山さんが作る瀬戸内ブルーのガラスの色と同じです。自ら「ネコ吸い大妖怪」を名乗る美雨さん、赤ちゃんも「吸い」ます! KITOKURASでは犬のムクちゃんも吸い込んでいました。「可愛い、愛おしいものは、何でも吸うの!」と美雨さん。はい、納得です。