- 2017
- 12/16
世界的マエストロ、指揮者・井上道義の小豆島紀行
「子どもたちの島案内、70年続く小学生オーケストラの奇跡」03
もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。
- 今月の旅人
- 井上道義(指揮者)
世界的マエストロ、指揮者・井上道義さんにとって、初めての小豆島。今回の旅の目的は、いくつかありますが、その最大のミッションは、島の小学生に音楽を教えること。小説「二十四の瞳」の作者・壺井栄の故郷、そしてオリーブとそうめん、醤油や佃煮の島。この島には、他に類をみない小学生オーケストラがあるのです。70年の歴史を持つ、この小さなオーケストラに、70歳のマエストロが特別レッスンを授けます。この島で、井上さんは何を感じ、島のひとたちは、マエストロからどんなプレゼントを受け取るのでしょうか。
道の駅 小豆島オリーブ公園で待っていてくれたのは、苗羽(のうま)小学校の6年生のみなさん。17名なので、『三十四の瞳』。今日は、島にやってきたマエストロに、小豆島の素晴らしさをプレゼンしてくださるのだとか。どことなく、緊張が漂っていますが・・・。
マエストロの少年のような笑顔に、子どもたちの緊張も解けました。まずは、苗羽小学校の紹介。作家・壺井栄ゆかりの学校であること、音楽部が有名なことなど、子どもたちが順番に話します。この日のために、何日もかけてフリップを用意しました。朝の陽射しは柔らかく降り注ぎ、くっきりと影をつくります。
子どもたちが、オリーブの種類について教えてくれました。秋の早摘みのオリーブは果実として、熟したオリーブはオイルにして、食卓に。オリーブ公園には、およそ2,000本のオリーブの木が植えられています。
子どもたちをフォローする、道の駅 小豆島オリーブ公園の佐伯真吾さん。
小豆島の言い伝え「ハート型のオリーブの葉っぱを見つけると、幸せになる!」
子どもたちがマエストロにオリーブで作った冠をプレゼント!
苗羽地区は、醤の郷(ひしおのさと)。ヤマサン醤油の社長、塩田洋介さんが、子どもたちと一緒に、さまざまな醤油の種類について説明してくれました。
『二十四の瞳』映画村の池にいたコブダイに、マエストロはひとめぼれ。「これ、どうやって飼ったらいい?あ、そうか、海水じゃないとダメかあ・・・」
小説『二十四の瞳』の舞台、岬の分教場は、苗羽小学校のかつての田浦分校の校舎。観光名所になっているその教室にて。
苗羽小学校音楽部の歴史についてお話をうかがいました。左から、岡田富久代さん、照下朋栄さん、朋栄さんのお父さんの照下源蔵さん、マエストロ、そして現在の苗羽小学校の校長、川井文代さん。
旅人プロフィール
井上道義
1946年東京生まれ。桐朋学園大学にて齋藤秀雄氏に師事。1971年ミラノ・スカラ座主催グィド・カンテルリ指揮者コンクールに優勝して以来、一躍注目を集める。以来、国内外でめざましい活躍を続けている。“クラシック界の異端児”との呼び名を持ち、古典から近現代までカバーする幅広いレパートリー、ジャズとのコラボ、野田秀樹とタッグを組んだ「フィガロの結婚」など既成概念にとらわれない企画性は、クラシック界に強いインパクトを与え続けている。
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