- 2017
- 12/09
世界的マエストロ、指揮者・井上道義の小豆島紀行
「絶景の寒霞渓、石のコンサートホール」02
もしあなたが鳥になり、瀬戸内の空を飛んでいけば、あまりに美しいその景色に涙を流すことでしょう。青い湖のような瀬戸内海に、ぽこぽこと浮かんでいる島々。陸地には森や田畑が広がり、穏やかな海には漁船が行き交います。瀬戸内を旅すると、あなたは、海と山とがかくも近くに存在し合っていることに気づくでしょう。山が雲を集め、雨を降らせ、森を育み、流れる川は海へと注ぎ込みます。いのちの繋がり、多様性・・・瀬戸内は、そんなことを教えてくれます。シルクロードの命名者として知られる、ドイツの探検家・地理学者、フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンは、明治維新直後、瀬戸内を旅し、日記にこう書きました、「これ以上のものは、世界のどこにもないであろう」。
- 今月の旅人
- 井上道義(指揮者)
世界的マエストロ、指揮者・井上道義さんにとって、初めての小豆島。今回の旅の目的は、いくつかありますが、その最大のミッションは、島の小学生に音楽を教えること。小説「二十四の瞳」の作者・壺井栄の故郷、そしてオリーブとそうめん、醤油や佃煮の島。この島には、他に類をみない小学生オーケストラがあるのです。70年の歴史を持つ、この小さなオーケストラに、70歳のマエストロが特別レッスンを授けます。この島で、井上さんは何を感じ、島のひとたちは、マエストロからどんなプレゼントを受け取るのでしょうか。
瀬戸内国立公園の代表的な景勝地、寒霞渓。旅人・井上道義さんが訪れたときは、紅葉真っ盛り。ロープウェイからの景色は、圧巻でした。
ロープウェイの中には、世界中からの旅人がびっしり。マエストロは、ただ静かに、眼下の色の饗宴に身を任せていました。
寒く、霞がかかる、渓谷。その名のとおり、山頂は寒かった。ロープウェイを経営する会社の社長、佐伯直治さんが、用意してくださったあったかい珈琲で身も心も温かくなりました。
なぜでしょう、世界的マエストロ、井上道義さんは、どこに居ても絵になります。まるで昔からそこにいるかのように、佇む姿。
果たして、的の中をかわらけは通過するのか?!
結果は、惜しい!でも、勢いよく飛んだかわらけは、みんなの願いや思いを乗せて瀬戸内の海に向かっていきました。
小豆島の寒霞渓から見える瀬戸内の海は、どこか異国の香りがします。
地中海?エーゲ海?空に浮かぶ雲たちも、伸び伸びとして気持ち良さそうです。
お世話になった小豆島総合開発のみなさま、ありがとうございます!
小豆島の石は、有名です。かつて大阪城築城に使われたのです。
石切り場のマエストロは、まるで少年のように目を輝かせていました。
「クラシックは、ヨーロッパの文化。すなわち、石とともに生き、石とともに暮らす世界」。
それにしても・・・マエストロ、仕事をする乗り物が大好き!
いつか、日本にも、石のホールができれば・・・。そんなマエストロの願いを背景に、お世話になった、湊さん(右)と、藤田さん(左)。
旅人プロフィール
井上道義
1946年東京生まれ。桐朋学園大学にて齋藤秀雄氏に師事。1971年ミラノ・スカラ座主催グィド・カンテルリ指揮者コンクールに優勝して以来、一躍注目を集める。以来、国内外でめざましい活躍を続けている。“クラシック界の異端児”との呼び名を持ち、古典から近現代までカバーする幅広いレパートリー、ジャズとのコラボ、野田秀樹とタッグを組んだ「フィガロの結婚」など既成概念にとらわれない企画性は、クラシック界に強いインパクトを与え続けている。
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